赤羽「米山」美味しい豚モツ食べたきゃ、どっしり構えよう

赤羽「米山」美味しい豚モツ食べたきゃ、どっしり構えよう

2017年4月29日

関西の牛モツ、東京の豚モツ。戦後の闇市によって東京中に浸透した豚もつ焼きの食文化は、正肉が手に入らないときでも入手しやすく、安価で栄養価が高いということから始まりました。

いまでは正肉にはない独特な風味や食感から、酒場においてはむしろ正肉よりも人気なほど。誕生の背景から、戦後直後に開業したお店が多いなか、ごく一部では「豚正肉」を扱っていた酒場がモツにシフトしたケースもあり、赤羽の米山もそのひとつ。創業は大正時代まで遡ります。

赤羽駅から線路沿いに北上し、飲み屋街も途切れ住宅が立ち並ぶようになってしばらく歩くと、小さな飲み屋小路が見えてきます。建物はまるで戦争ドラマの掘っ立て小屋のようであり、味わい深いとか、年輪がどうのとか、そんなレベルではないオーラを漂わせています。

18時少し過ぎた頃に暖簾が掲げられ、米山の味を知る常連さんで焼台を囲むL字は満席となり、しばらくすると二巡目を待つ人たちが店の前に集まり始めます。路地をはいった先には勝手口と土間のような部屋があり、そちらを使わせてくれることもあります。※取材時は土間の側

長く続く酒場であり、家族経営で安価に鮮度の良いモツを提供することで評判です。そのかわり、飲みにくる私たちも老舗の呼吸に合わせる必要があります。

注文は原則1回だけ、料理がでてくる時間はまちまちで、どっしりと構えて待つ必要もあり。人気店でなかなか入れないことと、上記の条件があるのでハードルはやや高めなのですが、それを乗り越えてでも美味しいと満足できる豚モツなのです。

梯子酒の予定や、だれかと待ち合わせしているときには向かないお店。意外と遅い時間まで営業しているので、二巡目の空席を目指すほうが私は好きです。オープン前に30分くらい並べば一巡で入れるかもしれませんが、私は酒場に並ぶのが苦手で(笑)

ですが、売切れ次第おしまいになってしまうので、これまた悩ましいところ。なんとなく店の前を散歩して、席が空いていたら入っちゃうというくらい、のんきに構えていきましょう。

ビールはサッポロのヱビス中瓶(620円)と黒の小びんのみ。人気はシャーベット状の甲類を使った氷なしホッピーで470円。一杯目はヱビスで乾杯。

赤羽は古い酒場を中心にサッポロビールを扱う店も多く、米山とサッポロの付き合いもそうとうなもの。荒川を挟んで目と鼻の先、川口にサッポロビールの工場があったことや、地元の酒屋さんの関係が影響しているようです。

二杯目はホッピーを。ホッピー好きにとって米山はひとつの聖地のようになっています。いまでこそ当たり前のシャリシャリ甲類も、昔は珍しかったですから。

鮮度の良さは焼いても明らかに味の違いがあります。もちろん冷凍などせず潰したてがいい。串は120円でレバ、タン、チレ、シロ、ナンコツ、カシラ、ガツ、コブクロにアブラなどがありましたが、現在はつくねのみの提供です。

炒め物は400円で、串打ちしていないモツとねぎを炒めたものでカシラやレバ、チレなどがあります。串打ちしたモツはどこでも食べられますので、私は米山では炒め系がおすすめ。

初夏は冷奴(360円)とホッピーで真横を行き交う東北本線の音をBGMに夕涼みをするのもまた乙です。

古き酒場のしきたりのようなものがありますが、あんまり心配することなく常連さんの見よう見まねでも良いので、気になる方は軽い気持ちで立ち寄られてみてはいかがでしょう。入れたら、どっしりとね!

【お知らせ:串、炒め系は休止中、現在は自分で鉄板で焼く方式となっています。今後もメニュー・営業時間は変更になるものと思われます。豚もつそのものがよいので、料理の内容が変わってもお店が魅力的なことに変わりはありません。現在はご主人がお一人で切り盛りされています。】

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

米山
03-3901-7350
東京都北区赤羽1-64-7
18:15~2400(日祝定休)
予算2,000円