浅草・たぬき通りに店を構える『常寿司』は、昭和11年頃に雷門近くで営まれていた屋台をルーツに持つ老舗です。杉の一枚板を贅沢に使った船底天井の下、三代目が握る正統派の江戸前寿司は、なんと一人前1,500円からと大変良心的。敷居の高さは皆無。下町浅草らしい、理想的な「町のお寿司屋さん」です。
浅草の喧騒を離れ、たぬき通りで江戸の粋に触れる

雷門周辺や仲見世通りの賑わいは、世界的な観光地・浅草の顔。ですが、私が好きな場所は、その少し先にある生活の匂いがする浅草です。

浅草公会堂の裏手、12匹の願掛け狸が鎮座する「たぬき通り」。ここに、派手な看板こそありませんが、静かな存在感を放つ『常寿司』があります。

暖簾をくぐると、まず目を奪われるのが天井です。船の底を逆さまにしたような形状の「船底天井」は、なんと杉の一枚板。これだけ立派なものは、今では再現不可能でしょう。

店の歴史は古く、昭和11年に初代が雷門通り付近で屋台を引いたのが始まり。戦後の昭和37年に現在の場所に店を構えたそうです。店名は、初代の修行先の兄弟子が、奥様(おツネさん)の名前を店名にして繁盛したことにあやかったものだとか。

現在は、生粋の浅草っ子・三代目がつけ場に立ち、一見客であっても温かく迎え入れてくれます。最近は外国人観光客も増えていますが、カウンターに集う皆さんはご近所の常連さんが多く、落ち着いた雰囲気です。
創業以来の仕事を味わう。小肌、穴子、そして酒

まずはビールで喉を潤します。銘柄はキリンラガーの大瓶。お通しとして出される小鉢をつつきながら、寿司種のケースを眺める時間は至福のひとときです。

良心的な価格設定も魅力のひとつ。特上握りでも2,300円と、都心の相場を考えれば驚くほどリーズナブルです。それでいて、仕事は一切の手抜かりなし。

酢飯は砂糖を控えめにし、塩と酢を効かせた「白シャリ」。お酒との相性も抜群。

常連さんがこぞって注文するのが煮穴子。創業以来継ぎ足されてきた「ツメ」を塗り、提供されます。箸で持ち上げるのがやっとというほど柔らかく煮込まれており、口に入れればフワリとほどける。甘すぎず、辛すぎず、深みのあるツメの味が秀逸。

蒸し海老も丁寧な仕事が感じられる質のよいもの。プリッとしていて噛むほどに旨味が溢れます。

イカのコリコリとした食感や、マグロの質の良さにも、三代目の目利きの確かさを感じずにはいられません。

まな板で大きな本マグロをサクに切り分けつつ提供してくれる。

しみじみと美味しい握りに、日本酒(定番は白鹿)もすいすいと進んでしまいます。
芸事の街・浅草の胃袋を支え続ける

浅草公会堂や浅草演芸ホールに近い立地から、歌舞伎役者や落語家など、芸事に関わる人々にも代々親しまれてきた店。浅草のまつりや芸能文化の「インフラ」として、長年黒子のように街を支えてきた誇りすら感じる心地よい空間でした。
観光地のまん真ん中にありながら、観光客向けの店にはない、地に足のついた「地元の寿司屋」の空気がここにはあります。
回転寿司の手軽さも良いですが、カウンター越しに職人と向き合い、丁寧な仕事が施された寿司をつまむ。そんな大人の贅沢が、ここなら肩肘張らずにかないます。きっと、浅草という街がもっと好きになりますよ!
店舗詳細

| 店名 | 常寿司(つねずし) |
| 住所 | 東京都台東区浅草1丁目15−7 |
| 営業時間 | 11時30分~14時30分 17時00分~20時30分 月定休 |
| 創業 | 戦前(1936年頃)浅草雷門通りで屋台として創業 戦後、現在の場所に店舗を構える |
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