荻窪で立ち飲みといえばやはりここ「やきや」です。1999年に荻窪駅の北口にある飲み屋街・荻窪東銀座に誕生したお店です。戦後直後の闇市の香りがまだ残るような時代を感じる荻窪東銀座も老朽化と時代の流れには逆らえず再開発が始まり、2011年、やきやも急遽閉店することとなりました。そして移転したのがいまのお店です。
やきやの移転は荻窪でよく飲む私としては驚きのことでしたが、もうあれから5年が経つんですね。さて、南口のすずらん通りから一本入った路地に移ったやきやも昔と変わらず大人気のお店です。
奥に長いカウンター主体のお店で、どんなに満員のように見えてもお客さんがちょっとずつ詰めてくれて、店内はぱんぱんになっても「行けばなんとか入れるお店」です。
譲り合いの精神、酒場好きはみんな仲間、そんな文化がやきやにはあります。杉並区の酒場ってどの街でも飲兵衛同士とても仲がいいので、はじめましての方とも30分も隣で飲んでいれば友だちになっちゃう世界。こういう街が大好きです。
やきやはとにかく安い!安いだけじゃなくてしっかりクオリティが高い。これぞ大衆酒場のあるべき姿です。日本酒は北海道の北の誉、これがコップ一杯で250円。そして人気のいかみみ刺身をはじめ料理のほとんどが170円均一。北海道小樽でつくられる辛口の日本酒に、ここの新鮮で半透明ないかがよく合います。
それでは乾杯!
それにしても、いつも思うのですがやきやのいか料理はどれも新鮮で美味。どうしてこの価格でこのボリュームで提供できるのか不思議で仕方ありません。
早い時間でないといかみみは売り切れていることも多いのでお早めがおすすめ。
冬季限定のいか大根も名物メニュー。こんなに分厚い丸太のような大根ですが芯までしっかり味がしみています。げそが添えられて大根2個も入ってこれまた170円。北の誉との相性もよくて、やはりここにきたら是非注文を。この場合、日本酒は冷ではなく燗酒がいいかもしれませんね。寒い街を、白い息で手を暖めながらやきやに来て、「燗酒といか大根」なんて注文したらカッコイイ。
濃い目にみえますが東北風の味付けで見た目の通りしっかりとした味。いかから出汁がでていることもあり、素晴らしい酒の肴です。
注文してから丁寧に焼台で女将さんが焼き始めるいかなんこつ串。いかを焼くと固くなっちゃうのが普通ですが、このいかなんこつは柔らかい。ちゃんと火が通っているのに噛む力がなくても食べられるほど。噛むとじゅーっと汁がでてきて、それが次のお酒を誘います。
製氷機ではなくちゃんと買ってきた氷を使う荻窪のやきや。製氷機でつくる氷は溶けやすいですが、これはいつまでも溶けない。だからホッピーやウィスキーの水割りに最適です。ビールはアサヒスーパードライ(380円)がありますが、この氷と安心のタカラ焼酎25もあってかホッピー(320円)が人気。ナカがしっかり入っているのもやきやにファンが多いポイント。
ボトルででてくるウィスキー水割りもおすすめ。380円とビール並の価格ですが、氷いりグラスとこのあまり見かけないブラックニッカの水割り瓶がトンと登場して、あとは好きにやっていいというもの。300mlなので、この氷入りなら2杯はとれます。メーカーであらかじめ割られている水割りってどうしてこんなに美味しいのかな。
気づけば日本酒にウィスキーにビールにとすっかりちゃんぽん。それでもお会計ではここの価格帯なら絶対二千円を越えないから本当に安心。
常連さんは年配の方が多く、平均年齢は60歳くらいでしょうか。酒場は年齢や職業を関係なくだれもが同じ立場で”わかちあう”場所。となりの常連さんと酒場話で盛り上がりながらも、ほてった顔を手で冷やしながらお会計。
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
やきや 荻窪店
東京都杉並区荻窪5-29-3
16:00~23:00(日定休)
予算1,200円