明石の「魚の棚商店街」に店を構える『たなか酒店』。実はここ、店横の細い廊下の先に、知る人ぞ知る立ち飲み処があります。昼網で水揚げされたばかりの新鮮な魚介と、厳選された銘酒が揃い、品揃えは角打ちの域を遥かに超えています。今回は、料理上手の酒屋の女将さんや板前さんが腕を振るう割烹レベルの料理と美酒が楽しめる、日本有数の名角打ちをご紹介します。
漁師町 × 酒屋

目的地は姫路ですが、新快速を明石で途中下車してでも寄りたい場所がここです。明石駅を降り、明石城の緑を背に南へ歩けば、約400年の歴史を持つ「魚の棚(うおんたな)商店街」へ到着します。

鮮魚店や海産物店が軒を連ね、昼網で揚がったばかりの魚が並ぶ活気あるアーケード街です。魚屋さんや食堂があるならば、もちろん酒屋さんもある。今回訪ねる『たなか酒店』は、一見するとなんの変哲もない商店街の酒屋さんです。

ですが、酒屋の脇の細い廊下の先がスゴイんです。ビールケースの横を通り抜けて身をかがめるように低い「くぐり戸」を開けると…

外の喧騒を忘れるような落ち着いた立ち飲みスペースが広がっています。
1931年創業の同店。かつては未明の過酷な漁を終えた漁師たちを労うため、朝早くから日本酒を振る舞う「夜明けの角打ち」として親しまれていました。その港町のDNAを受け継ぎつつ、約20年前に現在のスタイルへ進化。

店の入口が茶室のにじり口のように狭いのは、女将さんが店に立つようになった頃から、「女性一人でも、静かに落ち着いて杯を傾けられる穏やかな雰囲気を大切にしたい」という女将さんの願いが込められているそうです。
漁港が近い特権を活かし、まだ活きているようなとびきり新鮮な魚介が厨房へ運ばれてきます。そこに全国の蔵元と信頼を築いて集めた日本酒、さらには自家製調味料を駆使した料理が融合。

客層も良く、木樽のテーブルを囲んで誰もが思い思いにグラスを傾ける、穏やかな時間が流れています。
明石の海の幸と日本酒が織りなす至福のペアリング

まずはしっかりと冷えた生ビールで喉を潤します。明石の酒蔵、江井ヶ嶋酒造がつくるクラフトビールです。

黒板にずらりと並ぶ魅力的なメニューから、まずは名産の明石だこを使った「明石小たこ煮」を注文。じっくりと火入れされたタコは驚くほど柔らかく、噛むほどに凝縮された旨味が口いっぱいに広がる仕上がり。

続いては「煮穴子」をもらいました。甘辛いツメがたっぷりと絡んだ穴子は、ふっくらとした食感。

これには、栃木の銘酒「惣誉 生酛仕込」を合わせます。生酛ならではの奥行きのある酸と旨味が、穴子の脂とツメの甘みをしっかりと受け止めてくれます。

さらに明石の誇るもう一つの名物、天然鯛は「カブトの酒蒸し」でいただきます。ふわりと香る出汁の風味と鯛の繊細な身の甘みが調和しています。

ここで、搾りたての鮮度を保つ専用容器「KEG DRAFT」から注がれる日本酒「竹泉 山田錦」(兵庫県朝来市梁瀬 田治米合名会社)を追加。フレッシュな日本酒の香りが、魚介の味わいを一層引き立てます。

熱々の「タコと山菜の天ぷら」も頼みました。薄衣を纏った明石ダコは、揚げられることで香ばしさと上品な甘みが際立ち、サクッとした歯触りが後を引きます。

さらに、お酒の肴として、特製のコク深い味噌ダレがたっぷりとかかった酒粕入りみそチャーシューも追加。しっとり柔らかな豚肉の脂の甘みに、添えられたキュウリの瑞々しさが絶妙なアクセントになり、次々とお酒が進みます。
料理上手の女将が彩る、最高峰の角打ち体験

これだけ質の高い料理が揃う背景には、厨房を取り仕切る女将さんの存在があります。家族に食べさせるのと同じように、良い調味料を選び、手間暇をかけて作られる品々は、どれもハズレなしの美味しさ。適正な価格で提供される割烹レベルの料理と銘酒の数々は、何度でも足を運びたくなる魅力にあふれています。

酒屋直営ならではの豊富なお酒のラインナップと、明石の海の恵みを同時に味わえる贅沢な空間。一人でふらりと立ち寄っても、量の手加減をしてくれる優しい心遣いが嬉しいところ。心満たされる、大人のための上質な角打ちです。
店舗詳細

| 店名 | たなか酒店 立ち呑み たなか屋 |
| 住所 | 兵庫県明石市本町1丁目1−13 |
| 営業時間 | 12時00分~14時00分 17時00分~21時00分 水木定休 |
| 創業 | 1931年 |
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