銀座『天龍』満州帰りの元力士が創業、”スマホサイズ”の巨大餃子はクセになる美味しさ

銀座『天龍』満州帰りの元力士が創業、”スマホサイズ”の巨大餃子はクセになる美味しさ

銀座で餃子といえば、昭和24年(1949年)から続く『天龍』を思い浮かべる人は多いはず。手のひらほどある大きな餃子は、まるでバナナのよう。元力士という異色の経歴を持つ創業者が生み出した唯一無二の餃子を求め、近年では世界中から食べに来る人がいます。ミシュランガイドのビブグルマンに掲載されました。

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土俵から厨房へ。元関脇・天竜三郎がはじめた餃子店

銀座一丁目駅直結の商業ビル「PUZZLE GINZA」。その4階に『天龍』はあります。かつては昭和の風情が色濃く残るビルの路面で営業していましたが、2016年に現在の場所へ移転。モダンで開放的な空間に生まれ変わりました。

この店を紹介する上で、創業者で元関脇の天竜三郎(本名:和久田三郎)の存在は欠かせません。

まだ日本で餃子はメジャーではなかった時代。角界を離れた天竜三郎氏が餃子を初めて食べた地は、中国東北部(当時の満州)。おかずとしてではなく、それだけで一食が完結する、厚くてもちもちした皮の餃子。その食文化に感銘を受けた天竜は、終戦後日本に帰国し、銀座の地に店を開きました。

戦後復興期の銀座で、空腹を抱えたサラリーマンや、かつての力士仲間たちの旺盛な食欲を満たすため、餃子は自然と大きくなっていったといいます。終戦・戦後復興という時代の中で、名物のジャンボ餃子は誕生したのです。

竣工したてのビルに移転した店内は、カウンター席とテーブル席がゆったりと配置され、一人でもグループでも利用しやすい雰囲気。昭和の経済成長期を感じさせる情緒はなくなりましたが、かつての店の象徴だった餃子型の看板は今も健在で、店の歴史を静かに伝えています。

世界の料理が入り交じる銀座らしい天龍の餃子

まずはビールで喉を潤しましょう。クリーミーな泡のプレミアムモルツが、餃子への期待感を高めてくれます。それでは、乾杯!

焼餃子(8個) 1,330円

運ばれてきた瞬間に誰もが驚く、圧倒的な存在感。長さ10cm以上はある、スマホサイズの餃子が8個、お皿にきれいに並んでいます。

創業以来変わらないという餡は、豚もも肉、白菜、長ネギとごくシンプル。ニンニクやニラを一切使わないのが天龍の流儀です。これを石臼で1時間近くも練り上げることで、きめ細かく、ふんわりとした独特の食感が生まれます。

厚手でもちもちの皮を一口かじると、カリッと焼かれた底面の香ばしさが広がります。そして次の瞬間、注意しないと飛び散るほど大量の肉汁がじゅわっと溢れ出してきました。空気を含むように練られた餡が、肉と野菜の旨味が凝縮したスープをたっぷりと抱き込んでいるのです。この肉汁を味わいたくて通うベテランの常連さんは多数。

タレは、醤油だけでなく、酢に和がらしを多めに溶いていただくのがおすすめです。さっぱりとした辛味が、餡のコクのある美味しさを一層引き立ててくれます。

冷菜の盛り合わせ 1,990円

餃子があまりにも有名ですが、天龍は本格的な北京料理店。お酒好きならば、ぜひ「冷菜の盛り合わせ」も試してみてください。

この日は、辛子じょうゆで和えたクラゲ、ねぎ生姜が香る蒸し鶏、濃厚なピータン、そしてしっとりとしたチャーシューという豪華な内容。一品一品の味付けが丁寧で、ビールはもちろん、紹去興酒との相性も抜群です。

中国ゆばの花山椒合え 花椒豆腐干 605円

ほかにも、ハチミツで食べるパリパリの春巻きや、プリプリのエビマヨネーズなど、長く愛されてきた名物料理が揃います。

変わる銀座で、変わらない味を

創業から70年以上。銀座の街は大きく姿を変えましたが、移転前と比較して『天龍』の餃子の味は少しも変わりません。創業者の「腹いっぱいになって満足してほしい」という想い今も感じることができます。

餃子の注文は8個からなので、ぜひ2人以上で訪れて、他の料理と共にシェアしながら楽しむのがおすすめです。銀座の歴史に名を刻む伝説の餃子を、ぜひ味わってみてください。

食通の作家も餃子専門家も通う人気店。昼食や夕食時は混雑しますので、通し営業を活かして14時から16時くらいに訪ねることをオススメします。

店名銀座 天龍 本店
住所東京都中央区銀座2丁目5−19 PUZZLE GINZA 4F
営業時間11時00分~21時30分
基本無休
創業1949年 2018年に現在の店舗へ移転