日頃から酒場は街を映す鏡だと思っています。その街の歴史、産業、都市構造などあらゆる都市における要素がそこの酒場に凝縮しています。つまり酒場を巡るというのは、街を楽しむのと同じことではないかと。街がこそが酒場の魅力の中心なのではないでしょうか。
杉並区のイメージといえば、芸術家や作家が多く暮らし文化の香りただよう街。古い飲み屋にはたいてい作家の井伏鱒二が通ったとか、洋画家の高橋忠弥の席だとか、もっと古く行けば太宰治の飲み歩いた路地とか、そんな話が出てきます。
そんな杉並区の酒場は、やはり他の街と違ってどこか文化的。みんなちょっぴりオシャレで背筋をピシっと伸ばしてお酒を味わっている姿が多いです。酒場の雰囲気を文章で表す私がこう書くのもへんですが、言葉にできない「杉並らしさ」みたいなのがあるんです。
それを最近できたお店で強く感じるのが荻窪の「煮込みやまる。」。私と同世代の女性店主あっきー氏が開いたお店で、開店は2013年とまだ新たしいながらも、常連さんが多く、今では荻窪の酒場を語る上では外せない存在となっています。
酒場が大好きという店主は全国の酒場を研究して歩き、その過程で得たノウハウを店作りに反映されています。だから、酒場好きには「おっ、凝っているね」と感じさせるポイントが多いです。
お店のテーマはお燗酒とシャリキンを煮込みを肴に楽しむ現代版大衆酒場ということ。うんうん、すごいわかります!こういうお店が荻窪にできるのも、文化の街として必然のようにも思います。
まずはキクマサのぬる燗で乾杯しましょう。乾杯♪
お酒のお燗を銅壺でやるというのがまたいいじゃない。創業50年ですか?ってくらいの風情があります。
煮込みやということで、メインは大鍋料理。牛すじ煮込みは常時あり、寒い時期はこれにプラスして湯豆腐が囲炉裏で煮こまれています。
「まる。」の湯豆腐にお燗酒。これがほっとする瞬間。薬味は好きなものをお選びくださいと木箱で渡されます。
アサリが一緒に煮込まれていて、磯の香りがほんのりする塩味のお汁に浸るお豆腐はしっかり硬くて深みのある味わい。しめじと揚げが食感に変化をあたえて、これだけで日本酒が1合空くのはあたりまえ。
つづいて煮込みを。卵入りの牛すじ煮込みはお味噌味。旨味がたっぷり、味噌と牛の脂の美味しいところがまざりあって、これがお酒の摘みに最高の相性です。
煮込みも薬味がいろいろ選べます。唐辛子はなんと4種類もあり焼一味、ゆず、極辛、まる特製から選べます。ネギは入れ放題。またこの一式の入った箱がこだわっていて素敵。
最近若い人がはじめたお店というと特にもつ焼き屋が多いのですが、焼き物なしで煮込みでいくというのが「こりゃ一本取られた」と思った同業の方も多いと聞きます。看板メニューの煮込み、確かにこれを食べたくて電車で荻窪を目指す価値を感じますもんね。
もつ塩煮込み、肉豆腐などもあり、煮込みならば「まる。」だねというイメージが荻窪では出来上がっている印象。
煮込みにあわせるならばこれ、店主が愛するキンミヤ焼酎をシャリシャリにした”シャリキン”で飲むホッピーです。もちろんジョッキもホッピーも冷えていますので、シャリキンではなく普通の焼酎ナカで三冷ホッピーにすることもできます。
ソトを半分残してナカをおかわりして、あわせて二杯飲みたいので、中途半端ですが半分程度で乾杯。
おつまみは日替わりで、スパゲティサラダや季節のおひたし、豆アジの南蛮漬けなどもあり、煮込みと小鉢数品をあわせるのが一般的。店主お一人でお店を切り盛りされているのでゆっくりとペースを見ながら注文するのが常連さん。
酒場愛といえば、シャリキンホッピーはもちろんですが、やはり外せないのがサッポロラガービール。赤星が好きという酒場好きは多いですが、店主もその一人。キリっと冷えた赤星を一本もらって最後の〆でいただきました。
すると、隣のご夫婦から「赤星って美味しいですよね!」とお声がけいただきまして、そこから赤星トークが盛り上がりました。じゃあ、もう一本飲みましょうか。
酒場の出会いってみんなお酒や酒場について共通点があり初めての方でも会話が弾みます。
「赤星がお好きならば、実はこんなサイトがありまして…」とお隣の方が見せてくださったスマホ画面には”Syupo”。あはは、よく存じております(笑)
お店の雰囲気も店主のしなやかな接客も、そしてそこで飲まれているお客さんも、すべてが杉並らしい、とっても居心地の良い酒場です。
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
煮込みや まる。
03-3398-8708
東京都杉並区荻窪5-29-6
17:00~24:00(月定休)
予算2,200円