東京で立ち飲みが好きな方ならば、渋谷の富士屋本店を知らない人は居ないのではないでしょうか。渋谷の街を代表する立ち飲みで、東京でも屈指の人気を誇る有名店です。富士屋はもともとが酒屋さんなので、広義で言えば角打ちになりますが、酒屋のレベルを越えたレベルの高いおつまみをリーズナブルに楽しませてくれるのが富士屋最大の魅力です。
地下の立ち飲みのほか、ワインバー、ダイニングバー、最近では洋食店をはじめ、渋谷で6店舗の飲食店を展開されています。そして一軒、Syupoでも何度か紹介してきましたが、三軒茶屋の釣り堀のあとをリノベーションした不思議な空間に美味しいビストロ料理とワインがたっぷりつまった、それはもうすばらしい立ち飲みビストロを運営されていました。老朽化等の事情により閉店、ファンの多いお店だっただけに、移転先はどこだ、と話題になることも多かったお店ですが、ついにオープン。なんと中央区日本橋に出現。
今回ご紹介する「富士屋本店日本橋浜町」は、そんな三茶の流れをくむ立ち飲みビストロです。店長も変わらず、料理やワインは以前よりもパワーアップして、さらに素晴らしいお店としてオープンしました。
一階がコの字の立ち飲み、雰囲気は三茶時代に近く厨房を眺めながら楽しめます。二階には椅子のあるテーブル関が、そして三階はこれからの季節にぜひ使いたいテラス席という配置。黒塗りの一軒家の建物で、空間に連続性があり、これがとても心地いい。吹き抜けのある空間、一階から二階まで続く大きな窓からは交差点の明かりが都会の夜の楽しさを演出してくれます。
北欧風の内装でまとめられた店内は、ぬくもりがあって、立ち飲みでありながらも落ち着ける空間になっています。
三茶時代からお世話になっていた加藤店長が迎えてくれる形で、今回の取材が実現しました。食べ比べ、飲み比べするべく、4名のサッポロさんと一緒にスタートです。
ワインの富士屋さんですが、いつも私の一杯目は生ビール。富士屋のビールといえば黒ラベル。それでは乾杯!
キレイなグラス、美しい泡、丁度いい冷え具合、ガス圧もばっちり。
抜きぬけの窓を眺めて飲む黒ラベルが美味しい!脚付きグラスがオシャレでお店の雰囲気にぴったり。
それではフードを。まずは前菜の名物、香草ボンバーから。これは三茶時代からの名物料理。フリーバーががつんときますが、甘い味付けと混ぜられている海苔のバランスが絶妙で、箸が止まらなくなる一品。ビールだけでなくシャンパンとの相性も抜群です。
加藤店長はソムリエでして、幅広いジャンルから100種類近くも揃えられています。しかも、酒屋さんだけあって売価設定が「これでいいの?」と驚くほど、飲食店のワインの相場概念を覆すものばかり。まさに「良いワインを普段使いで」です。
立ち飲みで、良いワインを楽しむならば間違いなく富士屋本店。そんなお店の開店初に飲むのだから、ここはシャンパンでスタートを。ノーベル賞授賞式提供シャンパーニュのテタンジェがあるではありませんか!
富士屋本店さん、新店オープンおめでとうございます。乾杯!
