住吉「いづもや」 60年の老舗で路面電車をBGMに、とろりう巻きとキリンラガー。

住吉「いづもや」 60年の老舗で路面電車をBGMに、とろりう巻きとキリンラガー。

寿司も蕎麦も天ぷらも、伝統的な和食はどれも飲み屋のように楽しめます。昼食がてらの鰻屋で、焼けるまでの時間にビールや日本酒を傾けて過ごす時間もまた格別です。

銀座や浅草に構える有名店はもちろんいいものですが、街に長く根付いた庶民派の店にもまた魅力があるというもの。例えば、大阪は住吉、摂津国一宮 住吉大社の境内にほど近い小さな商店街にご紹介したいお店があります。

60年以上続く地元に愛される店「いづもや」です。

 

阪堺電車が行き交う道路に面した小さなお店です。なかなかの風格で、ここだけ時間が止まっているかのよう。

 

お昼から通しで営業されていて、地元のお父さんが一人でちょいと食事がてらビールを傾けていく様子が似合います。

 

焼けるまでの間、しばしお昼酒の時間といきましょう。若いご主人に鰻を頼んだあと、さきに始めていますと瓶ビールをお願いしました。

ゴトゴト、グーンと音をたて道を行き交う路面電車の音をBGMにして、ゆっくりした時間が流れる店内。開け広げた扉から暖簾を越しで差し込む午後の日差しに照らされ、キリンクラシックラガーが一層素敵に見えます。

では乾杯!

 

どこの鰻屋にも似ているとはいえない独特な、食堂や飲み屋のような雰囲気の店内。非常に庶民的な空間です。心が空気に溶けていくような不思議な気分です。

 

鰻屋で肴といえばう巻き。手際よく調理され、厚くふかふかに仕上がっています。たっぷりかかった鰻のタレに、出汁の効いた玉子をくぐらすようにして。

 

たっぷりの鰻がはいり、旨味や脂が玉子に滲みています。絶妙なとろとろ感がたまりません。これだけボリュームがあって500円です。

 

関西の鰻は「地焼き」と呼ばれ、東京のそれとは違った方法で焼かれます。東京は背から開いて筏(いかだ)状にして蒸してから焼くのに対し、関西は腹から開いて長いまま蒸さずに焼き上げます。脂を落とし柔らかな関東の鰻と比べ、しっかり食感でぱりっと仕上がっている特長があります。

ここ「いづもや」もまた典型的な関西風です。

 

表記も鰻重ではなく、鰻まむし代と書かれています。600円、800円、1000円、1,500円、2,000円と細かく刻んだ値段設定です。それにしても600円から食べられるのですから懐にだいぶ優しいですね。

 

タレがまぶされたごはんが敷き詰められ、ごはんものであってもこれがまた酒の肴として飲ませてくれるんです。

 

お酒をコップでもらって、鰻まむしを肴にちびりちびりと幸せのお昼酒。食事のお店ですが、こうしてお酒を中心にして鰻屋さんを楽しむのもいいものです。

住吉へ訪れる際は、鰻を肴に一献なんてよろしいのではないでしょうか。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

いづもや
06-6671-2768
大阪府大阪市住吉区東粉浜3-29-1
11:30~売切まで(水定休)
予算2,500円