皆さんの街に「ジャンプ」というお肉屋はありますか。東京・高円寺に本店を持つ精肉店で、杉並や練馬を中心に30店舗近く展開する街のお肉屋さんです。昭和42年から営業している会社なので、まもなく半世紀になる老舗です。
そんな街場のお肉屋さんがこの夏、肉バルに参入。肉屋の直営店なのですから、酒屋がやる立ち飲みの「角打ち」と同様、その商品のプロだからこそできるお値打ちで品質のよい内容が期待できます。
一号店は東京・練馬区の桜台にオープン。西武池袋線の桜台駅周辺は古い飲み屋街が多少ありますが、ほとんどは住宅街という雰囲気。駅前の商店街には「ジャンプ」の小売店もありますが、こちらのお店ではありません。私もジャンプで買い物をしたことがありますが、ブランド肉が安かった覚えがあります。
ジャンプ桜台店からもすぐの場所、お肉屋さん直営とかかれた「桜台バル」。昔ながらの街の洋食屋という店構えです。最近の熟成肉ブームで店数が増えているオシャレ業態とは違う、どこか懐かしさのある雰囲気です。
店内は壁紙、テーブル、カトラリーも明るく清潔感が漂います。まじめに実直な印象。店員さんの接客も、マニュアルでぴしっとしたというよりは、街中の洋食屋さん的な優しさがあり、飲兵衛好み。
お一人様用のテーブル、カウンターもあり、ご近所にお住まいの家族連れや仕事帰りのサラリーマン、ショッピングバッグを持ったマダムなど、早くも住宅街に根付いた人気店という感じの客層で賑わいます。
ワインとステーキが看板に掲げられていますが、ビールや酎ハイも充実。サッポロ黒ラベルは中ジョッキでも390円(すべて税別)と肉バルらしからぬ庶民派価格なのが嬉しい。日常で使うならば、やっぱりこれくらいがよいですもんね。ラムハイがイチオシ、黒ラベルには「乾杯をもっとおいしく。」と書かれているなど、サッポロビール推しなのがわかります。これはビールが期待できますね!
ほら、期待通り。冷蔵庫で冷やされているジョッキに、カウンターのワータップから丁寧に注がれる黒ラベル。泡もきめ細やかです。飲食店で最初に口にふくむのは料理ではなく一杯目の生。だから、最初が美味しいというのはとっても大事です。
それでは乾杯!
ほら、美味しい。
さて、おつまみを見ていきましょう。お通し(300円)がバーニャカウダと来ましたか、野菜不足なので嬉しい。
そうしたら、野菜はお通しに期待するとして、食べたいものを好きに選びますか。名物は肉寿司(たたき)やローストビーフ。ソーセージにハンバーグ、牛レバーのコンフィなど、さすが精肉店直営の内容です。しかも、一回り安めの価格設定なのが素敵。
ブランド肉の赤城牛を一頭買い。いや、精肉店なのですから当たり前かな。普通の飲食店と違い、精肉店が自ら肉料理を販売しているのだから当然といえば当然なのですが、びっくりするほどのラインナップ。どどーっと赤城牛の部位が羅列されています。ステーキが100gで890円からとかなりお値打ち。正直「肉屋がこういうことするのはずるい」って言われないか心配なほど。
お通しのバーニャカウダ。その日の仕入れで内容がかわるそうですが、いろいろ入っていて程よいボリューム。これで300円なのだから、お通しで嫌がる人はいないでしょう。
赤城牛を全方位で推しているメニュー。あれもこれも、みんな食べたくなってしまいます。前菜盛り合わせ6種(890円・ポテトサラダやコールスロー、ミミガーなど)で、バカルディラムハイ(390円)をごくごくと。盛り付けがキレイで、色々食べられてステーキが焼きあがるまでの間として最高の脇役です。
スパークリングワインは390円。フルートグラスいっぱいに入れてくれる気前の良さ。
赤城牛ステーキ二種盛り。トモサンカクとイチボなど、珍しい部位があるのですから色々食べ比べてみたいですもんね。盛り合わせも日替わりとのことですが、単品で頼むよりもお得なので、初めての訪問ではまずはこれからいくというのが良さそう。
ワインバルというだけあってワインの品揃えはしっかり充実。値段も1,980円からとだいぶお値打ち感を意識した内容になっています。シャンパンのテタンジェは当然美味しいのですがそれは置いておいて、この中でしたら、今の季節はマトゥアのソーヴィニヨン・ブラン・マルボロを一本もらって、ちびちびと楽しめたらどれだけ幸せだろうか。予算控えめのときはスペイン コドーニュがつくるヌヴィアナ・シャルドネがいい。
あ、つい飲みたいものをつらつらと書いてしまいました。
こちらが赤ワインのリスト。いろいろ語りたいけれど長くなるのでやめておこう。小売価格と比較しても、肉バルでこの値段でだしているのは良心的だと思います。
いやいや、もっとお財布に優しく、千円台で満足したいんだというときは、これ。がぶ飲みワインは390円。こんなに注いでいいの?入れる量を間違えていない?と、心配になってしまうがぶ飲みワイン。
せっかくなので、赤・白両方もらってみました。スペインのテーブルワインですが、テンプラリーニョの赤はぐいぐい飲みたいときに何の問題もありません。ファミレスでワインなどを飲む「ファミレス飲み」が話題になっていますが、肉屋のはじめた肉ワインバルだって十分安くておいしいものが飲めるのです。
ステーキで飲みたくなったら、こういうお店が身近にあるとよいですね。桜台駅が通勤経路の方は一度途中下車して飲みに行ってみてはいかがでしょう。とんがりすぎていない、だからこそ落ち着く普段使いのお店です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/サッポロビール株式会社)
桜台バル
03-3557-9390
東京都練馬区豊玉上2-19-11
17:00~24:00(無休)
予算2,800円