覚王山日泰寺の寺町、名古屋・覚王山は地下鉄東山線で名駅から15分。有名なカフェやアンティークショップが立ち並び、名古屋の住みたい街ランキングで常に上位にある人気の住宅街です。
この街で1913年(大正2年)創業の一世紀続く大衆食堂「玉屋」は、街並みのオシャレさに味わいという奥行きを加える存在です。
麺類食堂の文字が渋くかっこいい。
古い建物でも隅々まで手入れがされていて古ぼけてはいません。こういうぴしっとした店構えはそれだけで期待感をかきたててくれます。
昼食時をずらしているにもかかわらず、店内はほぼ満卓の賑わい。スーツ姿の男性グループがきしめんやあんかけ定食を豪快にすする様子は、他県の人が想像する通りの名古屋メシの風景。女性のお一人様も多く、エビフライ定食を「いつもの」という慣れた感じでテキパキと食べています。
その脇で、地元のご隠居は赤だし定食をおつまみに瓶ビールを傾けています。
ビールはアサヒとキリン。中びんと大びんが選べ、全部で4種類。こんな百年食堂ならば、キリンのクラシックラガーの大びん(600円)が似合うでしょう。では乾杯!
サービスの白菜漬けをつまみに、目的の煮カツを注文。定食や麺ものだけでなく、それぞれ単品も用意されてるいるので飲みの利用も安心です。
7分ほどで出来上がり。名物の煮カツ(630円)の登場です。長辺12センチ、厚みは2センチ以上の巨大さ。
昭和初期からの定番で、当初は学生向けのまんぷくメニューだったそう。山盛りのごはんと一緒に、いまも働く男たちの活力ごはんです。
大きいだけが魅力じゃなく、名古屋らしい甘くしっかりした出汁がたっぷり染み込んだ衣はいいあんばい。ジューシーなロースに綴じ卵が絡み、ビールが進む進む。
暖簾の隙間から入る昼の明かりに照らされて、名古屋の食堂飲みは今日も幸せです。
さほどカツで飲むほうではない筆者。こんなに山盛りだと食べきれないかと不安でしたが、後を引く美味しさで箸は止まらず、瓶ビールをおかわりしながら、気がつけば完食です。
4代目ご夫婦が守る老舗の暖簾。続く店には魅力あり。派手さはないけれど、古き良き昭和の食堂の佇まいはそのままで、老舗酒場のノスタルジーに通ずる魅力があります。
ごちそうさま。お腹いっぱいです。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
玉屋
052-751-5512
愛知県名古屋市千種区山門町2-47
11:30~14:30 17:00~20:20(それぞれ閉店時間はラストオーダーの時間・中休みあり・日定休)
予算1,600円