瓶内2次発酵後、最低3年間はセラーで熟成したレゼルヴは、透き通るような美しい芳香が広がり、フレッシュながら厚みのある味わいです。お祝いだからということで贅沢しちゃいましたね。
三茶時代から料理は手が込んでいますが、ますます磨き上げられているように思います。シャンパンと合わせるのは、フレッシュトマトジュースと海老のスパイス焼き(450円)。トマトジュースの上に不思議な形のスプーン、海老とあわせて食べれば、海老の旨味とトマトに爽やかさで前菜としての満足感が非常に高い。
渋谷と同じように一枚一枚解説がかかれた品書きが冊子上に綴じられています。ここから選んでいくのがまた楽しい。続いてはマトゥア(MATUA)のリージョナル・ソーヴィニヨン・ブラン・マルボロを。ニュージーランドソーヴィニョン・ブランのパイオニアとして知られています。ハーブのニュアンスとバランスの良い酸味。そして明るくて爽やかなボトルデザインも秀逸です。
あわせるおつまみには、ポテトサラダ(600円)を。富士屋本店はこういうちょっとずつ大衆酒場を感じさせるフードを置いていて、それが身近な印象を出しているように思います。浜町はたっぷりの新玉ねぎとベーコンがのっています。こってりとした味わいながら重たさはなく、ワインとの相性バッチリ。
トレンティーノに本社を構えるメッツァコロナのピノ・グリージョ。ぶどうの解説がわかりやすくまとめられています。イタリアを代表する辛口の品種で、他のピノ・グリージョと比べこれはオーク熟成しているのがポイントとのこと。この解説つきの冊子、本当にわかりやすい。自然と飲みたい方向性にたどり着けるような工夫は流石。
ぶどう栽培農家の協同組合が期限のメッツェコロナ。一軒一軒の農家の協力があって今があるという同社のモットーを表した十字デザインの個性的なラベル。点在する星はひとつひとつが農家を表し、十字はあぜ道を意味しているそうです。
熟した果実と樹木を感じる深い味わい。3,700円で飲めるのは本当に破格。日常的にラフな感じでワインを好むような方でしたら毎日だって通いたくなるはず。
肉を加工したおつまみの総称、シャルキュトリー。前菜感覚で、ワインに合うさまざまなお肉が盛り合わせになった5種盛りは1,800円。鴨や仔牛など、こだわりのハムやリエット、サラミが並びます。
サザエとキノコの肝バター焼き(950円)は、もう香りでうっとり、口に含んで改めてうっとり。広がる磯の香りとバターの染みこんだサザエ、キノコのかむごとに溢れ出る旨味が素晴らしい。これは赤ワインですね!
フランス、ニュージーランド、イタリアと巡ってきましたので、続いてはスペインを楽しみましょう。コドーニュ・グループ(codorniu)のレガリス・クリアンサを。コドーニュはご存知、瓶内二次発酵のシャンパンと同じ方式でつくるカバを最初につくったワインリーです。
レガリス・クリアンサはティンタ・フィナ(テンプラニーリョ)で、アメリカンオーク樽で約1年熟成させたもの。深く凝縮された味わいで余韻が長いのが特長。香りはバニラのよう。
メインディッシュは、洋食の富士屋本店の看板料理、ハンバーグを。熱々でジュージューと音を立ててやってくる鉄鍋に入った俵型のハンバーグ。半熟卵とポテトやズッキーニなどの野菜も一緒に。
見た目はかっちりしていますが中はふっくら。粗挽きな食感で噛むことが楽しくなります。
ナイフを入れるとじゅっと滲みだす肉汁、それが添えられたポテトが吸うことで、鍋の中はもう旨味でいっぱいになります。思わず溢れるみんなの笑顔。やっぱり美味しいものを食べるのが一番の幸せです。
ワインを満喫したあとは、やっぱり戻りたくなるビールです。よくお店を変えたらまた飲んで食べてをしたくなるのは、きっと乾杯のビールで仕切りなおすからではないでしょうか。間に挟むビールは、改めて美味しい。
いかがでしょう、富士屋本店日本橋浜町。いま塩見さんが一番注目しているお店はどこですか?と聞かれることがよくありますが、今は間違いなく「富士屋本店」と答えています。ワイン好きの方も、立ち飲みが好きな方も、そしてハンバーグやビストロ料理をおつまみに飲みたい方は、地下鉄にのってでも目的地としてここにいくべきだと思います。
立ち飲みでコスパ重視のお店が昨今増えています。でも、その元祖はやはり富士屋本店でしょう。
最後に、いま見かける機会が増えているラムをソーダで割った「ラムハイ」で乾杯。強い炭酸とラムの風味、レモンの酸味は食後の一杯にちょうどいい。はぁ、満足満足。
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/株式会社ダイニング富士屋本店・サッポロビール株式会社)
富士屋本店 日本橋浜町
03-6231-1203
東京都中央区日本橋浜町2-24-2
17:00~23:00(土日祝16:00~22:00)
予算3,000円