「日本海庄や」や「大庄水産」などを展開する老舗居酒屋チェーンの大庄が、同社初のマグロ専門店を新橋にオープン。店名は「オートロキッチン」。グループに老舗マグロ卸を持つ同社ならではの、仕入れ力を活かした店です。本マグロの希少部位を揃えた本格派ながら、オシャレで楽しい雰囲気が特長です。
目次
激動の時代、老舗企業が強みを活かして考案
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大庄を代表する暖簾「庄や」や「やるき茶屋」といえば、昔からあるどっしりと構えたチェーン居酒屋という印象ではないでしょうか。ベテランの会社員グループがネクタイを緩めて「ガハハ」と笑っているような、ザ・居酒屋のイメージ。そんな庄やの株式会社大庄はいま、ニューノーマルにあわせて大変革を続けています。
取り組みのひとつが、2021年10月19日にオープンの「魚屋のマグロ食堂 OH!TORO KITCHEN(以下オートロキッチン)」です。
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全国に約700店を展開する同社はその規模にあわせ、物流ベースの構築や自社配送など、かなりの部分を内製化しています。
グループには1936年に創業した老舗マグロ仲卸「米川水産」もあり、これまで庄やのお刺身など魚介類を支えてきました。トレーサビリティを重視する同社ならではのグループ一貫体制でしたが、社内にあるこの仕組みに新たな強みを見出したのが、今回ご紹介するマグロの専門店です。
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一号店は新橋。この街は旧築地市場が近い繁華街ということで、昔からマグロを看板料理にしたお店が多く、同店の誕生もある意味、新橋らしいと言えます。
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1本のマグロから1%未満しか取れない超希少部位を看板料理にした業態なので、チェーン店の大庄ながら、大規模な多店舗展開は難しいのではないかと思います。
内観
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2フロアあり席数は115席。明るくカジュアルな和モダンの雰囲気。入ってすぐに調理場を向いたL字のカウンター席があるほか、基本的には4名テーブルを主体とした配置です。
オープンキッチンで調理風景を魅せる劇場型。料理には藁焼きもあり、注文が入ると専用の調理台には藁に火柱がたちます。のちほど注文します。
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二階席は開放的。落ち着いて少人数でわいわいと楽しめる雰囲気です。ファミレス感ではなく、働く世代が出社日の帰りにちょっとした非日常を味わう、そんな空間に思えます。
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おしぼりは高級なアロマ付き。
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注文はQRコードを読み取る方式で行います。
品書き
飲み物のメニュー
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さて、気になる新コンセプトのお店。さっそく品書きをみていきましょう。
10種類のレモンサワー(580円)をはじめ、個性派酎ハイ(580円)、ハイボール類を多く揃えたスタイルです。ビールはアサヒスーパードライで、生ビール(600円)のほか、キンキンに冷やしたエクストラコールド(730円)や中瓶(730円)も選べます。
料理のメニュー
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お店の推しは店名を冠した「本マグロのオートロキッチン盛り」(2,980円)。本マグロの中トロ藁焼き(1,480円)もオススメだそう。
ほかには、マグロのハート刺身(480円)やマグロのメンチカツ(380円)、マグロ胃袋ホイコーロー(750円)など、とにかくマグロづくし。山盛りポテトフライ(500円)などを除き、9割以上がマグロ料理です。
体験!マグロづくし。「オー!トロ~」って感動しちゃう?
生ビールがオススメ
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「品書きには書かれていませんが、生ビールの提供クオリティにこだわっているのでぜひ飲んでみて!」と店長。ドリ場(お酒を用意するスペース)を覗かせていただきました。
グラスは氷冷で。そこに、ドイツから調達したヘッドを通してスーパードライが注がれます。
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まずは普通にビールを注いでいきますが――
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ビールの液が7割になると、グラス内に溜まった注いだ際に発生した粗い泡を入れ替えるように、ヘッドからクリーミーな泡を流し込みます。
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とろっとろの絹のような泡でグラスのトップが満たされたら、軽く氷水にグラス側面を浸して完成。
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ビールは日常にある飲み物。缶ビールでも、普通の生ビールでも、中身は同じですが、こだわればこだわるだけ美味しくなるから不思議です。
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泡とビールの間に、モヤのような泡が漂っています。これが美味しい樽生ビールの証のひとつ。それでは乾杯!
本マグロの中トロ藁焼き(1,480円)
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カツオの藁焼きには目がない私ですが、中トロのお味やいかに!
