中目黒「晩酌 銀紋」 大衆酒場の魅力とはなにかを考える店

中目黒「晩酌 銀紋」 大衆酒場の魅力とはなにかを考える店

2017年2月17日

洗練されたオシャレな飲食店が立ち並ぶ、いかにも東京らしいきらびやかな街、中目黒。

街情報番組ならば冒頭にはそんな言葉で紹介されるのでしょうけれど、Syupo<シュポ>は酒場めぐりマガジン。若者が集うバルは素通りし、路地裏の赤ちょうちんを覗いてみましょう。

今回ご紹介する酒場は特に”中目黒らしくない”お店。中目黒駅から徒歩10分という立地にあり、周囲には飲食店は少なく高級住宅街の雰囲気が漂う生活道路に、ぽつりと灯る赤ちょうちんです。

店名の「銀紋」は、秋田・湯沢の酒蔵・両関酒造がつくる地元飲用向けの銘柄からきています。店構えの渋さから、年配の大将が長年この地で守ってきた暖簾のように見えますが、実は創業は2015年と驚くほど若い。

白地の黒文字のぱりっとした暖簾。引き戸に手をかけるときに「ここは良さそうだ」と気分が高まります。

厨房に向いたカウンターと、対面にある小上がり。小さなテーブルに小さな座布団が4つ並ぶ小上がりは昭和の建物特有の可愛らしさ。

元は中華屋だった店を改装したそうですが、昔からずっと営業している老舗酒場のような雰囲気に癒やされます。

こんな渋さだと、きっと年配の大将が切り盛りする店だろうと思いませんか。いやいや、ここの店主は秋田出身の女性お二人。まゆぼんさんとあこさんで、ふたりとも酒場が大好きなのだそう。

あこさんのお父さんは両関で酒造りをしていたことから名前を受け継ぎ「銀紋」ということです。

低めのカウンターに背もたれのない丸イス。小さな小上がりに渋い品書き。そして、ビールはサッポロです。酒場好きのお姉さんが注ぐわけですから、ビールの状態もほらこの通り。きめ細かくふっくらとした泡に蓋された、ガス圧ばっちりの黒ラベルで乾杯。

お通しにちょっとした小鉢がひとつ。今日はしらたきとたらこを和えたもの。

テーブルスタンドのメニューはそのものの渋さも素敵ですが、料理の内容も魅力的。大衆酒場を演出しているのではなく、紛れもなくここは古典的な酒場なのです。

日替わりのホワイトボード。300円~400円の価格帯が中心。

自家製ジンジャーサワーが店舗オリジナルの甘辛い系ドリンク。生姜とはちみつから抽出したエキスを入れたもので、風邪のときに飲むと元気になりそう。製氷機の氷ではないのもポイントです。

料理は煮豚から揚げものまでいろいろありますが、人気はこのにらつくね。ボリュームたっぷり。丁寧に生の状態からグリラーで焼いていきます。

ピリ辛のタレで味付けさせていて、これがあと引く美味しさ。ふわっとしていながらも、肉とニラの旨味がぎっちりと詰まっていて、一口食べるごとにお酒が欲しくなります。

両関の銘柄しか揃えていなく、本醸造や純米吟醸など4酒類。店名になった銀紋は、地元で愛される定番酒。いまの季節、上燗にしてちびちび飲み進めればいい気分。甘めの味ですが、古き良き湯沢の酒はこういう酒場にぴったりです。

手作りのコロッケも銀紋の定番料理。握りこぶしサイズで、外はさくっと、中はほくほく。肉屋のコロッケではなく、老舗酒場でつい食べたくなるあの味です。ソースはウスターを気持ち多めにかけたい。

大衆酒場の「こういうの好き」というもので詰まっているお店。それでいて、余計な主張はせずに静かに心地よい。

酒場に浸ることの素晴らしさを再発見するお店。それが銀紋ではないでしょうか。地元で長年飲む 年配のお父さんから、池尻大橋や中目黒で働く若い人まで、客層豊かなのも店の雰囲気をよくしているように感じます。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

晩酌 銀紋
080-5951-4019
東京都目黒区東山1-31-6
18:00~24:00(水定休)
予算2,400円