下町の酒場のレベルは高い。
戦後の復興とともに歩んできた酒場は、今の時代でも十分満足できるお店が多いです。
もつ焼き、安価のなつまみ、独特の琥珀色をした焼酎ハイボール。山の手に暮らしている人も東京を横断して飲みに行きたい酒場があります。
そして、大衆酒場だけでなく、実はお蕎麦屋さんの質もなかなかいいんです。
神田や湯島のあたりの歴史あるお蕎麦屋さんは、純粋な”蕎麦”を楽しむ場所ですが、こちらのほうは、”飲む”を楽しむお店が多く、飲兵衛好みのお店が多いのが特長です。
亀有ならば、ここ「奈可川」がおすすめ。
近くに流れる利根川水系の中川が店名の由来。
駅から近く、このあたりには”関所”と呼ばれ愛されているもつ焼きの江戸っ子もあり、飲兵衛は回遊しているエリア。そこにあるしっとりとした雰囲気のお店です。
大きめの店内、夜はお客さんもさほど多くなく、ゆったりと飲むことが出来ます。
お酒は、桃の滴を。
京都・伏見の銘酒で、私の好きな銘柄の1つです。えぐ味ゼロ、マイルドな味わいとバランスの良い旨味が特長。繊細な味のおつまみによく合います。
いまでしたら、アサリの酒蒸しなんていかがでしょう。
そう訴えるかのように、品書きで一番最初に目に入ってきました。もちろん、いただきましょう。
お蕎麦屋さんのだしでつくる酒蒸しは美味しいに決まっています。味付けは飲兵衛好みのちょっぴり濃い目。大ぶりのアサリはもちもちしていて美味。
黒はんぺんがありますねー。珍しい。静岡の郷土料理で、青魚を皮や骨ごとすりつぶしたもの。
蒲鉾のようで、つみれのようで。やや感じる苦味がお酒を引き立ててくれます。
お蕎麦はまだいただかず。
蕎麦屋で飲むのならば、抜きは基本でしょう。
鴨南蛮を抜きでお願いしました。品書きには乗っていないけれど、そこはちゃんとしたお蕎麦屋です。もちろん、快諾してくださいました。
※老舗でも、蕎麦を食べて欲しいというお考えから抜きをお断りするお店もあります。
ここのだしは、やや荒っぽさを感じますが、お酒をぐいぐい飲みながらいただくのに丁度いい味。素直に美味しいと感じる料理の数々に大満足。
短尺メニューはお昼の定番がずらりと書かれていますが、全体的にはすっきりとした老舗の雰囲気が漂っています。
最後には梅おろしのせいろを一枚。
白くて細くコシのある蕎麦に舌鼓。量が多いですが、蕎麦そのものもレベルが高いですね。
散々飲んだあとに食べるせいろって、満腹でもするすると入るから不思議。
大きな店内には、鯉のいる小さな池まで。
なんだか、地方の温泉旅館で食べているような感じになりました。
亀有へ小旅行、もつ焼きだけでない、蕎麦もまだまだいいお店が下町にはたくさんあります。ひとつひとつ、いいお店を紹介していきますね。
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/なゆ)
奈可川
03-3605-5148
東京都葛飾区亀有5-37-1
お昼から22時まで営業(定休日未確認)
予算2,000円