山手通りと青梅街道が交差する中野坂上。
新宿西口の高層ビル群にも近く、交差点を中心に3つの象限は再開発が行われ、立派な高層オフィスビルが建っています。もう昔の町並みは消えてしまったような、近未来の眺めになった中野坂上交差点。
ですが、残る一画を大通りから1本入ってみると、そこには昔ながらの区画が残り、人々の暮らしを身近に感じる住宅街があります。細い路地に何軒か商店があり、そのなかの一軒が今回ご紹介する「新華楼」です。
創業は1969年(昭和44年)。新宿西口の京王プラザビルが完成する2年前のこと。淀橋浄水場跡地の再開発で多くの労働者が中野坂上に集まった時代です。
51年もの間、現役で中華鍋を振り続けてきた大将は今も現役。吉祥寺のレストランで修行後、ここに店を開いたそう。修行中は中華だけでなく洋食も経験したことから、新華楼は今も中華と洋食の二枚看板です。
赤いテーブルに、赤い丸椅子。昭和の映画にでてくるような典型的な中華店のつくり。中華鍋を振るう大将と、常連さんたちの笑い声が店を包みます。
夜はご近所さんのたまり場となっていて、皆さんお酒片手に井戸端会議。近所のオフィスに勤めるスーツ姿のグループや、ジャンパー・つっかけ姿のお父さんなど、幅広い層がここに集い、思い思いに食べて飲んでいます。
ビールはアサヒスーパードライ、キリン一番搾り、サッポロ黒ラベル、の3種類。それぞれ大ビン(620円)・中ビン(580円)が用意されています。今日はドライの気分。トトトとビアタンを満たして、では乾杯!
はいどうぞ、ビールについてくる小鉢は決まってキムチ。今日はこんにゃくもついてきました。
いまどき、新宿区内の駅近くでラーメン1杯500円なんて、個人店ならここか、思い出横丁のあそこくらいしかありません。品数の多さにも驚かされます。さらに「こんなのできる?」と常連さんは品書きにないメニューもオーダーし、それに応える大将がいます。
ホワイトボードには時々内容がかわる「酒のつまみに」コーナーがあり、手羽先唐揚げ(400円)、ミートオムレツ(600円)、カツの玉子とじ(500円)などが加わります。
せっかく洋食もだされるお店なのですから、ここはそんな酒のつまみコーナーから、グラタンコロッケ2個(400円)を頼んでみました。
もちろん自家製。具だくさんで食べごたえもある一品。ビールを一瞬で乾かす魔法のようなおつまみです。
飲み物はビールのほか、日本酒(300円)、焼酎(400円)のみ。紹興酒はありません。焼酎は水割り、ウーロン割り、レモン割り、バイス、お湯割りの3種類。どれも400円均一です。
定番のレモン割りは、立派な氷とスライスレモンが浮かぶ、みるからに美味しそうな一杯。
コダマの梅ジソ味のヒット商品、バイスサワー。ビンではなく、予めつくって出されます。
肉団子(900円)。甘酢あんたっぷり、大皿にごろごろと肉団子が盛りつけせれた一品。素揚げで表面はサクっとしていて、中はしっとりジューシーです。
チャーハン スープ付き(580円)は、脂でお米一粒一粒が包まれ、ほどよくパラパラ。醤油の香ばしいかおりが酎ハイを誘います。
昔ながらの町の中華料理店で、じっくり腰を据えて飲みたい方にオススメの一軒です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
新華楼
03-3363-1496
東京都中野区中央2-2-22
11:30~15:00・17:30~22:00(日祝定休)
予算1,800円