本日は神保町を飲み歩き。この街には何かとご縁がありまして、父親が昔勤めていた出版社が近く、今は私のかかりつけ医もこのあたりにいるので、月に何度も歩いている場所です。
古本の街というイメージが強いですが、出版社の数も多く、編集者や作家が集う出版の街でもあります。そんな人達がこの界隈の酒場を飲み歩き、それについて書かれた本や雑誌は数えきれない。老舗のビアホールに、憧れのコの字カウンターに、名曲喫茶で洋酒を飲むというのもよい。そして、餃子といえば「スヰートポーヅ」で間違いない。
昭和初期、初代が中国で修行・創業し、その後帰国し、この場所で3世代にわたって当時の味をこの地で提供し続けています。
11坪26席の個人経営の中華としても比較的コンパクトな作りです。店の歴史が長い分、ファンの数も多く、親子二世代で通うような長い付き合いの人もたくさんいらっしゃるという。そういうこともあって、ランチタイムは満席になり、テーブルをご相席でつかっても外に列ができるほど。
料理は餃子と天津包子だけ。昭和7年に、初代が修行した顔ぶれが今に続いています。
3代目の和田智さんがメインの調理を守っています。専用の重い鉄蓋付きの焼台は、ひっきりなしに稼働しています。蒸し器では包子(ぱおず)が出番待ち。
外の明かりにビールとサービスの塩豆。神保町の変わらぬ光景です。土曜日は通しで営業しているので、ランチタイムを外して昼酒というのもあり。
12個の餃子が盛られている中皿(750円)と、お店とともに歴史を歩んできたキリンラガーの組み合わせ。何十年前も、ずっと「スヰートポーヅ」のテーブルでは、”この”餃子と”この”ビールというペアが並んでいたんだと思うと、ぐっときます。神保町に集う人が代々食べてきたこの味を、いまも手軽に楽しめる。老舗酒場はタイムマシンのようです。
神保町・老舗スヰートポーヅの餃子にはラガー、間違いなのない組み合わせに乾杯です。
餃子は、現代で定番となっている肉汁がたっぷりはいる、外はカリッと中はホクホクでジューシーというそれではなく、独特なもの。餃子の皮はてっぺんで両端がくっついていますが、横はあえて開けいるロール状の構造。
にんにくを使っていないあっさりとした味ながら、豚からの肉汁をめいいっぱい吸い込んでさらに蒸し上げられているような杏色の皮は旨味たっぷりで、ビールと最高の相性をつくりだしています。
皮は包むだけ、食感を楽しむものという概念ではない。皮が美味しい、餡も美味しいというのがスヰートポーヅの餃子です。生姜の隠し味が、何個でも箸を進めさせます。ラー油ではなく、七味唐辛子をつかい食べるのが独特ですが、粋に感じます。
一番混み合う時間には置いていない、13時から提供がはじまる天津包子(810円)も、ビールを飲みに来たのならば、ぜひつまみとして食べておくべき。竹の子や椎茸、そして豚肉の餡がしっかり入っています。
小籠包とはまた違う、小さな肉まんとでもいいましょうか。ラー油ではなく練りがらしを置いているのみ特長です。からしをすっとつけて頬張れば、口の中に誰もが好きな味がわっと広がります。すかさず、そこにキリンラガーを。生ビールは置いていなく、瓶ビールだけというのも、とても似合っています。
書店巡りの合間に、仕事終わりの一杯に、餃子とビールの鉄板組み合わせをぜひお楽しみください。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビールマーケティング株式会社)
スヰートポーヅ
03-3295-4084
東京都千代田区神田神保町1-13-2
11:30~15:00 16:30~20:00(土は11:30~20:00・日月定休)
予算1,800円