渋谷は老舗の焼鳥屋が長年の暖簾のタスキをつなぐ傍らで、新しい世代がつくる大衆酒場が続々と出店し、人気を博しています。道玄坂に誕生した「呑ん処二◯九」もそのひとつ。新しくても、大衆酒場の基本形に忠実。20代、30代だけでなく、酒場に馴染んだ先輩たちにも違和感なく受け入れられるお店です。
営業は日暮れ前の15時から初電待ちで飲める朝5時までのロングラン。深夜に飲める大衆酒場は貴重なので、渋谷で遅い人はとくに必見です。
シブヤバルやアジアンバルなど、これまでバル業態を渋谷で展開してきた会社の初となる酒場。いつかは酒の店の原点を作りたかったという想いが実現したそうです。
厨房を正面にL字カウンターとテーブル席という典型的なつくり。短冊が並び、刺身などは中央の冷蔵ケースやカウンターのネタケースで直接選ぶことができます。
二千円台から並ぶボトルワインや日本酒。グループで飲むならば角打ち感覚で一本飲んでも良さそう。価格も抑えられています。
金髪の店員さんはさすが渋谷。会話をしてみるととても温和な人たちで、弾む会話も楽しい。
テーブルは6人がけでベンチシートとなっています。2名グループならば同じ島を共有し、袖触れ合うも他生の縁。気がつけば隣の人とも仲良くなること間違いない。
お酒の品書き。なんと生ビールはキリンラガーの樽となかなか珍しいチョイス。瓶ビールでクラシックラガー、大手4社の瓶ビールが揃うので銘柄指名をする人と一緒でも安心。サイコロを振って出た目でお得になる丁半ハイボールは、目を予想して当てたらなんとキンミヤ瓶がプレゼント。むむ、挑戦しなくては。
シャリキンもあるので、ホッピー飲みも楽しい。
なにはともあれ、乾杯は生ビール。キリンラガーの生(450円)で乾杯!
お通しはしらすおろし。大根おろしはなんと食べ放題。
しらすもたっぷり。
これでもかと盛ってくれるのでこれだけでビールが飲めてしまいます。
お店のテーマは、「スシ、テンプーラ、スキヤキ!」という外国から見た日本食のイメージ。乱暴に集めているのではなく、きちんと整えて酒場の顔ぶれとして居違和感は感じません。このへんの基本形からの色つけはさすがといったところ。
メインはネタごとに注文できる「天ぷら」です。
すぐにでるおつまみは冷蔵ケースから。どこか大衆食堂の気配があって、それも楽しい。寿司やすき焼きなど一部を除き500円未満がほとんど。すき焼きも一人前800円なのだから、この立地ではずいぶん割安です。
キリンクラシックラガーの大びん(590円)に、なめろうを。天ぷらが揚がるまでのつなぎ役として十分。
渋谷109にマークシティ、道玄坂の雑踏も感じない、この別世界な感じがいい。酒場に癒やしを求める筆者には、新たな逃げ込み場の誕生です。
このあと、天ぷらなども頂いていますが、このなかで一番印象に残ったのがこの煮込み。聞けば、だいぶ研究なさったそうで。甘めなのですが強すぎず、クサミなく旨味がふんわり広がる味わい。
キュウリを使ったかっぱハイ(450円)。ほら、ちゃんとキュウリが浮かんでいます。冒険してみる?
メロン風味のシロップが入り少し甘いので、不思議な気分。
不思議繋がりで、メロンソーダにはフライドポテト!
!?
実はこれ、大根の天ぷら。MのTEMPURAの「M」。ぎりぎりセーフ?笑いを狙っていますが、甘く煮た大根をささっと揚げていてジューシーでなかなかおいしい。違和感バリバリですが。
おでんは100円からで1つから注文可能。揚げたてを自分のペースで楽しみましょう。変わり種も豊富で、ウニ✕しそ天(450円)はミルフィーユ状の紫蘇にウニをトッピング。
穴子は1匹登場。多きすぎず脂のつき具合もちょうどよいです。(450円)
海老天(250円)など、定番のネタはおふざけなく、しっかりおいしい。揚げ具合、揚げ油の状態も安心。フライヤーはここ数年で登場した油をキレイにする特別な機材が入っています。
甲類焼酎の割り材に、キリンレモンという選択。これぞ、元祖キリンレモンハイ。
全体的に遊び心が多いですが、決して若い人向けではなく、大人が安心して飲める大衆酒場です。男性のみ24才未満の方は23時までの来店はお断りという、まさしくパリピーキャンセラーを掲げており、実際にお断りしたこともあるのだそう。ある程度、酒場の使い方を知っている人たちがやってくるお店です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビール株式会社)
呑ん処 二○九
03-6712-7781
東京都渋谷区道玄坂2-9-10 松本ビル 1F
15:00~29:00(日は24:00まで・無休)
予算2,500円