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スライスにんにくかわさび、味付けは醤油もよいですが、オススメはトリュフ塩とのこと。
スモーキーな香りが食欲・飲み欲をくすぐりますが、なにより炙ることで引き締まった強い旨味と、マグロの脂の甘さがより引き出されていて、これはなかなかのもの。
合わせるお酒はスモーキー ラ・フランス(800円)
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お店の方のおすすめ、藁焼きにはスモーキーなものを、ということで、ラフランスのフロートがのったハイボール。ウイスキーはブナハーブン 12年です。
日替わりメニューから、数量限定の「ダテマグロ」を選ぼう・希少部位3点盛り(1,800円)
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日替わりメニューは今日のオススメだけでなく、愛媛・宇和島のブランドマグロを使用した『だてまぐろ®』を用意しています。
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だてまぐろは養殖の本マグロながら、宇和海で30か月以上養殖された重量45kg以上などの規定に達した脂がのったマグロのこと。メディアでも紹介されることが多い注目のブランドマグロを味わえます!と大庄の皆さん。グループ全体で消費できるので、希少部位だけを新橋のオートロキッチンに集めることができるそうです。
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希少部位3点盛り。カマトロ、頭肉、頬肉です。貴重なまぐろの貴重な部位、仕入れルートを活かした特別なお刺身です。
ハーモニカ漬け焼き(1,200円)
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今日のだてまぐろの料理”で焼き物のおすすめ”はハーモニカ漬け焼きと板前さん。マグロのヒレの部位、ハーモニカを照り焼き風に焼き上げたもの。
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フォークやスプーンですき身をかきだします。魚はこういう骨の周りが美味しいですよね!
あわせるお酒はジンチリ(580円)
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個性派のレモンサワーから、ジンチリをあわせました。これは唐辛子を漬け込んだジンでつくった「金魚ハイ」のような一杯。
ほかにも個性派いろいろ、マグロの純愛(580円)
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脂がのった部位が多い同店のメニューに合わせる、お店おすすめのレモンサワー「マグロの純愛」。ハーブを漬け込んだ爽やかな飲み心地です。
魔法の・・・(580円)
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商品名が「魔法の・・・」という不思議なレモンサワーです。紫色のサワーにレモンを注ぐと――
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あら不思議、じわじわとピンク色に変わっていく「ゆめかわいい」系。
エモいのもよいですが、大本命はマグロ部位食べ比べ「本マグロのオートロキッチン盛り」(2,980円)
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なかなかこれだけ飲食店でマグロのブロックを見ることはありません。チェーン店と侮れない、ベテランの板前さんたちが軽快に部位をわけていました。「媛(ひめ)まぐろ」という本マグロで、近畿大学生まれ、宇和島育ちの完全養殖魚。安定して品質が高いと、取材時に魚のプロの皆さんから聞きました。
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盛り付けるとこの通り。専用の寿司げた(木製のプレート)には部位の解説があり、その上に取り分けた刺身が揃えられています。1きれが小さいのではなく、テーブルを半分以上埋めるほど、この寿司げたが巨大なのです。
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飾り付けは可愛く、身の食べ比べをしっかり楽しめる盛り付け。仲良しと食べ比べればマグロ博士気分かも?
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中トロや赤身は、刷毛をつかって専用のブレンドした醤油を塗ります。
トロあぶり寿司(420円)
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こんな美しいマグロがあるのですから、〆はちょっとだけ握り寿司も食べたい!そんなニーズに答えてくれたのが、こちら。
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トロあぶり寿司です。1貫だけの注文も歓迎ということで、そこはお言葉に甘えて注文。口の中の体温によって脂が溶けていくような感覚です。
ウニトロキャビアは2021年10月中は1貫サービス
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「こちらはサービスです」と運ばれてたのは、生本マグロのトロにウニとキャビアをトッピングした「ウニトロキャビア」。10月中はディナータイムで1名1貫もれなくサービスとのこと。
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LINE登録すると、マグロテールステーキなどがあたるガチャガチャが引けるとのこと。エンタメ要素、詰め込んでいますね!
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マグロ専門店は従来からジャンルとして存在していましたが、それを今風にポップなカタチにしたのが、オートロキッチンです。SNS映えする料理やお酒が並ぶものの、味や食材も大庄として妥協なし。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/株式会社大庄)
店名 | 魚屋のマグロ食堂 オートロキッチン 新橋店(OH!TORO KITCHEN) |
住所 | 東京都港区新橋3-5-13大興ビル1階・2階 |
営業時間 | 営業時間 11:30~14:00、17:00~23:00 【金・祝前】11:30~14:00、17:00~翌2:00 【土・祝】17:00~23:00 日曜営業 定休日 無休 |
開業年 | 2021年10月19日 |