神戸の街を飲み歩くのも楽しい。震災を乗り越えて今も多くの酒場や角打ちが元気に営業しています。大阪と違い、早い時間から飲めるお店は少ないですが、どんなおしゃれな街にでも怪しく輝る赤ちょうちんはあるもので、ふらりと覗いてみれば想像以上に楽しいことが多々あります。
とくに、住宅街、商業地、そして工業地帯が狭いエリアにマーブル状になっているこの街は、ちょっと歩けば全然違った雰囲気があるのがおもしろい。東京でいえば、銀座から浜川崎が徒歩数分といった感じでしょうか。
神戸駅から少しの場所にある「ヤスダヤ」は、この街の第2次産業御用達の産業酒場です。川崎重工神戸工場へと続く”参道”にあるお店で、営業時間はなんと朝9時からです。
店内奥へと長く続くカウンターには丸いすがずらりと並びます。ファサードの「ハクツル」の文字の通り、メインは灘の大手銘柄・白鶴(一級酒290円)を飲ませるお店で、これにあわせてアサヒスーパードライとキリンラガー、チューハイ類、白波やいいちこが並びます。
瓶ビールは大びん・中ごん・小びんと三種類置いているのが不思議。大びんでも450円と大変庶民的です。
それでは、まずはレモン味のチューハイ。関西によくある樽詰めのものではなく、お店のオリジナル。その中身は…ぜひ飲んでみてのお楽しみ。西日本で貴重な甘くないチューハイに、乾杯。
東京でいえばハイサワー的なポジションの割り材も、あまり多くはないですが流通していまして、ご当地の隠れた割り材を発掘するのは最近のマイブームです。マニアック過ぎて誰もついてこない。※Syupoの読者さんなら好きな人も多いかも。
カウンターに並ぶ大皿料理と、ショーケースに入った小鉢たち。これぞ関西の酒場といった雰囲気です。焼き魚や玉ひもなどが作り置きされていて、食べたいものを指差して、「これちょうだい」といえばレンジ加熱してくれてでてきます。
名物のむし豚(530円)は売り切れ。玉ひも(350円)やホルモン(380円)など安価で高カロリーな品物が並ぶのが産業酒場の特長です。安く美味しくたっぷり食べて、ぐいぐいチューハイ飲んで寝る。夜勤明けのお父さんたちの姿が想像されます。
一番高級な豚のほねつき(630円)はもうほとんど残っていなかったので、ちょこっとだけ盛ってもらいました。ほねつきはファンの多い人気メニューのようで、皆さんしゃぶりついていました。美味しい部位は骨のそばにある。
湯豆腐(280円)は、塩で味を整えたかつお出汁にぷかぷかと浮かんでいるもので、葱と削り節をのせてささっとだしてくれます。こっちのほうでは当たり前のおつまみですが、店の佇まいと合わせてこれを食べていると、ひしひしと旅情を感じてきます。
バンダナが似合う大将と奥様のほっこりとした接客。派手な酒場もいっぱいいくけれど、最近はこういうカウンターがすっかり肌に合うようになりました。え、昔から?
まるで自宅にいるような安心感。気づいたら看板の時間です。工業地帯の店は早く締まるところが多いです。もう何軒か、ご近所の酒場を巡ってみましょうか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
ヤスダヤ
078-671-0493
兵庫県神戸市兵庫区西出町2-17-18
9:00~12:00 16:00~20:30(日定休)
予算1,800円