神田「神田尾張屋」 細打ちの二八で〆る、粋な昼酒といきましょう

神田「神田尾張屋」 細打ちの二八で〆る、粋な昼酒といきましょう

2016年9月4日

DSC02203

1920年創業の老舗「神田尾張屋」。

日本蕎麦協会の会長も務める3代目田中 秀樹さんが暖簾を守る、神田の食とお酒の文化になくてはならない名店です。蕎麦屋をはじめる以前は、現在の銀座5丁目で明治初期創業の三味線屋だったそうです。屋号の由来は、まだ銀座5丁目になる以前の町名だった尾張町から。そんな背景から考えれば、十分なほど東京の味として格式を持っているのですが、蕎麦だけでなく、お酒の肴も多く取り揃えていて、宴会でも利用できるような気軽な街の蕎麦屋としての親しみやすさがあります。

お昼どきから夜の営業まで通しで営業していることから、午後ののんびりとした時間に昼酒を楽しむには最高のお店。これ以上ないくらい、粋でかっこいいお酒が楽しめます。さぁ、東京らしい”蕎麦前”を楽しみましょう。

 

DSC02200

神田駅からもすぐの場所。風格ある佇まいのお店です。品書きをみてみますと、板わさ400円からと実は結構大衆的。蛤の酒蒸しやそば寿司など、飲兵衛好みの肴がずらりと書かれています。いかにも東京的な感じで、このあたりをつまみに日本酒をきゅっと飲めれば一日幸せなのは間違いなさそう。

 

DSC02187

お蕎麦の種類も豊富です。天ぷらそばの蕎麦を抜いた天ぬきも900円と、普段からひょいと立ち寄ってきゅっとやっていくのに丁度いい。

 

DSC02169

ビールはキリンクラシックラガーの大びん(600円・以下税別)を置いているのが嬉しい。老舗にラガー、変わらない組み合わせが大正時代から続いていると思うと、考え深いものがあります。

それでは、老舗の味に乾杯です。

 

DSC02173

まずは板わさ(400円)から。しっかりとした弾力、濃厚な味わい。なにより厚切りなのがいい。神田の老舗で食べるは、小田原の鈴廣に限ります。

 

DSC02175

一年を通じて供されるみそ田楽(500円)も絶品。深味ある味の複雑な甘味とこんにゃくの食感が、次の一杯、一本を誘います。キリンクラシックラガーをチェイサーにして、キクマサのぬる燗といきましょうか。

 

DSC02185

そして、本日の目的の逸品、神田尾張屋のやきとり(800円)。蕎麦屋のやきとりはいつも美味しい。かえしを使っているタレは、普通の焼鳥屋のそれ以上に繊細で香りも豊かなものが多く、こちらもまさにそれです。しっかりとしたボリュームがあるので、一人で昼酒を楽しむならば、蕎麦の前に板わさとやきとり、味噌でちびちびと飲み進めれば満足感は十分過ぎるほどでしょう。

 

DSC02189

もりそばは500円。せいろはよくある量産品ではなく、赤色の江戸塗りと呼ばれる漆塗りが用いられたもの。本枯節のみでとる出汁と二週間ほど寝かしたかえしを合わせた濃い目のそばつゆに、細打ちの二八蕎麦。のどごしがよく、するすると流れるように食べられます。店主の田中さんのちゃきちゃきの江戸っ子のかっこよさは蕎麦にも現れているようです。

 

DSC02194

常連さんのお気に入りの食べ方は、冷やしたぬきを肴に、まずはキリンクラシックラガーを飲み進め、最後に具の下で出番を待っている蕎麦をすするという飲み方。一皿でおつまみからしめまで発揮するというもの。蕎麦屋では使わない紅しょうがやキャベツはこのために仕入れているのだそう。さらに驚くのは、錦糸卵まで冷やしたぬき専用に下ごしらえしているというから驚きます。

「常連からの支持が多くて続けなきゃいけないんだよ。」という話を苦労話ではなく、店を愛するお客さんとともに歩むことを嬉しそうに笑顔で語る田中さんが印象的です。

いいものは長く続く、東京・江戸の粋を今に伝える神田尾張屋で大人の昼酒を楽しまれてみてはいかがでしょう。

ごちそうさま。

 

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビールマーケティング株式会社)

 

神田 尾張屋本店
03-3256-2581
東京都千代田区神田須田町1-24-7
11:15~21:00(日祝定休)
予算2,000円