鹿角花輪「ホルモン幸楽本店」 昭和27年創業、街を代表するビールのお供

鹿角花輪「ホルモン幸楽本店」 昭和27年創業、街を代表するビールのお供

日本各地には全国区ではないけれど、地元の人に愛され続けているローカルグルメがあります。その土地に根付いた味を肴に一献楽しむべく、今日も旅にでます。

ここは鹿角(かづの)市花輪。北に十和田湖、南に八幡平という山岳地帯に挟まれた花輪盆地の中心に位置し、長い歴史がある町です。町の名物はホルモンで「鹿角ホルモン」と呼ばれています。発祥のお店は、1952年(昭和27年)創業の老舗食堂「幸楽」。60余年経ったいまも、昼から夜まで通しで営業しています。

 

鹿角市花輪へは、岩手県の県庁所在地駅である盛岡から、JR花輪線が結んでいます。雪深い北東北の山中を、2両編成の列車はぐんぐん登っていきます。

 

約2時間の汽車旅で、鹿角花輪駅に到着です。

 

列車の本数は少ないながら、立派な駅母屋があり、駅前にはタクシーや、志張温泉へ向かう路線バスも発着する賑やかな雰囲気です。

 

ロータリーには立派な鶏の像があります。秋田三鶏のひとつ、声良鶏という鶏で、この町で飼育が盛んだそう。

 

鹿角はまたきりたんぽ発祥の地でもあります。地鶏、きりたんぽ、そしてホルモンと、食べたいものばかり。駅周辺はアーケードもある商店街が広がり、かつての繁栄の名残があります。飲食店が多く、一泊してしっかり飲み歩いてみたい町です。

 

駅から雪道を歩いて10分。ホルモン幸楽本店に到着です。1952年に初代となる女将さんが創業し、二代目があとを継ぎ、母娘三代、家族によって切り盛りされています。

 

昭和32年築で、懐かしい雰囲気の店内。小上がりとテーブル席が並びます。雪道を歩いた靴を脱いで、ぬくぬくの畳の上でほっと一息。さぁ、飲みたくなってきました!

 

生ビール(510円)、瓶ビール(510円)、お酒は高清水で310円、地元の千歳盛の生酒は720円です。

 

20L樽を繋いだピカピカのディスペンサーから注がれる仙台名取でつくられたサッポロ黒ラベル。中といいつつ500ジョッキのインパクト。さぁ、乾杯!

 

看板料理のホルモン(340円)に、野菜(210円)、豆腐(310円)を加えることで鍋焼き1セットです。定食のようにはなっていないので、ご飯など希望にあわせて頼みましょう。私は美味しい鍋焼きとビールにお酒があれば十分。

 

焼肉店のようなサイドメニューも用意されています。

 

直径30センチほどのジンギスカン鍋を使うのが鹿角ホルモンの特長です。幸楽の初代女将が創業当初からジンギスカン鍋にこだわっていたのだそう。ホルモンの旨味を野菜に染み込ますためではないかと言われています。

 

闇市の食堂として始まった幸楽。戦後で食料が少ない中でも手に入りやすかった豚ホルモンを美味しく食べる方法として、初代が考案した味です。醤油ベースで唐辛子やにんにくを効かせた特製タレがよく揉み込まれています。

 

主役のホルモンを中央に載せ、周囲に豆腐を並べ、キャベツは蒸し焼きにするようにセット。すぐに、お酒を誘う香りが広がり、思わず生唾を飲み込みました。

 

豚ホルモンと言っても部位は様々。モツから肉汁が染み出して、甘辛いタレと一緒に豆腐や野菜へと流れていきます。

 

鍋のふちに肉汁が溜まって豆腐が軽くきつね色に染まりました。濃い味のホルモン、この味はクセになります。辛さとにんにくのコクがホルモンの旨味を引き出しています。噛むほどに美味しく、ビールを誘う最高の肴です。

 

スプーンで豆腐や野菜もいっしょに頬張れば、思わずうなずく美味しさです。

 

お燗酒も相性が良くて、まだ明るい時間にもかかわらず、ホルモンと日本酒ですっかりいい気分です。

かつて鹿角には尾去沢鉱山がありました。幸楽も鉱夫に親しまれた食堂だったそうです。働く人々の活力となったホルモンに、町の歴史を感じます。

またぜひ訪ねたい素敵な郷土の味でした。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

ホルモン幸楽 花輪本店
0186-23-3736
秋田県鹿角市花輪堰向5
9:30~23:00(15時から16時は注文できない休憩時間です・火定休)
予算2,000円