仙台「地雷也」 堂々たる銘店、蔵王の白炭で焼き上げる山賊料理


今回ご紹介する酒場は、仙台・国分町で1963年(昭和38年)に創業した銘店「地雷也」です。東北最大の都市・仙台にはそうそうたる飲み処が暖簾を掲げていますが、山・里・海の美味しいものを食べさせてくれる名酒場としてここ「地雷也」は地元の人からも定番の居酒屋です。

国分町の飲食店街にあり、店先の「山塞料理・地雷也」とかかれた大きな赤ちょうちんが目印です。幕末に流行った小説・自来也説話が店の由来。山塞料理は、炭火で串焼きを豪快に焼き上げることから山賊の住処で食べる光景を印象したことから。

 

入り口の縄のれんをくぐり、地階へと潜っていく。少し落ち着いてきたとはいえ今でもギラギラと燿る艶やかな国分町にあって、大人の隠れ家へと逃げ込むような感覚になります。

 

150年以上前の古民家の材木を再利用したという内装ですが、すでに店そのものの歴史も加わって重厚で堂々たる佇まいを感じます。

蔵王でつくられた白炭が煌々とともる炭火台を角として、大きなL字のカウンターが印象的です。個室もありますが、炭の前がやきり特等席です。飴色のカウンターに黒塗りの柱、現役の冷蔵ショーケースで出番を待つ地酒たちに瓶ビール。ここは飲み食べする前、席についた時点から「あぁ、いい店だね」って口に出してしまいそうなほどかっこいい。

 

奥の冷蔵ケースではキンキをはじめとした地のものがラフに並んでいる。変にカッコつけられた店より、こういう方が落ち着くのは酒場好きだかろでしょうか。

 

まずは飲み物を。何にしましょう、と聞かれる前から「大びんお願いします」と心に決めて入るものの、一応見ているフリを。ビールは4社勢揃い。キリンだけが大びんというのは不思議ですが、現主人が店を任される以前からだそうです。

 

なにはともあれ、瓶ビールは大きいのが好きなので、一本。瓶表面のセラミックコーティングが店内の暖色照明を反射し輝きます。

 

菊のおひたしと、氷頭なまこ風の鮭身をつかった小鉢が今日のお通し。ビアタンにトトトと注いで、それでは乾杯。

店内で思わず深呼吸。先に息をゆっくりはいて一日の疲れを吹き出し、それからお腹いっぱい店の空気を吸う。炭火の香り、香ばしい海鮮が焼ける香り、古い店に漂ういい匂いに包まれるひとときを喜ぶ一瞬です。

 

さて、肺の中まで酒場に浸ったところで、料理を選びましょうか。三陸と言えばモウカです。かき味噌田楽というのも食べてみたい。くじら料理も地域性を感じます。

 

夏場はホヤがいい、こっちのヌタはイワシとサンマで光り物を使うのが一般的です。

 

ホッキ刺し、しもふり馬刺し、珍味はめふんが好物です。バクライとは莫久来と書き、ホヤとコノワタをまぜた塩辛のようなもので、これに墨廼江(墨廼江[すみのえ]酒造・石巻)と合わせてチビチビ飲んだ夜が懐かしい。

 

仙台は炉端の発祥の街であり、炭火で海鮮を焼くのが酒場の基本です。

 

ここ地雷也は正統な炭火が楽しめ、定番のサンマや鯖、くじらや鮎など種類豊かで、海から山までなんでも揃います。

 

お酒はビールで一杯やったあとは地酒にいくのが地元の人の流れ方。

 

定番すぎると言われるかもしれませんが、蒲鉾は仙台の酒のツマミの王道としてあたりまえに食べる一品です。焼き立てで熱々、ふわとろの食感がビールと合わせてこれからの食事へ期待感を高めます。

 

新ぎんなんがちょうど入った時期。杜の都・イチョウ並木の仙台で、秋は銀杏が食べたかったのでつい。そんな当たり前すぎる、と言われようが、私は銀杏と瓶ビールの組み合わせが好きなのです。

 

日本酒は仙台市若林区内、つまり宮城の中心地で作られる唯一の銘柄「森乃菊川」をはじめ、浦霞、綿屋、萩の鶴などそうそうたる顔ぶれが揃います。店の名を冠した「純米大吟醸・地雷也」は、新幹線の古川駅に近い伯楽星を定番銘柄としてつくる新澤醸造店のオリジナルです。

 

グラス800円と高級ながら、店の看板とあらば飲んでみたいというもの。キンキと合わせると最高とのことで、このタイミングで先にショーケースでみかけたキンキを焼いてもらうことに。

 

つなぎに三陸の牡蠣というのは贅沢ですが、それこそ醍醐味。大きく厚みのあるハラの部分。濃厚ながら磯の余韻がかすかに残るキレの良さ。鮮度は言うまでもなく、最高に美味。1個500円ですが、十分価値を感じます。

 

ホヤの季節ではないものの、赤なまこがあります。甘い海の香味とこりこりの食感、噛むほど広がる静かな旨味がお酒とよく合います。

 

お待ちどうさま。キンキの登場です。一尾焼き始めた瞬間、店内に香ばしく、そして脂がのった白身魚特有の食欲をそそる燻すような匂いが立ち込めていました。こりゃたまらん(笑)

脂ののったキンキをまずはホッペから。そしてカマの部分へ。とろとろとしている、なにより肉汁がぷよぷよと蓄えられていて、口に含むとじゅっと広がります。ここに冷酒を合わせるのだからたまらない。国分町の夜は始まったばかりだけど、ここで腰を落ち着けたくなります。

 

キンキを食べたあとのガラを使ったおつゆが裏メニューです。少しお酒を飲んでからの出汁たっぷりのおつゆは反則の美味しさ。炭火の香ばしさもとけだして、最高の液体おつまみです。

 

店のタスキを守る店主の方の笑顔が、店の歴史にほこりをもっていらっしゃることがよくわかります。いい食材を美味しく食べさせてくれる。あたりまえのことですが、それこそが半世紀続く酒場の根幹にあるのだと感じました。

18時以降はあっという間に満席になります。出張や旅行で飲みに来る人もみかけますが、地元仙台で暮らす人たちの美酒処としても人気の店です。飲みに行かれる際は、なるべく予約されることをおすすめします。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビールマーケティング株式会社)

 

地雷也
022-261-2164
宮城県仙台市青葉区国分町2-1-15 猪股ビル B1F
17:00~23:30(土祝は22:30まで・日定休)
予算7,000円



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