外食産業、とくに居酒屋にとって、2020年からの3年間は戦後最大の危機だったと言えるでしょう。数多の個人店が廃業し、チェーン店も店舗数が激減しました。そんな時代を乗り越えた居酒屋は一層強く、魅力的に生まれ変わったのも間違いありません。新しい時代に生きるチェーン居酒屋の最新の価値について探ってみたいと思います。
今回取材した居酒屋は『串八珍』。都心部を中心に展開する焼鳥・串焼きチェーンです。
目次
知らないともったいない、こだわりつまった串八珍
本記事をご覧の方は串八珍を利用したことはあるでしょうか。東京や埼玉に80店舗を構える豊創フーズの主力業態で、とくに都心でよく見かける焼き鳥チェーンです。
その第一号店は、1979年(昭和54年)に東京都千代田区の九段に誕生しました。その後、後楽園、靖国、麹町、市ヶ谷、飯田橋と出店。山の手線の内側で地盤を固めました。
『串八珍』の魅力は、本格的な料理を清潔感ある空間でストレスなく利用できる使い勝手の良さだと筆者は思っていました。「会社帰りに誰とでも安心して飲みに行ける店」として、多くの人に愛用されてきました。
2020年以降の3年間、外食、とくに居酒屋へ行くことが難しくなる中、オフィス街の居酒屋は軒並みピンチを迎えましたが、串八珍も同様でした。
飲み会需要復活の兆しがみえてきたころ、串八珍は既存の店舗とは違った方向性の店舗を創業の地に近い神保町に出店。耐え凌ぐ期間は終わり、次の時代に向け新たな一歩を踏み出しています。
2022年6月に新規オープンした「元祖やきとり串八珍 神保町店」は、串八珍としては久々の新店舗となりました。従来の店舗とは雰囲気を変え、オープンキッチンスタイルで、内装もナチュラルかつ高級感があるものになりました。
それでは、串八珍の魅力を探っていきましょう。串八珍を運営する豊創フーズの福富さんにお話を伺いました。
串八珍はいくつものこだわり要素があり、そのひとつが冷凍品を使用しないというもの。国産鶏をフレッシュなまま仕入れ、文京区の本社兼加工場で一括調理し、各店へと配送しているそうです。串打ちの本数は一日6,000本近いといいます。
創業時から炭火をつかってきたこともこだわり。
チェーン店ではあるものの、店のサイズや人情味のある接客、備長炭で丁寧に焼き上げる調理工程などは極めて個人店に近い印象を受けました。
品書き
- サッポロ生ビール黒ラベル:中ジョッキ572円・大ジョッキ880円
- サッポロ赤星(サッポロラガー):869円
- オリジナルサワー ラーク:462円
- あさ開:638円
- 澤乃井:748円
- 男山:748円
- 出羽桜:869円
- 納豆巻き串・つくね・やげん・網もも・網レバー・うずらベーコン巻き:220円/本
- ピーマンチーズ豚巻き:275円/本
- 元祖イカダ串(手羽先):286円
- シロ:132円/本
- かわ・砂肝・鶏レバー・ぼんじり・ハツ:154円/本
- カシラ・タン・ハラミ・豚バラ:165円/本
- 鶏唐揚げ:638円
- 鶏ぞうすい:462円
- 名物もつ煮込み:462円
- ズーランシシカバブ(豚バラ串):264円
串八珍の店名の通り、串焼きのバリエーションは豊富ですが、サイドメニューは控えめ。
串八珍がうんだ名物メニューとは
サッポロ生ビール黒ラベル(572円)
ここからは飲みながらお話を伺っていこうと思います。まずはビールから。串八珍はサッポロ生ビール黒ラベルを長年扱ってきたお店です。状態抜群の一杯が気軽に飲めるのは嬉しいですね。
それでは乾杯!
お通し(330円)
焼鳥店のお通しといえば、大根おろし。串八珍ではこの大根おろしはおかわり自由なのです。串ものを食べているとどうしても口の中に脂感が残ってしまいますから、そんなときは大根おろしを一口食べてリセットを。お醤油をかけてそのまま食べても良いですし、焼鳥にのせて食べるのもオススメです。
もつ煮込み(462円)
串八珍のもつ煮込みは塩ベースですが、驚くほどコクがあります。わずかなニンニクとバターが隠し味とのこと。ポピュラーな煮込みにも個性あり。
ズーランシシカバブ 豚バラ串(264円)
「串八珍といえば、40代以上の世代の方がしみじみ飲む渋めの焼鳥店」そんなイメージだった私は、この中国屋台料理のような串をみてびっくり。
孜然(ズーラン)はクミンのこと。中国では金串に羊肉を刺し、ズーランで味付けした羊肉串(シシカバブ)はポピュラーな料理ですが、まさか串八珍で食べられるとは!
