【閉業】遠野「梅鮨」ホップ×三陸海の幸。町の老舗寿司で旅情に浸る

【閉業】遠野「梅鮨」ホップ×三陸海の幸。町の老舗寿司で旅情に浸る

2021年8月27日

岩手県遠野市。家族経営で約半世紀の「梅鮨」は、地元の常連さんと旅行者の素晴らしい交流の場。気さくなご夫婦の醸し出す牧歌的な接客に癒やされます。三陸でとれるウニなどを肴に、遠野名産のホップを使用した一番搾りで乾杯しましょう!

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民話とお酒の聖地、夜は町寿司で交流を楽しむ

遠野は岩手県の山間部にある小さな盆地にできた町。花巻と釜石の中間に位置し、宮沢賢治著「銀河鉄道の夜」のモチーフとなったJR釜石線が走ります。カッパ伝説を始めとする妖怪や民話が多く伝承されてきた、少しファンタジー的な雰囲気が漂っています。

お酒好きにとっては、遠野は聖地。ビールの原料となるホップの生産が盛んな地です。また、古くから個人による酒造りが行われており、どぶろく特区に指定されていることでも有名です。

そんな見どころや食の個性が豊かな町なので、遠野観光は日帰りせずにこの町に一泊されることをおすすめします。

明治創業の百年酒場、名物の遠野ジンギスカン、地元産ホップなどでつくるクラフトビールブルワリー併設のパブなどありますが、〆のひとくちは寿司店という選択はいかがでしょう。

遠野駅から徒歩3分ほど。静かな町に灯る鮨の看板。暖簾をくぐると常連さんの賑わいに驚きます。優しく迎えてくれるご夫婦に導かれて、常連さんたちのとなりへ。お客さんはIターンやUターンで町の賑わいを取り戻そうとされる方や、ホップ農家の方など様々。

外国人観光客やビールやどぶろくを楽しみに来るリピーターの観光客も多いのだそう。

大きくとられたカウンター席の対面は小上がり。昔ながらのどっしりとしたつくりが気持ちいい。カウンターやテーブルには地元産の杉を使っているといいます。

遠野では一番搾りは地ビールだ

遠野はキリン率が非常に高い。梅鮨もご多分に漏れず、キリン一番搾り。日々のサーバー回路の水通しをはじめ、しっかり品質管理に取り組まれているそうで、状態は良好。

それでは乾杯!

ホップの栽培面積で遠野は日本一を誇ります。生産されたホップはキリンビールが全量買取(一部、キリン以外でもシロップ原料などで使用)を行い、「一番搾りとれたてホップ生ビール」(通称:とれいち・TI)など、普段私たちが飲んでいるビールの原料に使われています。

遠野では、一番搾りは地ビール的な存在。毎年初秋に発売される「一番搾りとれたてホップ生ビール」を皆さん楽しみにされています。

丁寧な仕事の江戸前にぎり

「つけ台」にさっと出してくれるのがかっこいい。

酢の角がとれ旨味と塩が馴染んだ小肌。丁寧な仕事がされているのがわかります。きりっとしたやや硬めの酢飯は口の中でほどけていきます。

すじなど当然なく、均一な鮮紅色で美しい本まぐろ。遠野の造り酒屋・上閉伊酒造の國華の薫を1合をあわせます。

ホップ収穫からのフレッシュホップを使用したビール醸造期は、岩手は秋鮭のシーズンとなります。久慈、宮古、釜石などの地元産いくらをはじめ、ホヤやウニ、タイラギなどが寿司種のケースを賑やかにします。

小さな町の寿司店、それでいて、食材が豊富で地のものが多く非常に楽しいです。最たる例が、この日二種類用意されていたウニです。キタムラサキウニやバフンウニに舌鼓を打つひととき。地元の皆さんとのほろ酔い話も盛り上がり、時間はあっという間に過ぎていきます。

最後のお椀まで大満足。飲んだあとの〆に立ち寄ったつもりが、すっかり一軒目のような気分で飲んでしまいました。時計を見ればもうすぐ23時。あっという間でした。遠野の夜はおもしろい。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名梅鮨(梅寿司)
住所岩手県遠野市中央通り11-13