久留米『又兵衛』やきとりと手造り餃子が二枚看板。1964年に屋台から

久留米『又兵衛』やきとりと手造り餃子が二枚看板。1964年に屋台から

2022年10月1日

昭和39年に屋台で創業。久留米の老舗『又兵衛』は、看板料理の餃子に加え、久留米名物のやきとりも味わえる酒場です。家族経営で半世紀以上続いており、世代を超えて親しまれています。キリンクラシックラガーを片手に、皮から手造りの野菜たっぷり餃子をいただきましょう。

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老舗酒場の多い久留米で、とくに人気の一軒

久留米はゴム産業発祥の地であり、大手タイヤメーカー「ブリヂストン」や運動靴メーカー「アサヒシューズ」創業の地として知られています。産業があるところに酒場あり。九州新幹線の駅でもあるJR久留米駅と西鉄久留米駅の間に広がる「文化街」や「一番街」には、数多の大衆酒場がひしめき合っています。

人口あたりの焼き鳥屋の軒数は日本一と言われており、「やきとり」が街の名物。やきとりに限らず、久留米の酒場は半世紀以上続くような老舗飲食店が多いのも特徴です。

外観

1964年(昭和39年)に屋台として創業した餃子の『又兵衛』も、そうした久留米の老舗酒場のひとつ。屋台から店舗へ移り、さらに2016年には建て替えを兼ねて一番街のアーケードに移転オープンしました。

店頭では地元のお父さんたちがビールと餃子を囲んで宴会中です。皆さん楽しそう。

アーケード側の正面入口ではなく、側面にもご注目ください。いまどき珍しい木枠にすりガラスをつけたレトロな入り口があります。旧店舗で使用されていた建材の一部を移設してつくった現在の店舗は、側面の小さな入口に旧店舗時代の面影が色濃く残されています。

内観

店内の雰囲気は外観にもまして老舗として紹介できる雰囲気です。店内装飾や店内の構造は、かなり以前の雰囲気に似せています。

皮をつくり餡を包む餃子の仕込み台に、埋め込まれた独特な形状の餃子鍋、そしてガス台、焼き鳥台と並んでいます。そんな厨房を囲むL字カウンターがあり、餃子を焼く三代目のお兄さんの前が特等席。

できて5年ほどの店なのに、厨房はなんとスノコ敷。黒電話がジリリンと鳴ります。店員さんたちの靴は皆さん新品のように真っ白で、靴の街・久留米の酒場だと改めて感じます。「餃子の粉が目立たないように」と教えてくれましたが、それにしもキレイにされています。

品書き

お酒

樽生ビールはキリン一番搾り:500円、瓶ビールはアサヒスーパードライ中瓶:600円、キリンクラシックラガー中瓶:600円。

焼酎は二階堂黒霧島白岳雲海:各450円、日本酒は久留米の酒蔵・比翼鶴酒造の比翼鶴(ひよくつる):600円、八女市の酒蔵・高橋商店の紫枡(しげます):600円。サワー類ハイボールは450円。

料理

看板料理は焼きギョウザ(一人前9個):500円。とり皮ヘルツかしわダルムスタミナバラなどやきとり:100円~。大将のおすすめ盛り合わせ:1,400円。そのほか、ニラとじ:400円、タンテキ:650円、ホルモン:500円、とんそく:450円、焼しゅうまい:550円、水ギョウザ:500円など。

創業当時から変わらぬレシピの一口餃子でビールが進む

キリン一番搾り生ビール(500円)

『又兵衛』のビールはキリンビール。まずはよく冷えた大樽の一番搾りで喉を潤します。乾杯!

焼きギョウザ(500円)

着席と同時に、餃子のオーダーを聞かれます。皆さんのお目当てが餃子だからこその注文方式です。とりあえず1人前をお願いします。

お客さんは次々やってきては、2人前を注文しビールと一緒に豪快に平らげていきます。梯子酒の締めで立ち寄る方も多いようで、お酒を飲んでいても回転はよいです。

使用する調味料にも、ローカルな老舗酒場らしさが感じられます。醤油は宮ノ陣の醤油蔵がつくるクルメキッコーです。

おまたせしました。餃子が焼き上がりました。1人前9個500円。一口サイズで9個という単位も創業当時のままだそう。

皮から手造りです。カウンター席ならば目の前の仕込み台で包む光景が楽しめます。これを餃子鍋に敷き詰め、やかんからお湯を流し入れ蒸し焼きのように加熱。油と蒸気によって中はふっくら、皮はパリパリに仕上がります。

ニンニクは不使用。キャベツだけでなく玉ネギがたっぷり使われているのが特長で、そのまま食べる甘く優しい印象です。これをニンニク入りのオリジナルラー油やご当地醤油につけて、ぎゅっとメリハリある味にするが又兵衛流。生ビールがスイスイと進みます。

キリンクラシックラガー中瓶(600円)

やきとりをつまみながらゆっくり飲もうと、二杯目は瓶ビールにしました。銘柄はキリン唯一の熱処理ビール、キリンクラシックラガーです。昔ながらのキリンらしい苦味を楽しみます。

やきとり(100円~)

やきとりは1本単位から注文可能。味付けは福岡らしく塩のみ。左からかしわ、アスパラ巻き、とり皮です。ダルムやヘルツなど久留米らしい串焼きもあります。

一般的に、肉の間に玉ネギを挟むのが久留米やきとりです。そして、豚でも牛でも海鮮でも、串で焼けば「やきとり」と呼ばれます。

ポクポクでジューシー。付け合わせのキャベツを箸休めにつまみつつ、ビールを一口、また一口。

びっくりするほどジューシーなアスパラ巻き。配膳担当の店員さんのおすすめでお願いしましたが、なるほど確かにいい味です。

もともと餃子の店としてはじまり、餃子が焼き上がるまでのつなぎ役として焼き鳥を始めたそうです。いまでは、餃子もやきとりも名物料理です。

明るいスタッフの皆さんと二代目、三代目が切り盛りする街の人気店へ、久留米滞在の際は立ち寄ってみてはいかがですか。

ごちそうさま。

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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名ギョウザとやきとりの又兵衛
住所福岡県久留米市東町26-15
営業時間18:00~23:00(土日は17:00~23:00・火定休)
開業年1964年(屋台として創業し、その後旧店舗へ。2016年に現在の店舗へ移転)