福岡はラーメンやうどん、モツ鍋といった大衆食がどこよりも賑やかです。九州全土からちゃんぽんやとんかつ、焼きうどんなども入り交じるようになり、さらにコテコテの楽しい雰囲気を演出しています。
名物のひとつである餃子も、熱々の鉄板で音をたてながら供される鉄板餃子と、一口サイズでちょいと摘まめる小腹飯の一口餃子とあり、どちらも地元にしっかりと根づいています。
一口餃子は、その食べ安さからお酒のつまみに最適で、福岡市中心部では多くの餃子屋がノンベエであふれています。
この街で一口餃子を食べるとなると選択肢はごまんとありますが、川端の「旭軒」は酒場好き・梯子好きにおすすめしたい一軒です。
観光地である中洲の屋台群にも近く、博多と天神を結ぶ西鉄の100円バス・キャナルシティ前のバス停すぐというアクセスの良さもあって、地元の人はもちろん、遠方からのお客さんにも人気です。
博多名物の「かろのうろん」に近く、隣がラーメン屋というのがいかにもザ・博多です。
オープンは18時。一般的な餃子が特長の店はお昼から開いていることが多いですが、この時間はまさしく飲み屋です。店のアイコンたる大提灯が赤く灯ると同時に、店は地元で働く常連さんたちで8割方埋まります。確実に飲みたい場合は要予約。ですが、回転がよいので案外なんとかなることも。
ビールは大手3社が揃いますが、福岡ではなかなか珍しい存在の赤星があるので、ここでは赤星から始めたい。製造こそ千葉工場ですが、気分はすっかり福岡老舗酒場の古典の味。乾杯!
カウンター12席、畳の小上がりも4人テーブル3つで合計24席。餃子屋としてはやや小ぶりです。一昔前のサイズで作られた内装で、可愛らしい畳のテーブルで夕日を浴びながら瓶ビールを傾けるのは最高です。
もちろん、1人・2人できて、カウンターから餃子を焼く様子を眺めながら一献というのも素敵です。
メニューはこれだけ。餃子しかない、ではなく餃子があれば十分!とまで言わせるここの餃子は、まさにその通りで他のつまみを欲さないほど魅力があります。
焼き餃子と水餃子の2種類。どちらも10個入って420円です。着席と同時に何人前にする?と聞くのが旭軒流。女性の一口サイズというくらいで、軽くテンポよく食べられ、地元の女性はひとりで2枚なんて当たり前だそうな。水餃子の皮はぷりぷり、特製のタレをカウンターならば目の前でかけてくれます。
焼き餃子もかわいいサイズが10個。形こそ普通ですが、水餃子よりもひとまわり引き締まってコンパクト。濃厚ですが余韻はすっきり、プロの技を見せつけられるとはまさにこのこと。1人でも、2枚食べたくなる理由がよくわかります。そして、ビールも大びん1本では足りません(笑)
ラー油はお店特注で、ここでしか食べられない。この餃子の味に惚れ込んだ中華のプロが特別につくってくれたものだそうです。
餃子が焼けるまでの間につまみたい手羽先。カウンターの真ん中に鎮座し、食べてーというオーラを放ちます。冷めて食べる甘じょうゆ味は、手羽先で有名な愛知県とも全く異なる味わいです。
福岡といえば、食事はラーメン、飲みは屋台や関サバなどを食べることが多いですが、地元の人たちが普段から贔屓にする店の実力はなかなかのもの。近隣のサラリーマンの憩いの場ですが、観光客も隙間をお借りする気持ちで少しだけ様子を除いてみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
旭軒 川端店
092-281-1182
福岡県福岡市博多区上川端町3-3-1 第5秋吉十美ビル 1F
18:00~27:00(餃子完売の際は閉店・第二日曜定休)
予算1,800円