武蔵小金井「百薬の長」 4代目が守る二の字カウンターで、豚もつと甲類焼酎

武蔵小金井「百薬の長」 4代目が守る二の字カウンターで、豚もつと甲類焼酎

2017年11月6日

連続立体交差化で表情が変わった中央線武蔵小金井駅。狭い駅前広場にバスやタクシーがびっしりと溜まり、踏切の音が街に響いていたのは過去の話。いまや明るくピカピカ、駅ナカも充実し、駅周辺は再開発で大型マンションが林立しています。

駅前の風景には昭和の名残はありませんが、一本入った裏路地にはあの頃の中央線沿線らしい街並みが残っています。荻窪生まれの筆者には、中央線の昭和の風景に幼き頃の思い出が重なります。

北口の仲通り商店街は昭和がそのまま残る飲み屋街。4代目が守る老舗のもつ焼店「百薬の長」にお邪魔しました。

焼台を挟む二の字カウンター。入り口がふたつあります。常連さんで賑わうなかでも、入れますよーと手招きしていただきました。

黒ラベル中びんが490円、樽生黒ラベルが470円。お酒に焼酎、ウイスキーと並びます。おつまみは短冊の小鉢が100円台から300円。4代目の女将さんはハキハキと仕事をしつつ愛想をふりまく素敵なお姉さんで、そんなお姉さんとの会話を楽しみに通う常連さんは多そうです。

ビールは美味しいサッポロ黒ラベルの生。嬉しい昔ながらの大きめ中ジョッキにキレイな生が注がれます。では乾杯!

料理もお酒もリーズナブル。千円ちょっとでたっぷり楽しめる酒場だから、地元のノンベエさんたちをとりこにし続けるのもよくわかります。200円の板わさとたっぷりの中生で、思わず「プハー」!

品書きはあちこちに貼られた短冊から。寒くなったらおでんも良いですね。五線譜の可愛い「百薬友理12周年」はいまの女将さんが引き継いでからの年。半世紀以上の歳月を家族でリレーしてきた「百薬の長」の歴史は街でもトップクラス。

串は1本100円でヒモ、ヒラなど他ではあまり聞かない名前も。いずれも豚の腸ですが、普通ならすべてひっくるめて「シロ」となるところ。あまりもつ焼屋では見かけないホルモンがずらりと並びます。

女将さんが慣れた手つきで次々と焼き上げていく串。鮮度のよさから特有のクセはなく、フレッシュな味わい。軽く表面にまとうタレは甘さ控えめ。一味をささっと振りかけて、テンポよく食べていい気分。

さて、野性味ある豚モツを食べていると自然に欲しくなる甲類焼酎。銘柄はサッポロ焼酎で、150mlほど入るタンブラーに溢れるほど注いでくれます。これで280円。

サッポロビールのノンアル「サッポロプレミアムアルコールフリー」で甲類を割った「サッピー」というオリジナルなビールテイスト飲料を楽しむ常連さん。甲類を後から入れるのがポイントらしい。溢れるほど入っているので入れ方にも工夫が。

160円のギョニソーをおつまみに、飴色にそまった店内で女将さんや常連さんの掛け合いを肴に、酔いが進む。

ところどころにウイスキーのような琥珀色の液体が入った瓶があり、常連さんはこれを楽しそうに甲類に垂らしています。そう、これは「梅割り」の梅エキス。甲類の飲み心地を変える秘密の液体で、これ自体にはアルコールは入っていません。

すいすいと飲んでいると、気づけば顔はほてり、目はぼんやり。あれ、酔っ払ってきた?

武蔵小金井で、時計の針がとまった空間。そこは癒やしの昭和酒場です。途中下車してでも立ち寄って欲しいいいお店。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/サッポロビール株式会社)

百薬の長
042-383-6640
東京都小金井市本町5丁目12-15
16:00~22:00(日祝定休)
予算1,600円