大島『丸貞』下町老舗酒場の安定感。どっしりとしたカウンターで静かに飲む心地よさ

都営新宿線大島駅すぐ。新大橋通りから一本入った場所にある『丸貞』は、地元の呑兵衛に長く親しまれてきた酒場です。開店は15時と早く、明るいうちから常連さんでにぎやかになります。いまでは貴重な、家族経営のほっとする酒場です。

さすが江東区。歩けば渋い酒場にたどり着く

大島のお酒屋さんで角打ちを楽しんだあと、どこかで晩酌をしようと江東区の大島中央銀座商店街を歩いていると、まだ16時だというのにお客さんの話し声が聞こえてくる酒場がありました。店名は『丸貞』。

下町の酒場らしい植木鉢が並んでいますが、よく手入れがされています。使い込んだ縄のれんの風格、堂々とした多聞印の袖看板など、飲みたい欲をくすぐるものがあります。なにより、扉や看板がきれいなので安心です。

気づいたら店内にいました。大将が明るく迎えてくれて、一緒に切り盛りされている皆さんも丁寧です。奥ではまだ早いのに飲み慣れた常連さんたちが相撲中継をみながら盛り上がっています。

常連さん率が高いものの、大将は常連さんとの会話に夢中にならず、黙々と下ごしらえや調理を進めていました。もちろん、飛び込みの私にも適度な距離で接してくれます。こういう距離感が居心地いい。そう心の中で呟いて、瓶ビールを注文しました。

飲み慣れた常連さんたちのにぎやかだけどけして騒がしくない笑い声と相撲中継、大将が刺身を切る包丁の音がBGM。ふぅっと軽く息をはいて、さあ、いただきましょう。レトロな聖獣タンブラーにラガーを満たし、乾杯！

刺身を食べている常連さんが多い。となれば、私も真似がしたくなります。茹で具合が絶妙なたこで、かたくなっておらず、噛むほどに潮の旨味が感じられました。

ビールメーカー系のグラスではない、目安星だけのシンプルなグラスででてきた酎ハイ。厚切りのレモンから広がるフレッシュ感が濃いめのアルコールを包み込んでいます。

やきとり専門ではないものの串も人気のようです。手羽先はこの通り、表面がパリパリに仕上がっています。

台東区大島で早い時間から落ち着いて飲める、ちょうどいい酒場です。近隣にこうしたお店はありそうですが、実は貴重な存在だと思います。のんびり飲みたいときにまた訪ねてみたいと思います。

（取材・文・撮影／塩見なゆ）