幡ヶ谷『魚貞』大衆割烹のお手本。40余年続く店の特長は本当の美味しさ

幡ヶ谷『魚貞』大衆割烹のお手本。40余年続く店の特長は本当の美味しさ

2022年8月29日

居酒屋でも、料理屋でもない、「大衆割烹」という様式。修行をした板前さんが、目の前で旬の魚介類を切り盛りしてくれる。なんとも贅沢な飲食店ですが、値段は文字通り「大衆価格」です。幡ヶ谷にある『魚貞』は、まさしく王道の大衆割烹です。

スポンサーリンク

幡ヶ谷を素通りしてはいけない?

東京都渋谷区幡ヶ谷。地名は知っていても、街を歩いたことはないという人は多いのではないでしょうか。私が、数年前までそうでした。

新宿から京王新線で2駅目ですが、甲州街道に添って多摩と新宿を結ぶ京王線(本線)は各駅停車も含めすべて素通りしてしまいます。新宿に近いのにどこかローカルな雰囲気漂う幡ヶ谷へ、一度飲みに行ってみませんか。

幡ヶ谷を代表する酒場といえば、まずは『魚貞』でしょう。1981年の創業で、現在は二代目夫婦が切り盛りしている昔ながらの家族経営の店です。魚が美味しいと評判で、近隣の黒帯飲兵衛が集まる酒場ですが、近年はグルメドラマ番組のロケ地として有名になり、若いお客さんも増えました。

地下深くにある幡ヶ谷駅から地上に出ると、頭上には高速道路。圧迫感のある景色から逃げるように路地へ入ると、『魚貞』の暖簾がみえてきます。パリッとした暖簾に、清酒通い箱、毎日書き換わるホワイトボードがかけられた店構えは、まさに王道の「大衆割烹」です。

いらっしゃい!店の奥から大将や板前さんの声が聞こえ、ぐんぐんと店内へ。奥へ長く、立派なカウンターが一直線に伸びています。カウンターの対面はテーブル席で、二階は座敷というつくりです。

磨かれて輝く厨房のステンレス機材。まるで寿司屋かのような、河岸の卸の名がつらなる立派な千社額。刺身を注文する前から、魚の鮮度がいいのでは?と、期待が高まります。仕入れはもちろん豊洲市場とのこと。

品書き

お酒

樽生ビールはアサヒです。スーパードライグラス:500円、中:700円、大:950円。昔ながらの量の多いサイズなので割高にみえてそんなことはありません。

瓶ビールはサッポロで、ヱビス中瓶:700円、サッポロラガー大瓶:750円。

日本酒は定番が白鶴 上撰:500円、サワー類は500円~。

地酒

豊盃純米:800円、杉勇純米:700円、群馬泉山廃本醸造:550円など。

焼酎

富乃宝山佐藤など:550円~。

ホワイトボード

刺身は、得盛刺し五点盛り:1,800円、貝三点盛り:1,300円、しめ鯖:750円、カンパチ刺し:950円など。から付き生牡蠣:400円、地はまぐり::950円、鱧と夏野菜天麩羅:1,100円、めひかり唐揚げ:600円、天然ほや酢:650円、磯つぶ貝煮:650円など。

内容は季節・仕入れ次第でかわります。

定番では、マグロ刺し:1,200円、焼き鳥:150円~、盛り合わせ天麩羅:850円、上寿司:1,500円など。

何を頼んでも美味しいという、圧倒的な安心感

サッポロラガービール大瓶(750円)

老舗のカウンターに似合うビールがある。赤星ことサッポロラガーは、そう言い切れるビールです。

ビヤタンを満たして思わずうっとり。それでは乾杯!

お通し

初夏の枝豆の季節に伺いましたので、お通しは味の濃い枝豆です。

小肌酢(750円)

近年稀にみる質の高い小肌酢に出会いました。シンコの季節ではないので大きく育っていますが、脂がよくのり、それにあわせた絶妙な〆具合で、非常に豊かな味になっています。

うっとりするほど深く妙味な味わい。これは日本酒が欲しくなります。

白鶴(500円)

白鶴の上撰をぬる燗で。お燗で美味しさ引き立つお酒です。

石鯛かぶと焼(700円)

洒落た大皿に、はじかみ、大根おろしをつけた石鯛の兜焼き。時間をかけてじっくりと焼いてくれたもの。煮魚や焼き魚など、手間と技が必要な魚こそ、こうしたお店で味わいたいですね。

厚焼き玉子(350円)

注文するとすぐにでてくる、予め用意されている卵焼きです。すぐに出てくるからと侮るなかれ。関東風の甘い卵焼きで、ふわふわでまるでプリンのよう。コクがあり日本酒との相性もぴったり。これに冷酒をあわせれば、もうほかに何もいらない…なんて言ってしまいそうです。

ひねらない、カッコつけない、正統派の酒の肴でもてなす魚貞のスタイルは、いま、若い世代にも受け入れられているようです。老若男女、都心でお仕事されている酒場好きの方はぜひ一度暖簾をくぐっていただきたい酒場です。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名魚貞
住所東京都渋谷区幡ヶ谷2-8-13
営業時間11:30~13:30 17:00~23:30(日定休)
開業年1981年