東京都心を飲み歩く方にはおなじみの「味の笛」。御徒町と神田の2店舗、ともにJR山手線の高架下に構える立ち飲みです。御徒町駅前で1933年に営業を始めた吉池商店(現:吉池)の直営店で、食品とお酒に強い吉池ならではの安くて美味しい酒と肴が楽しめます。
味の笛は、神田店のほうが1軒目で、1992年(平成4年)にオープンしました。営業は平日のみで、16時と少し早い開店時間にもかかわらず、暖簾がでるのと同時にスーツ姿の人々が次々と集まり、コンパクトな店内はあっという間に満卓の賑わいとなります。
吉池の創業者は現在の新潟県十日町の出身で、1920年(大正9年)に赤羽橋で鮮魚店を始めたのがルーツです。そのため、味の笛のお酒は新潟県産の銘柄がほとんどで、おつまみも魚中心です。
また、魚に力を入れてきた吉池は、1986年(昭和61年)に北海道・別海町で鮭の加工施設を開設。別海町の鮭を育む西別川の川底にあるパイプ状の河石が「味の笛」と呼ばれており、それが立ち飲み業態の「味の笛」の由来となっています。
そんな背景を知ると、駅近くでリーズナブルな立ち飲み酒場というイメージだけでなく、新潟のお酒を片手に、味の笛が育てた別海の幸が食べたくなります。
味の笛の定番酒は、上越市・うらがわらの酒蔵・新潟第一酒造の「越の白鳥」(350円)です。昔ながらの緑色の「お燗瓶」で王冠打ちされているもので、お燗酒で注文すると、お湯でつけられたものがやってきます。使い切りのプラカップに注いで、乾杯!
チューハイ類は200円から。樽生ビールはアサヒスーパードライと、ドライブラックで、ともに1杯250円と驚くほどリーズナブルです。
日本酒は越の白鳥だけでなく、1杯500円前後で新潟の有名銘柄を楽しめるほか、銘酒セットで気になる銘柄3点を飲み比べるセットもあります。
気になるおつまみも、お酒に負けず劣らずバリエーション豊かでなおかつお手頃価格です。冷蔵ケースで出番を待つお刺身(300円前後)は、一人でつまむのにちょうどいい量。こちらも使いきりのパックに入っていて、なんとなく食品スーパーのイートインコーナーで食べている感覚です。
まぐろをおつまみに、きゅっと上越のお酒。店内のテレビから聞こえる夕方の情報番組をBGMにして、暮れゆく東京ののんびりした時間に身を委ねます。
おつまみはお刺身だけでなく、これまた惣菜コーナーのように焼魚、煮もの、酒の肴が勢揃い。山盛りに用意されている焼き魚も日が暮れたくさんの人が飲みに繰り出す頃には売り切れになるものも多数。鮭、さんま、真ほっけ、桜マス、にしんなど、別海町から直送の品です。
鮭の粕漬け焼きなど、ぜひお試しを。ちびちび日本酒を飲みながら、しみじみ美味しさを感じます。
味の笛は、店内正面のカウンターでお酒と料理を選んで、先払い。あとはお好きな場所を選んで楽しく飲んでつまんでいい気分。なんとお会計にはSuica・PASMOなどの交通系電子マネーが利用でき、小銭いらず。そのためピピっと1杯、いつも一杯多めに飲んでしまいます(笑)
長っ尻せずに、ささって満喫。ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
味の笛 神田店
03-5294-0141
東京都千代田区鍛冶町2-13-26
16:00~22:00(土日祝定休)
予算1,400円