追浜「一銭酒場 えびす」 魚屋直営、三崎のまぐろを肴に京急飲み

追浜「一銭酒場 えびす」 魚屋直営、三崎のまぐろを肴に京急飲み

おそらく、首都圏の大手私鉄沿線のなかで、一番飲み屋が多い路線は京急電鉄ではないでしょうか。

都内では立会川や京急蒲田に、多摩川を越えれば、京急川崎はもちろん、キリンビール横浜工場が線路脇にある生麦や子安、神奈川には市民酒場のいいお店がありますし、日の出町へ行けば野毛が待っています。

上大岡には激安立ち飲みや老舗焼鳥が、横須賀まで進めば駅前は海の男が愛する名酒場が湯豆腐を用意して待っています。

例えば、途中の追浜駅で下車しても、そこにだって昼酒天国が待っています。駅前で13時オープン、松井水産本店が直営の立ち飲み屋「えびす」はご存知でしょうか。

 

1階は魚屋です。業務から小売まで幅広く扱っている地元になくてはならない魚屋さん。その二階が立ち飲みになっています。

 

三崎まぐろが看板商品、その他、水産会社直営ならではの魚介類が豊富に揃います。

 

階段を登ると、店構えから想像できないほど大きな空間が見えてきます。立ち飲みカウンターが壁沿いに配置され、各々お酒とおつまみをキャッシュオンで受け取り、のんびりと過ごしています。

 

冷蔵ショーケースはまるで魚屋さんの店頭。アジやホタテ、真ダコなどが常時10種類ほど並んでいます。そして、なんといっても看板料理のまぐろは部位ごとにずらりと出番を待っています。どれも200円台と驚くほどリーズナブル。都心の立ち飲みも安いお店が増えていますが、本場のパワーはやっぱり違います。

 

昼酒タイムでは揚げ物がまだ用意されていませんが、夕方を過ぎてコアタイムになると飛ぶように売れていく人気料理。マグロメンチが食べたい。

 

アルコールの種類は立ち飲み屋としてはかなり充実しています。店名と同じサッポロのヱビスビールは、黒の小瓶のみの扱いながら300円(いずれも税込)とお手頃価格です。大びん(450円)と生樽はアサヒスーパードライ。ホッピーセットは350円。日本酒は地元の鎌倉栞が珍しい。定番酒は松竹梅で250円と、これまたお財布に優しい。

 

お通しはなくて、料理もお酒も安い。近くには関東学院大学があることから学生が多いのかと思ったら、どうやらそれだけではないみたい。漁港のある漁師町、海上自衛隊の町、そして日産自動車追浜工場の企業城下町。働く男のチョイ飲み処は安くて美味しい。

アサヒスーパードライの大びんと、250円の中落ちをもらって、では乾杯。量は一人前ですが、この値段でこれくらいのマグロが食べられるのはやっぱり素晴らしい。

 

煮込みと並んで用意されているマグロスジ煮は200円。大きなお椀にたっぷり入った塩味の煮込み。くさみのないすっきりとした味で、濃いめの塩気がビールをぐいぐいと進めてくれます。まぐろの旨味やあぶらって優しい。

 

レモンサワー(300円)を注文。見た目はやや白い酎ハイですが、これこそご当地酎ハイ。1952年創業、神奈川県下を代表する割材メーカーの川崎飲料株式会社が製造するパレードが飲めるのです。

 

レモンの酸味は控えめで、同様の割材各社のそれと比較すると飲み心地はすっきり。のどが渇いているときゴクゴクと飲みたい味です。本社のある京急電鉄八丁畷駅周辺だけでなく、横浜・横須賀で広く流通しているので、酒場好き・酎ハイ好きの方にはぜひ試してみてほしい。

 

アットホームな感じで、のんびりとした時間が流れる店内。小銭で飲めるお手軽感が魅力ですが、それ以上に不思議な居心地の良さがあります。

 

オープン当初からヱビスは黒のみの扱いですが、これがとても人気。扱い量が多いからこそみつかる激レアシークレットラベル「ラッキーヱビス」が各デザイン毎に揃っています。しかも抜栓前の状態で。通常、ラベルに描かれた恵比寿様は鯛を1匹しか持っていないのですが、ラッキーヱビスは数百分の1の確率で籠に鯛が入ったラベルが混ざっています。

美味しいまぐろ料理とお手頃価格のお酒、そしてラッキーヱビスを求めて、追浜駅で途中下車してみてはいかがでしょう。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

一銭酒場 えびす
046-865-6680
神奈川県横須賀市追浜町3-5
13:00~21:00(日定休)
予算1,200円