福井駅前で半世紀続く老舗酒場「味の王様」。2代目が店を受け継ぎ暖簾を守ります。立地の良さから出張者の利用が多いですが、地元の酒好き・酒場好きの常連さんも多く、街の雰囲気が感じられる一軒です。
目次
福井は駅の繁華街が近い
2024年に北陸新幹線の開業を控えた福井駅。駅前には、恐竜の化石発掘で世界的な知名度を誇る福井をアピールする、実物大のフクイサウルスなどの恐竜モニュメントが常設展示されています。なんと、動きますし、鳴き声がバスロータリーに響きます。
恐竜と新幹線開通前夜的な再開発に注目しがちですが、福井は全国的にも珍しい、代表駅とお城・県庁と繁華街が徒歩圏に集まった街なのです。街歩き・飲み歩きを旅先の目的にしている人にとっての、まさにコンパクトシティ。
JR福井駅西口をでると、左に駅前繁華街の「中央」があり、正面の路面電車が通る道を200m進めば、ホテルや銀行、飲み屋がある繁華街「片町」。駅の右側には福井城址と本丸内に建つ福井県庁。細い路地の飲み屋から、仕事で使うような料理屋・割烹、大衆酒場まで、簡単に巡れます。
片町にはカツ丼発祥の店と言われている洋食店や、全国展開する焼鳥チェーンの1号店があり、これらも要チェック。
駅と県庁を結ぶ100mほどの道には、典型的な昭和の大衆酒場が連なっています。日本海の魚介類を看板料理にした人気店揃いです。
半世紀続く店、酒場好きの心をつかむ雰囲気
そうした中の一軒、昭和43年から続く老舗居酒屋「味の王様」を訪ねます。
暖簾をくぐると、そこは飴色の世界。樽酒が中央に鎮座したカウンターが視界に飛び込んできます。老舗でもピカピカの厨房では、板前さんが次々と魚をさばいています。
小学校の教室ほどの空間に、厨房、カウンター、テーブル、畳敷きの小上がりを並べたようなつくり。席数は30席と少々。壁にはレトロなヱビスビールのポスターに混ざって、二代目店主お手製のかわいい恐竜のイラストが多数飾られています。
それでは、一杯目。サッポロ黒ラベルの大瓶(660円)で始めます。乾杯!
突き出し(250円)は日替わりで、この日は海鮮の酢味噌和え。突き出しから魚介を出すお店は、次の刺身などに期待が高まります。
品書き
飲み物と一品料理
サッポロビールの担当者もおすすめする酒場。樽生ビールは長年サッポロ生ビール黒ラベル。いまだに星マークが赤いジョッキ(昔ながらの中ジョッキ730円)も現役です。瓶ビールは、サッポロ黒ラベル(大びん660円)とサッポロヱビス(大びん710円)、アサヒとキリン(各大びん660円)も選べます。
価格指標になりやすいチューハイは、樽詰の氷彩サワー(味はプレーン・ライム・レモン)で各380円。一番飲まれているのは日本酒のようで、福井市の地酒の福千歳(田嶋酒造)、羽二重正宗(常山酒造)は1合360円とリーズナブルです。
一品料理では、かにみそとうふ(410円)が人気。海鮮がメインながら、角煮(730円)からジャガバター(550円)など、総合居酒屋的なラインナップです。
オトクに飲みたい方は、口開けから19時までの晩酌セットが狙い目。お酒または生ビール1杯に、突き出し相当の小鉢、いわしやイカの刺身、アジフライなどの一皿がついて1,000円と、大盤振る舞い。
日替わりメニュー
魚介の旬は居酒屋の日替わりメニューからも感じられますよね。日本海の幸が並ぶ品書きで、取材時は酢牡蠣(4~5粒930円)、カワハギ薄造り(770円)、ホタルイカたまり漬け(630円)など。冬季には越前がに(ずわいがに)も加わります。
タラの白子が「ダダミ」と表記されていることに日本海側らしさを感じます。ダダミガーリックソテー(980円)は、4人組がシェアして食べるのに丁度いいボリュームです。
看板料理はあじのたたき(660円)。定番のお刺身は地物のあまえび、たこ、ぶりなど。北陸名物白エビの唐揚げ(830円)も気になります。
老舗のガヤガヤを環境音にして、酔いすすめる楽しさ
あじのたたき(660円)
名物のあじのたたきはこの通り、キラキラと輝いています。醤油をたらし、生姜、ネギを自分でかき混ぜて仕上げにするのが「味の王様」の流儀。
マアジは全国で水揚げされる一般的な魚ですが、福井のそれもまた特別です。
福正宗1合(360円)
店名つきの蛇の目お猪口で飲む、冷(常温)のお酒。地元の刺身には地元の定番酒をあわてハズレなしだと思っています。スルッと飲み干して、次は羽二重正宗か雲の井か。
特製牛すじ煮込み(480円)
根菜をいれず、濁りを抑えた上品な牛すじ煮込みです。肉がたっぷりで、キリリとはっきりとした甘醤油味がお酒やビールを誘います。
〆のお椀はサービス
〆にはしじみの味噌汁がサービス(無料)で提供されます。飲んだあとのお椀は本当にほっこりします。お客さんへの気遣いが嬉しいです。ただ、このお椀が呼び水になり、徳利をもう1本頼むことになりそうです。
厨房はベテランの板前さん。接客は二代目と大学生風の若い店員さんが数名で忙しくされています。また、老舗ですが、注文はQRコードを読み取り、お客さん自身のスマホからオーダーする仕組みが採用されて、接触機会をへらす取り組みも行われています。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 味の王様 |
住所 | 福井県福井市大手2-5-5 |
営業時間 | 営業時間 17:00~23:00 ラストオーダー 22:30 定休日 日曜定休(月曜祝日の場合、日曜営業月曜休業) |
開業年 | 1968年 |