池袋から王子へ向かう都営バスの車窓で、ふいに餃子を欲した黄昏時。丁度近くにあったのは、70年以上暖簾を掲げてきた「華興(かこう)」でした。場所は住宅や雑居ビルが混在する旧中山道と明治通りが交差する角。歴史が積み重なる土地にあって、連日、三階建ての店が満席になるというのだから、名店の理由を探りに行かないわけにはいきません。
昭和二十三年創業の懐かしさと賑わい

都営三田線・西巣鴨駅から歩いて5分ほど。
木造から建て替えられた現在の店舗は堂々たる三階建てで、一階にはカウンターとテーブル席、二階は学生や地域団体の宴会が入る大広間が広がります。
創業は1948年。戦後まもなく始まった家族経営は三世代目へと受け継がれ、今も夕方18時には一階がほぼ満席。常連がボトル焼酎を傾け、近隣の家族連れが遅い昼食を取り、会社員グループが大皿を囲む光景は、平成初期のファミリー中華レストランを彷彿とさせつつも、人情味あふれる“町の拠点”そのものです。
華興餃子の肉汁にすかさずスーパードライ

運良く空いていたカウンターへ滑り込み、まずは樽生アサヒスーパードライを一杯。キンキンに冷えた生ビールは、揚げもの・点心と相性抜群です。

お目当ての「華興餃子」は、丸みを帯びたふっくらフォルムが特徴。焦げ目の香ばしさに誘われて箸で割ると、透き通った肉汁が溢れ出し、小籠包を思わせるジューシーさが口中に広がります。

皮は厚みがあり、もちもちの歯応え。餡は豚肉と玉ねぎを主体にぎゅっと詰まっています。

下味がしっかりついているため、醤油は味変程度に少しだけ垂らすのがちょうど良さそうです。

揚げ餃子に衣をまとわせた「餃カツ」や水餃子、鶏なんこつ入り餃子などバリエーションも豊富ですが、初訪ならばぜひ焼き華興餃子を。ナンジャタウンの餃子イベントでグランプリを獲得した自信作という話にも頷ける完成度です。

上海風焼ソバはたっぷり餡で満腹必至

続いて「上海風焼ソバ」。焼きそばという名ながら、ここでは野菜と海鮮がどっさり入ったとろみ餡が主役です。

麺は表面を香ばしく焼き付け、中はもっちり。白菜や青菜、豚肉の旨みをまとった餡が絡み、ビール党にも白飯派にも寄り添う奥行きのある味付けでした。学生や会社員で賑わう理由は、この一皿のボリュームを体験すれば納得です。
次に狙うは“町中華カレー”
餃子と上海風焼ソバで幸せな満腹感に浸りつつ、常連さんが頼むカレーに視線が釘付け。
中華屋のカレーはあえて率先して頼む料理ではありませんが、驚かされることも多い。次回の課題にしたいと思いつつ、10分後に発車する都営バスのバス停へ。旧街道の一角で出合った肉汁たっぷりの餃子は、昭和の温もりと平成の賑わいをそのまま閉じ込めた味でした。
とげぬき地蔵商店街・庚申塚の先という立地。中山道散策の後は華興で餃子とビールはいかがでしょう。
店舗詳細
品書き



店名 | 華興 |
住所 | 東京都北区滝野川6-9-11 |
営業時間 | 11:00 – 15:00 17:00 – 23:00 火定休 |
創業 | 1948年 |