だれですか、立川は酒場空白地帯だとか言っている人は(笑)
ごめんなさい。立川の皆さま、お待たせいたしました。JR東日本の駅で乗降客数15位、とっても立派な立川駅の周辺を一度も触れていないで、なにか「酒場巡りマガジン」でしょうか。
駅前にてお昼から営業、戦後の立川酒場文化の顔として、長きにわたり愛されている大衆酒場「玉河」をご紹介いたします。年中無休で午前11時から午後11時まで12時間通しで営業しているパワフルな飲み処。立川駅前のロータリーに面しており、この街で飲むといえば、まずは「玉河」が選択肢となるのです。
雑居ビルの地階ながら、暖簾や「ヱビスあります。」の電照看板から老舗酒場の王道のオーラが感じられます。食品サンプルが置いてあるのは酒場には珍しい。食堂のようにもみえますが、昼からがんがん飲み屋として利用されています。
安い!うまい!立川一お気楽な店がキャッチフレーズ。
入り口の階段からは考えられないほどの大箱。小上がり、テーブル席、カウンターが、小学校の教室2つ分の大きさで広がっています。天井は高く、地階ながら開放感があり、飲んでいると空間に心が溶け込んでいくような気分になります。
冷蔵ケースで出番を待つ瓶ビールと日本酒が、これぞ酒場の風景です。
一人ならカウンターへ、数人の場合はテーブルへ、宴会は小上がりへ。常連さんが多く、皆さん思い思いに「いつもの酒場」を楽しまれています。大衆酒場は第三の居場所といいますが、日常に馴染む「玉河」は、まさしく立川のサードプレイスです。
ビールは、サッポロ。黒ラベル、ラガー、ヱビスと、瓶ビールでもなんと3種類から選べます。
お通しは日替わりで、ちょっとした小鉢がちょんとでてきます。赤星をトトトと注いで、いつもの味に乾杯です。
さて。品書きをみていきましょう。壁一面に短冊で書かれていますが、玉河は手元のメニューでみるのが早い。ビール大びんは560円、焼酎甲類はトライアングル・インディゴ(サッポロ焼酎)、ウィスキーはデュワーズで、酎ハイは男梅やポッカのレモンサワーという並び。
刺身類は、440円からイカ、甘エビ、しめ鯖、まぐろが定番です。まぐろの仕入れは独自のルートがあり、レベルの高いものがリーズナブルに食べられるので人気です。麻婆茄子やエビチリなど、中華メニューが多いのも玉河の特長です。
日本酒は白鶴の専売店で、生貯蔵酒から大吟醸まで、普通酒をいれると5種類も選べます。
派手じゃないし、写真もないけれど、こういうメニューが結局一番落ち着くのかもしれません。人気の串かつは、がっつり摘みたい人におすすめ。天ぷらは、これにプラスして季節のメニューで旬の食材も加わるので見逃せません。ちゃんとお通しが210円であることが書かれているのも、素直で真面目な感じがして私は好き。
赤星の後は日本酒へ。今日は奮発して白鶴酒造の本気、大吟醸を開けることに。昨今、代がわりして個性的な日本酒を発売する蔵が人気ですが、大手蔵の本気を知らないのはもったいない。ノウハウが違う大手蔵、酒米まで自前で開発する本気に乾杯です。
大衆酒場で白鶴の大吟醸があるのはかなり珍しい。
まぐろぶつは490円。中トロと赤身のまざったぶつが結構しっかり盛られてやってきます。脂がのって、ねっとりとした旨味がたまらなく美味しい。玉河のまぐろは”とりあえず”の一品として間違いのない肴です。
炒め物もどれも甲乙つけがたく美味しいと常連さん。なかでも、茄子辛味噌炒めは評判のつまみです。具だくさん、ボリュームしっかりで490円なのだから、地元にあれば食事代わりにビールと炒め物でさくっと引っ掛けていくのにちょうど良さそう。
どかんと800ml、サッポロ黒ラベルの大ジョッキは740円。大箱の人気店だけあって、次から次へと20Lの大樽が空っぽになっていく高回転の生ビール。ディスペンサーの状態やジョッキの洗浄もしっかりされているので、間違いなく美味しいサッポロ黒ラベルが楽しめます。
わいわいガヤガヤとした酒場でも、生ビールの品質はやっぱり大事。いつもの空間で美味しい生で乾杯を。
派手な料理はなく、特筆するほどコストパフォーマンスが高いわけではありませんが、日常使いの丁度いい大衆酒場として、玉河はやはり銘店です。いろいろ楽しく食べて飲んで一人二千円台で済むのであれば、それこそ大衆酒場に求められている価値だと思います。
煮かつとか、自家製鳥チャーシューとか、イワシ竜田揚げとか、どれもみんな食べたくなっちゃう。そして赤星や白鶴が飲みたくなっちゃう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
酒亭 玉河
042-522-2654
東京都立川市曙町2-12-19 B1F
11:00~23:00(無休)
予算2,300円