一ノ関「やきとり山平」 創業60余年。秘伝のつめだれで食べる地鶏を肴に。

一ノ関「やきとり山平」 創業60余年。秘伝のつめだれで食べる地鶏を肴に。

世界遺産「平泉」の玄関口、一ノ関。奥の細道で平泉を訪れた松尾芭蕉も宿をとった地で、昔も今も交通の要衝です。駅から軽い散策で芭蕉が泊まったとされる「二夜庵跡」などの痕跡を辿ることができます。現代は、東北新幹線が停車するほか、JR大船渡線を利用して気仙沼、大船渡方面へ足を伸ばすことも可能です。

そして、なんと言っても忘れてはいけないのが、歴史ある城下町・宿場町らしい立派な飲み屋街の存在です。ファンの間では聖地と呼ばれる伝説のジャズ喫茶を始めとした名店が揃っています。今回ご紹介する「やきとり山平」も60余年の歴史を持つ名酒場です。

 

古き良き地方都市の鉄道駅らしいどっしりとした佇まいの一ノ関駅。三賢人像(大槻玄沢・大槻磐渓・大槻文彦)が街を見守ります。

 

中心市街とJR駅が離れていることはよくありますが、ここ一ノ関の中心「大町」へは徒歩で迎える距離です。宿泊せずに軽く途中下車で立ち寄って飲み歩き、仙台や盛岡で宿を取るなんていう梯子酒もおすすめ。

 

少し歩いてやってきました、目的のお店「やきとり山平」。飲食ビルの中にあります。

 

小さな入口から想像できないほど、奥に広がる店内。これが開店から数分でカウンターを満席にするほど賑わうのですから、いかに地元に愛されているかがわかります。

 

ベテランの職人さんと、若いスタッフの阿吽の呼吸が心地いい。とても紳士的な接客で迎えてくれます。ビールは昔からずっとサッポロ。状態抜群のディスペンサーから注がれたサッポロビール仙台工場醸造の黒ラベルに、急ぎ手を伸ばします。乾杯!

中ジョッキ(540円)と言いながらしっかり大きなサイズで提供されるのは、老舗酒場でよく出会う嬉しさです。

 

お酒メニューの筆頭は定番のビールではなく、地酒「関山」です。中徳利で380円。酎ハイ類は400円。

 

日本酒は地酒・関山や浜千鳥など南部杜氏の銘酒や東北のお酒が豊富です。

 

一ノ関は地鶏の産地としても有名。そんな地産鶏をつかった焼鳥が看板です。豚モツはなく、すべて鶏。一皿3本で300円と手頃なので色々頼みましょう。カウンター席ならば1本単位で頼めますので、お一人でも安心です。

 

自家製さつま揚げやぬか漬けが常連さんに人気です。定番の煮込みをつまみつつ、じっくり燗酒と合わせて体を暖めたいですね。ホヤのこのわたでつくる「ばくらい」でちびちびと南部美人を舐めるのもたまりません。

 

太平洋側、気仙沼がわりと近いこともあって魚介類も充実しています。取材時は旬のカツオやサンマの刺身が並んでいました。

 

炭火でしっくり焼き上げる焼鳥。最後に伝統のつめだれに潜らせて完成。一本はそれほど大きくはなく、お酒と串がリズム良く進みます。

 

一度に頼んでも、焼けた順にだしてくれるのでちょっとした寿司カウンターの気分。次はぼんじりを焼いてもらおうかな。

 

自家製の塩辛(350円)は、浅漬かりでイカ刺しの肝和えに感じる食感と旨味が心地いいです。300mlの冷酒を一本もらって、手酌でくいっと飲んでつまめば、あっという間にいい気分。

 

地もののしいたけ焼き(160円)。素朴ながらじんわり美味しい土地の食材を味わえる、旅酒の醍醐味です。

 

どっしり構えた老舗酒場に身を委ねてお酒と肴で心を満たすひととき。

一ノ関に訪れた際には「山平」の暖簾をくぐられてみてはいかがでしょう。きっと素敵な旅情を味わえます。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

やきとり山平
0191-23-3658
岩手県一関市大町4-11
17:00~23:00(日定休)
予算3,000円