敦賀「まごころ」新幹線で変わる駅前、不変の酒場。へしこ刺しを肴に

敦賀「まごころ」新幹線で変わる駅前、不変の酒場。へしこ刺しを肴に

2021年10月17日

へしこ刺身をつまみに福井のお酒を一口。暮れゆく港町の情緒も肴に心地よいひとときに浸る。ここは敦賀で40年続く店「居酒屋まごころ」。10席ほどのカウンターで、大将を中心とした地元の常連さんたちの会話にそっと混ぜてもらいました。

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交通の要衝・敦賀。変化する駅と変わらない酒場。

福井県嶺南地方を代表する街・敦賀。北陸と近畿をつなぐ結束点にあり、日本海側を西に小浜・舞鶴・福知山方面が分岐します。国際航路の寄港地だった歴史もあり、街は交通の要衝として栄えてきました。

敦賀を代表する名勝地、気比松原。三保の松原(静岡県)・虹の松原(佐賀県)と並ぶ日本三大松原の一つに数えられています。

かつて東京発・欧州行き国際列車「欧亜国際連絡列車」の鉄道連絡船がこの敦賀港からでていたそうです。その当時の人々はどんな想いで旅立ったのでしょうか。

そんな敦賀に、久しぶりに東京からの直通列車が復活します。東京から延伸を続けてきた北陸新幹線が、2023年度に開業予定。交通の要衝の進化は続きます。

新幹線受け入れに向けて開発が進む敦賀駅周辺ですが、そこには変わることのない古い飲み屋も存在します。駅から徒歩1分。ぼんやりと提灯が灯る店「まごころ」です。

お店からホームまでも5分くらい。ぎりぎりまで飲んでいられる、旅行者にとっても好立地な1軒。地元の人たちが一旦帰宅してラフな格好になってから繰り出してきたような雰囲気で、皆さん静かに飲み始めています。

1980年頃の創業で、現在のご主人は2代目。素朴ながら気遣いある接客と、軽快な若狭弁が嬉しいです。

お店のリズムに合わせて、ビールから

18時から18時30分頃、準備ができたら開店です。今日は少しフライング気味で受け入れてくれました。気さくな大将に軽く挨拶したあと、「とりあえず飲んでいてね!」ということで、ビールをいただきました。

それではキリンラガーの中瓶(550円)で乾杯!

お通し

お通しは日替わり。カウンターだけのレトロな酒場は、はじめてだと緊張するものですが、こうしたちょっとしたおつまみが少しずつほぐしてくれるように思います。

品書き

お酒のメニュー

樽生ビールはアサヒスーパードライ(中605円)。瓶ではアサヒスーパードライキリンラガーサッポロ黒ラベルがあり、いずれも中瓶605円です。

多くの人が飲んでいるのは、やはり日本酒だそうで、越前町でつくるますほ貝(495円)、美浜町の早瀬浦(605円)など。

福井県敦賀市でもホッピー発見、ワンウェイタイプです(495円)。酎ハイは樽詰め(495円)。常連さんはいいちこを中心にボトルキープで飲まれています。

料理の品書き

料理はすべてホワイトボードに記載。はたはた焼き(440円)、牛すじ味噌煮(550円)、鯖塩焼き(506円)、ソフトにしん焼き(396円)など。

飾らない美味しさに、旅先の小さな幸せを感じる

へしこ刺し(660円)

なにから頼もうか悩むところ。ここはやはり若狭湾の鯖にしようか。ビアタン片手に品書きを眺めていると、あまりみかけない料理を発見。「へしこ」は鯖などを塩漬けにし、それをさらにぬか・麹・醤油・酒などに漬け込んだ若狭の郷土料理ですが、ここの店には「へしこ刺し」とあります。

さっそく頼んでみると、店の人気メニューのようで「やはり頼みましたね」という表情で大将が返答してくれました。

それほど強く漬かっていない柔らかな鯖がきゅうりや大根を挟んで登場。お酒好きの心をくすぐるクセのある香りがたまりません。ごま油はお好みで。

ますほ貝というご当地銘柄のお酒を常温でいただきました。「どう、旨い酒でしょう?」と大将。

こういう組み合わせをしみじみ幸せに感じる大人になれて、本当に良かったと思います。深い旨味とお酒の甘さ、そのバランスのよさは、やはり地元の酒と料理同士の無理のない組み合わせだからでしょう。

おでん(220円)

福井は出汁が美味しい。その理由は北前船で江戸時代から昆布が運ばれてきた地域であることや、鯖やトビウオなどでとる出汁の文化があったことなど、理由はいろいろと考えられます。

まごころの看板料理はおでんです。透き通った出汁は見た目以上に濃厚で、それをすった「うすあげ」はあとひく美味しさ。これはたまらないと、きっと誰もがお酒を追加するすることになるはずです。

三宅彦右衛門酒造「早瀬浦」本醸造(605円)

次に選んだお酒は、福井県美浜町の酒蔵・三宅彦右衛門酒造がつくる早瀬浦本醸造。酒蔵の前に広がる若狭湾早瀬浦が名前になっています。

湯煎でつけたお燗酒のふんわりと漂う香り。飲みごたえがあるのに飽きのこない、素朴ながらいいお酒です。冬の敦賀、外に雪が積もっていたらますます情緒があって美味しく感じるのでしょう。

店は裏口もあり、そこからならば駅まで1分少々です。新幹線開業後は好立地もあって混雑するはず。いまのうちに、北陸路を酒場めぐりしつつ、静かに楽しまれてみてはいかがですか。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名まごころ
住所福井県敦賀市白銀町1-20
営業時間営業時間
18:00~22:30
定休日
不定休
開業年1980年