肉こそ豚バラですが、確かに”あの味”です。
実は串八珍を展開する豊創フーズは、中国西安料理「XI’AN シーアン」も運営しており、串八珍とは知られざる姉妹ブランド的な関係です。串八珍で食べる西安風串、ぜひお試しあれ!
納豆巻き串(220円)
串八珍名物といえば、やっぱりこれ!納豆とひき肉を合わせて海苔で巻いた納豆巻き串です。しっかり納豆の風味が活かされていて、独特な味にビールが進みます。
サッポロラガービール大瓶(869円)とラーク(462円)
生ビールのつぎはサッポロラガーの大瓶と、串八珍オリジナルサワー「ラーク」もいただきましょう。
ラークは、下町の色付き焼酎ハイボールに近いのですが、やや漢方的な風味があります。といっても、薬っぽいというわけでもなく、絶妙な味わいなのでスイスイと飲めてしまいます。※お酒は適量で。
長年疑問だった「ラーク」の由来ですが、福富さんによると、鳥がさえずるように串八珍で楽しく過ごして欲しいという思いから、鳥の”lark”(ひばり)からつけたネーミングだそう。またひとつ、居酒屋豆知識が増えました。
ねぎま(176円)
ここからは定番の串をみていきましょう。まずはねぎま。しっかりと大きく、引き締まった鶏が嬉しい。
創業時から育ててきたというタレでいただきます。国産鶏ガラを煮込んで抽出したエキスが隠し味として入っているそうです。
せせり(176円)
昔は焼鳥の部位といえば、せせりが定番でした。首の肉でネックとも呼ばれていますが、よく動かす部分なのでハリがあり、それでいて脂ものっています。お通しと一緒にでてくる柚子胡椒をつけて食べるのがオススメとのこと。
鶏はつ(154円)
ぷりっとした食感が楽しい鶏ハツが気に入りました。鶏油を塗って焼くテクニックはさすが老舗焼鳥チェーンです。
網レバー(220円)
串八珍が発祥(諸説あり)と言われる網脂でレバーを巻いて焼き上げた「網レバー」。濃厚で脂の旨味たっぷり。美味しいですが、食べ過ぎは気をつけたい禁断の串です。柚子胡椒といっしょにでてきた辛味噌を塗って味変も楽しみたい!
ピーマンチーズ豚巻き(275円)
様々な部位の串があるものの、変わり串は控えめ。貴重なピーマンチーズ豚巻きは、想像通りの美味しさです。チーズとピーマンは間違いなく美味しい組み合わせ。
あさ開(638円)
定番酒は、都内のチェーンとしては非常に珍しく盛岡のあさ開です。食中酒らしいきれいで飲み飽きないお酒。
鶏ぞうすい(462円)
普段は居酒屋でシメのごはん類は食べないのですが、福富さんからオススメ頂いたので、食べてみました。鶏出汁が非常に濃厚で、確かに美味しい!これでもう一杯ラークをお代わりしてしまいそうなほどです。
ごちそうさま
明るく元気に迎えてくれた店長さん。串八珍はお店の人にファンがいると聞いたことがありますが、いい意味で個人店のような接客はやっぱり嬉しいものです。
神保町店では、1,100円のちょい飲みセットがありますので、気軽に体験できます。
まだ元祖やきとり串八珍を利用したことがないという方は、今回ご紹介した新しいスタイルの新店・神保町店を訪ねてみてはいかがでしょう。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/豊創フーズ株式会社 サッポロビール株式会社)
店名 | 元祖やきとり串八珍 神保町店 |
住所 | 東京都千代田区西神田2-3-18 ダイヤモンドレジデンス西神田 1F |
営業時間 | 営業時間 【ランチ】 平日 11:30~14:00(L.O.14:00) 【土曜】 平日 17:00~23:00(L.O.22:30) 土曜 16:00~23:00 定休日 日祝 |
開業時期 | 2022年6月16日 |