すすきので1946年(昭和21年)に創業した焼鳥「福鳥本店」は、現存する札幌で最古の焼鳥店と言われています。
北海道はもともと焼鳥を扱う店が多く、鶏モツの「美唄焼鳥」や豚バラの「室蘭やきとり」など、地域によってその内容は様々。福鳥本店は、豚モツも鶏もある混合タイプ。メニューは串ものと煮込み、そして漬物、冷奴と非常にシンプルながら、ひとつだけ海鮮で「ホタテ貝焼き」が入っています。全国どこにでもある焼鳥店でも、その街の老舗はやはり地域色があります。
すすきのの店舗は2012年から本店に
お馴染み、北海道最大の歓楽街「すすきの」。メインストリートは大箱の酒場が多いですが、少し入れば古くから続く老舗の個人店がまだまだ健在。
鳥の字が個性的な白いのれんが目印。福鳥本店は最盛期3店舗を構えていましたが、2012年、南4西1で開いていた本店を現在の南3条に移し、現在の「福鳥本店」となっています。三代目が守る老舗暖簾で、家族経営のあったかい雰囲気の酒場です。
奥に長いカウンターをメインにしたつくりで、焼き台の前が常連さんたちが集う人気の席。焼台には串のほか、水差しが載っていて、遠火ながら直接炭でお酒のお燗をつけています。
寒くても酒場に入ればビールが欲しくなります。北海道開拓使によってつくられた札幌ビールの系譜にある、サッポロ黒ラベル(樽生中ジョッキ580円・以下税別)で乾杯です。
状態がとてもいい、クオリティの高い生ビールがでてきます。瓶ビールの黒ラベルもあります。
メニューは鶏・豚・牛と揃う
お酒は創業時から変わらず「高清水」。チューハイは樽詰め(350円)、生葡萄酒(赤・白/630円)、焼酎いいちこなど。
串焼きは、鶏、豚だけでなく、牛串もあります。豚(490円)はバラのことで、タレ焼きにしてもらうと、とろみのある甘いタレをまとった室蘭やきとりのようになります。「ウマイ」(3本490円)というダイレクトな名称の串はタンの周りの肉のこと。煮込み(320円)は豚モツではなく、牛の切れ端を赤味噌ベースで煮込んだものがでてきます。
お通しはありませんので、その代わりとして漬物で串が焼けるまでを繋ぎます。白菜、きゅうり、かぶ、ナス、キムチなどありますが、土地の味といえば「にしん漬け」でしょう。
ニシンのエキスを吸ってしっとりとしたキャベツは、酸味と旨味が秀逸。ニシンの身は、ちびりと噛みながらお燗酒を飲むのには最高の味です。
トリ(490円)。味付けはタレと塩が選べます。弱火のところでゆっくりと火を通している様子。うなぎなどに使う金属のボッカ串に細長く打たれたトリは、ぎゅうっと詰められていて噛むと隙間から肉汁が染み出してきます。
ツクネのほかに、「ツミレ」(1本310円)という料理がありますが、こちらでは大きな傘のしいたけにツクネが詰められたもの。とろみのあるタレが染み込み、ほどよい濃い味。これはビールから日本酒へシフトしたくなりますね。
高清水は焼台の横で常時温められている
お酒は高清水一筋。常にぬる燗ほどに温められている日本酒はコップにすりきりで注いでくれます。水飲み鳥のように、きゅっと飲めば思わず小声で「はぁー」って言ってしまいそうです。
手羽元、手羽先、手羽にもいろんな部位が焼鳥になりますが、ここは「手羽中」(1本290円)。食べやすい「イカダ」と呼ばれているところ。皮目のぱりっとした仕上がりにベテランの技を感じます。滴る脂に、辛口の高清水がこの上なく美味しく寄り添います。
BGMのない硬派な空間。ベテランのお父さんたちが、さっとお燗酒を飲んでつまんでいくような場所です。小一時間、そっとこの場に居られるだけでも、なんだか札幌のことをもうひとつ知れたような気分になります。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | やき鳥 福鳥本店 |
住所 | 北海道札幌市中央区南3西2 |
営業時間 | 営業時間 17:00~22:30 定休日 日曜日 |
開業年 | 1946年 |