富山「親爺」創業60余年、キトキト魚や昆布締め、おでんを肴に満寿泉

富山「親爺」創業60余年、キトキト魚や昆布締め、おでんを肴に満寿泉

2021年10月15日

1952年創業の「親爺」は魚介類と豊富な地酒でもてなしてくれる、富山の名酒場のひとつ。2代目と3代目が中心となって家族で切り盛りされています。駅にも近く、出張や観光で訪ねた際の一杯におすすめしたい一軒です。

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標高差4,000mがつくる美味しさ、それを味わう大衆酒場

海抜1,000mの富山湾と、標高3,000mの立山連峰。この猛然たる自然に囲まれた街が富山です。標高差4,000mは豊かな水と風土を育て、暮らす人々とともにこの地に魅力的な食文化を生み出してきました。

水の流れの中で酒が生まれ、神通川(じんずうがわ)などを経由して富山湾に注いだ水は、豊かな漁場を育みます。この「水」という一本の流れを当たり前のものとして楽しめるのが、富山市内の酒場だと私は思っています。

東京から北陸新幹線で2時間20分。路面電車を幹としたコンパクトシティで注目が集まる富山に到着です。街の中心街は市内電車で数分の西町や大手モール周辺にありますが、駅前にも旅行や出張者も利用しやすい飲食店街が広がっています。

そんな富山駅前で創業70年を向かえる屈指の老舗飲み屋が「親爺」です。他店より一足早い16時オープンというのも、出張等で時間に自由がある人にはありがたいポイント。早い時間から常連さんや親爺を目当てに富山を訪れる旅行者で賑わいます。

こういうパリっとした店構えが好きな方、Syupoの読者の皆さまには多いのでは。もちろん、私も大好物の店構えです。

カウンターは12席。二階も客間ですが、1~2人飲みならば間違いなくカウンターが特等席でしょう。二代目と三代目が次々と作り上げていく料理を間近に楽しむことができるからです。

店の中央にはおでん鍋が鎮座。定番の具材に加え、かに面地ダコなども入ります。

生樽はサッポロ黒ラベル

ビールはサッポロ生ビール黒ラベル(生中550円)。長年扱ってきているそうです。提供品質が非常に高いピカピカの一杯が注がれます。お通しは女将さんが盛ってくれるおひたしです。

それでは乾杯!

品書き

飲み物メニュー

瓶(中瓶)ではサッポロの黒ラベルと赤星(サッポロラガー)のほか、アサヒスーパードライキリン一番搾りも選べます。サワー系(600円)のベースはサッポロの樽詰氷彩サワー。焼酎はからり芋(400円)など。

親爺の飲み物の主役は間違いなく日本酒でしょう。定番酒は五百万石でつくる立山・本醸造(立山酒造)。満寿泉とともに、400円とこの手の大衆割烹的な雰囲気の店としては大変リーズナブルな価格設定です。品書きにないお酒も多数あり、相談するといろいろ用意してくれます。

黒板メニュー

平目すずきのどぐろ白エビバイ貝。日本海側の都市らしさあふれる品書きです。がんどとは、富山の言葉で、出世魚ブリのフクラギとブリの間のこと。

手元のメニュー

実に魅力的な内容です。刺身盛り合わせは2,000円から。焼き魚は小矢部川(おやべがわ)のや、げんげ干物はちめ(メバルのこと)、カレイミギス(ニギスとも呼ぶ)など。たら汁(800円)も惹かれます。

白エビ唐揚げ(750円)、バイ貝煮付け(700円)など、一品料理も要チェック。

おでんのメニュー

厚揚げ(200円)、すりみ(400円)、ちくわ(100円)などのおでん。気になる「やわらか」(300円)というおでん種は、やわらかいかまぼこのような練もの。

お酒を進ませる土地の味

3代目が花板のポジション。刺身を相談したところ、昆布締めという提案をいただきました。

昆布締め盛り合わせ(1,000円程度~)

サス、平目、スズキ。富山のさかなをつかった、丁寧な仕事を感じさせる昆布締め。

サスはカジキマグロの富山での呼び名です。冷蔵技術がない江戸時代の頃から、北前船で運ばれてきた昆布を使い昆布締めにして保存し、食べられてきたそうです。富山の伝統料理のひとつ。

全国的に食べられている昆布締めですが、発祥の地は富山と言われています。平目の昆布締めは旨味がより引き出されていて驚くほど濃厚な美味しさです。

よしのもと純米酒(450円)

地魚をつかった郷土料理には、地酒をあわせるのが素直に美味しい!ということで、 富山市内にある造り酒屋・吉乃友酒造がつくる看板銘柄「よしのとも純」をいただきます。

辛口でキレがあり、ふくよかな米の旨味がしっかり主張もする美味しいお酒です。昆布締めと相性がいいことは言うまでもありません。

立山本醸造(400円)

美味しい肴に引っ張られるように、お酒のピッチはいつもより気持ち早めかもしれません。続いて、お馴染みの「立山」を。

黒作り(500円)

おつまみはイカの黒作り(500円)。これも富山を代表する料理のひとつです。イカスミのコクの強さからくる主張の強い味は赤作り(通常の塩辛)とは一線を画すもの。

間違いなくお酒の肴ですが、「ごはんと一緒に食べても案外お酒を邪魔しないのよ」と女将さんが一口サイズの白米をだしてくれました。

満寿泉(400円)

満寿泉 白ラベル 辛口。富山市の酒蔵、桝田酒造店がつくる地元で人気の食中酒です。飲み飽きのこない、いつまででも魚があれば飲んでいられるような、そんなお酒です。お燗酒でいただきました。

焼き豆腐(250円)

おでんは気軽に一個からどうぞ、とのことで焼き豆腐をお願いしました。とろろ昆布で旨味が増し、燗酒の満寿泉に負けない美味しさです。

駅近く、16時開店と使い勝手がいいだけでなく、富山の酒と肴の食文化をより身近に感じられる場所。「親爺」は正統派の大衆酒場です。

旅先の一杯にぜひ!念の為、予約されることをオススメします。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名大衆酒場 親爺
住所富山県富山市桜町2-1-17
営業時間16:00~22:30(日祝定休)
開業年1952年