家族2世代で切り盛りするような老舗個人店には、そこにしかない魅力があります。それは、SNS映えする料理でも、コスパを謳ったドリンクでもありません。サンダルで飲みに来る常連さんや、世代を越えて通う家族連れで賑わう雰囲気は、その街の魅力をぎゅっと凝縮したような良さがあります。江古田の『乃がた』はそういう店です。
目次
江古田の駅前商店街とともに56年
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池袋から西武池袋線で3駅しか離れていないものの、江古田駅周辺はどこか下町的な情緒があります。入り組んだ路地に小さなアパートや木造家屋が密集しており、駅前には安くて盛りがいい食堂が立ち並ぶ、典型的な昭和の学生街といった雰囲気です。
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池袋の吸引力が強いからか、はたまた各駅停車しか停車しないからか、江古田の飲み屋街が話題になることは多くありません。ですが、駅前は飲食店が大変充実しており、「街歩き」・「飲み歩き」が好きな人ならきっと楽しくなるはず。
外観
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個人店が多いのもこの街の特長でしょう。大衆酒場ならば、56年前に創業し、初代夫婦と二代目で営む店『乃がた』はぜひオススメしたい一軒です。
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いまどきの個人店ではまず作れないような、どっしりと構えた造り。民芸調酒蔵というだけあって、この店だけを切り取ると地方都市の県庁裏飲み屋街にありそうな雰囲気です。
内観
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いらっしゃい!ホール担当の女将さんと調理担当の二代目が迎えてくれました。日曜日の17時、すでに店内は9割ほどの混み具合。カウンターは常連さんで埋まっています。
テーブル席では、近所の商店店主風の人たちが会合中。店の大将も混ざっています。奥のテーブル席では、ワイシャツ姿の年配男性4人組が乾杯しているところ。小上がりではお子さん連れの家族が唐揚げをつまんでいます。意外にも20代の学生風のグループも静かに飲んでいました。
これぞ、地域に根ざして何十年という個人店の雰囲気。素晴らしい!
品書き
お酒
- サッポロ生ビール黒ラベル:550円ほど
- サッポロラガービール大瓶:550円ほど
- 酎ハイ:330円
- サワー:390円
- ハイボール:500円
- お酒 八重垣など:370円
- 男酒:400円
- にごり酒:420円
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- イサキ刺身・塩焼・唐揚:700円
- かつおたたき:770円
- あじたたき:600円
- メヌケ西京焼:600円
- あゆ塩焼:500円
- 豚モツ煮込み:500円
- 辛口ポークウインナー:500円
- ピーマンの肉詰め:500円
- たぬき豆腐:500円
- ぬた:500円
- なす味噌炒め:440円
- 揚げシュウマイ:440円
- さば文化:550円
- 若鶏唐揚げ:660円
- 焼鳥:100円
- 豚しょうが焼き:660円
- ジャガチーズ:600円
- ピーマン肉炒め:500円
- 揚げシュウマイ:450円
- 串かつ:500円
刺身から揚げもの、焼鳥まで酒場の定番を網羅
サッポロラガービール
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壁のいたるところに張られた短冊メニューに目移りしますが、まずはビールを飲んで落ち着きましょう。銘柄はサッポロラガー(赤星)。こちらでは長年サッポロ一筋のようです。それでは乾杯!
トンカツ
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焼鳥店、海鮮酒場、ワインバルなど、特化した業態は珍しい食材などがあって楽しいですが、ベッドタウンの居酒屋はむしろオールマイティが喜ばれるのではないでしょうか。焼鳥もあり、串かつ、トンカツもある、もちろん刺身もあって丸魚から調理する――。板前さんの腕と、食材の在庫を回転させられる集客力が必要ですが、『乃がた』は献立豊富。しかも多くが500円前後とお手頃価格です。
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揚げたてのとんかつ。ごはんのおかずではなく、つまみとして味付けされた酒場らしい一品です。
男酒(400円)
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とんかつには、炊きたてご飯もよいですが、液体のお米だってとっても似合う。1合ほどの大きな蛇の目猪口はテンションが上がります。
あゆ塩焼き(550円)
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いまが旬のアユ。化粧塩をふった踊串、こうしたプロの技を見せてもらうのも外食の楽しさだと思います。皮はパリッとしていて、中はしっとり!
酎ハイ(330円)
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プレーンなチューハイ。飴色の空間でちびちび飲むと、家で飲むより何倍も美味しくなる。老舗酒場マジックです。
たぬき豆腐(500円)
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大きな丼ぶりいっぱいにきつね色の豆腐と揚げ玉を盛り付けた、ボリューム満点の一品。みりんと醤油、出汁を効かせたシンプルな料理ですが、暖かくてホッとします。
ごちそうさま
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和気あいあいとした雰囲気で、ゆったりとした空間で過ごす夜。日曜の夜はこうした老舗酒場でのんびり過ごすのもいいですね!
居酒屋愛好家の方はもちろん、近隣にお住まいの方にもぜひ一度足を運んでいただきたいお店です。
近くの酒場
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 民芸調酒蔵 乃がた |
住所 | 東京都練馬区旭丘1-73-11 |
営業時間 | 営業時間 17:00~23:00 日曜日は21:00まで |
開業時期 | 1967年頃 |