日本橋堀留町の『おそば高松』は戦前創業で100年以上の歴史があります。蕎麦はもちろん、何を食べても美味しいと評判の町蕎麦。3代目が守る自家製麺と気の利いた酒肴、そして出汁が効いた名物のカツ丼は、近隣で働く人々の胃袋を支える活力源です。今回は、カツ丼で一杯楽しもうと17時の口開けに暖簾をくぐりました。
オフィス街に残る昭和の蕎麦食堂

かつて呉服問屋で賑わった日本橋堀留町。現在はオフィスビルやマンションが立ち並ぶこのエリアで、路地に温かい明かりを灯しているのが『おそば高松』です。

創業は戦前。百年以上の歴史を持ち、現在は3代目のご主人が暖簾を守っています。老舗といっても堅苦しさはなく、店頭には写真入りのメニューが貼られ、誰でも気軽に立ち寄れる「街の食堂」といった雰囲気です。

店内はテーブル席のみ。清掃が行き届いており、厨房の上には「食品衛生優良施設」のプレートが飾られています。

店内にBGMはありません。奥にあるテレビに映る相撲中継の音声と、厨房から聞こえる調理の音が重なり、まるで長年通った地元の食堂にきたような気分です。
日替わり献立に惹かれつつ、カツ丼で飲む

席に着き、まずはビールを注文しました。アサヒスーパードライの中瓶(600円ほど)です。

お通しには「わけぎと油揚げのぬた」が当時用。酢味噌の酸味が心地よく、これだけでビールがグンと進んじゃう。
日替わりの献立にも注目です。「生まぐろ」「焼き空豆」といった季節の食材に加え、「キプロス産焼チーズ」「パワーほうれん草のサラダ」といったユニークな洋風メニューまで並んでいます。

宴会をしている常連さんと女将さんの会話によると、どうやら、マグロは大間産の本マグロらしい。確かに壁には産地の札もそっと貼られています。蕎麦屋さんでそんな上等なものを!?と思わず厨房のほうに振り向いてしまいました。
これらを肴にするのも魅力的ですが、今日の目的は違います。店主が「カツ丼にも力を入れています」と話すカツ丼を「つまみ」として味わうのです。
そもそも、カツ丼の発祥は、洋食店でもとんかつ店でもなく、大正時代に蕎麦屋さんで生まれたメニュー。蕎麦屋さんの技を感じられる料理なんです。
丼ごとつまみになる、蕎麦屋の技術が詰まった一杯
ビールを半分ほど残した状態で、いよいよ真打ち登場。今回はお蕎麦は頼まず、「カツ丼」(1,200円)をお願いしました。
厨房からパチパチと油が弾ける音が聞こえ、揚げたての期待が高まります。

運ばれてきたカツ丼は、丼いっぱいに広がる堂々としたボリューム。蕎麦屋らしくグリーンピースではなく絹さやが添えられ、玉ねぎではなく長ネギ(白ネギ)が使われているのが特徴です。

カツの「アタマ(具)」、いわゆるカツ綴じを頼んで飲むスタイルもありますが、割り下が染みたご飯も含めて味わうのが、カツ丼飲みの醍醐味。今日は取材でよく歩いたのでしっかり食べたいんです。

長ネギのシャキッとした食感と甘みが、甘辛い割り下と絶妙にマッチ。卵のとじ加減も絶妙で、衣に出汁が染み込みつつもサクサク感が残る仕上がりです。

濃厚なカツを頬張り、追いかけるようにビールを合わせる。

箸でも切れる程度のやわらかさ。厚すぎず薄すぎず、ちょうどいい!

セットのお吸い物にも驚かされます。味噌汁ではなく、上品なすまし汁。中には蕎麦前の定番「板わさ」にも使えるような立派な蒲鉾が入っています。カツ丼の濃厚な味を、だしの風味がさっぱりとリセットしてくれます。
百年続く店が「日常」の日本橋

名店ひしめく旧日本橋区。『おそば高松』も他所なら遠方から客を呼ぶ有名店になっていたはずです。ですが、100年続く店も珍しくないこの街では、あくまで会社員のための「食堂」。それが逆に贅沢です。舌の肥えたベテラン社員や地元の旦那衆が通い続ける事実こそが、その実力を物語っています。

店舗詳細


| 店名 | おそば高松 |
| 住所 | 東京都中央区日本橋堀留町1丁目4−16 |
| 営業時間 | 11時00分~14時00分 17時00分~20時30分 土日祝定休 |
| 創業 | 1910年代 ※創業時期は正確な記録がないとのこと |
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