東京のもつ焼きを語る上で外せない存在、立石の「宇ち多゛」。独特なルール、オーダー方法、マナーがあり、かつ連日行列していることから、酒場好きでも二の足を踏んでいる方は多いのではないでしょうか。Syupoでは、筆者視点でラフに楽しむ利用スタイルをご紹介したいと思います。
目次
唯一無二、立石の空気を味わうのはお早めに
都営浅草線から直通する京成押上線で、浅草から10分少々。下町浅草とはまた違った雰囲気の、昭和の映画のワンシーンのような街の表情に、初めて降りた人はみんな驚くはずです。
駅南口の階段正面からどーんと伸びるレトロなアーケード「立石仲見世」が、タイムトンネルのように人を迷い込ませる。こういう町並みが好きです。
現在、京成線の連続立体交差化工事と並行して”災害に強い街づくり”の再開発が4ブロックで進行中で、数年すると駅からの景色は一変しそうです。立石仲見世(立石駅南口西地区市街地)の場所も今後の計画エリアに含まています。
いわゆる昭和っぽさよりもさらにレトロな木造のアーケードが続く立石仲見世。惣菜屋さんをはじめ、立ち食い寿司、芋ようかん、喫茶店など懐かしい風情のお店が建ち並んでいます。宇ち多゛もここにあります。内田さんのお店だから「宇ち多゛」。濁点を加えた独特な店名表記です。
店の前には、鍋の前に丸椅子を並べ、煮込みやもつ焼きを頬張る人々の姿が。
ついつい吸い寄せられてしまいますが、宇ち多゛は入り口と出口が別れており、こちらは出口側。裏手に伸びる列と店内の誘導に従って流れていくと、30分で満足して開放される…というスムーズな流れが構築されており、それをお客さんもお店の皆さんも一緒になって動かしています。
宇ち多゛は列んでいても待つ時間は長くない
正面は出口。並行しているアーケードの西側にいけば、列ぶ列が見えてきます。列は膨らまず、並びながらの待ち合わせはせず、静かに順番を待ちます。京成電車を降り、列に並んだところから宇ち多゛遊びははじまっています。
ここで、簡単に入店までの流れを整理。
・入り口は裏から。
・近づいたら暖簾の内側(ドアとの隙間)に入り待つ。
・利用は最大2名まで。待ち合わせは列ぶ前に済ませておく。
・酔っている人お断り
みんなでつくる、スムーズな流れの宇ち多゛の世界
いよいよ順番になったら、指示された場所へ着席します。常連さんは好みの席がありますが、筆者はどの席でも見える景色が違うので楽しめています。
・入店時、荷物は前に抱えて持ち、他の人、食器等に接触しないようにする。
・写真は自分の注文した料理のみ可能
さて、居酒屋ですから、最初に飲み物を聞かれます。ビールはキリンラガー(大瓶600円と小瓶400円)、有名な焼酎「ウメ」(250円)は宝焼酎ベースに梅風味のシロップを目の前で垂らしてもらいます。同様にぶどうシロップでつくる「ブドウ」もあります。
電気ブラン、大関(各300円)等もありますが、多くの人は瓶ビールと梅割りで完結します。なお、度数が高い梅割り、ぶどう割りは、合計で原則3杯までと決められています。
注文は1~2皿ごとに
チェーン居酒屋感覚で大声で「すいません」と呼ぶ人はいません。宇ち多゛に限らず、老舗居酒屋では空気を読んだ注文を心がけたいですね!
お酒に続いて料理の注文を。生(ボイル)、串焼き、煮込み、お新香の4種類(いずれも1皿250円)。串は1皿2本単位、生は一皿2本で1本ずつ(タン生を除く)選べます。皿数で勘定カウントするので、回転寿司のように食べ終えたら重ねていきます。
席によってはテーブルの専有スペースがA4サイズほどしかありませんので、頼みすぎると置けなくなります。混んでいても注文後スムーズにでてきますから、少しずつ頼むようにします。焼き立てが美味しいですしね!
ハツ生、アブラ生(1本ずつ2本単位 1皿250円)
ハツ生とアブラ生。生は通常は醤油味ですが、「ハツ生お酢」のように、注文時にお酢と付け加えると追加でお酢がかかります。ガツンとくる豚モツのボイルは、お酢もよくあいます。
タン生(250円)
宇ち多゛の生で最もインパクトがあるのがタン生でしょう。とにかく生命力を感じる脂と強い旨味があります。お酢をかけたほうがすっきりして私は好み。これで250円、やはり宇ち多゛のタン生は唯一無二の味です。
梅割り(250円)
甲類にぽちょんと甘いウメシロップを垂らす。ブレンドされたシロップはここだけの味。甘くて飲み心地がよいのですが、お店を出てからしばらくして酔いが響いてきますので、ご用心。飲んだ杯数はお会計時に聞かれますのでお忘れなく。
ぶどう割り(250円)
ウメにするかブドウにするかは、そのときの気分次第。エキスの違いなので、2杯目はブドウ、3杯目はウメに戻る、なんてこともできます。私はだいたいこのパターン。
もつ焼き(2本1皿250円)
串はその日の好みで。
・部位はシロ、ハツ、ナンコツ、レバ、ガツ、アブラ、カシラ、ツル
・味付は塩、タレ、素焼き、味噌(煮込みの鍋にくぐらせる)
・焼き加減は、若焼き、よく焼きの希望可能(普通の場合は焼き加減は言わない)
シロタレよく焼きで!のように注文します。
カシラやアブラのタレ
見た目は脂が多くきつく感じるかもしませんが、これがみずみずしくて、意外なほどぺろりと食べられます。余韻を流すように焼酎のウメをあわせれば、これがなかなかイイものです。
ナンコツ塩
宇ち多゛のタレはコク深さ、モツとのバランスという点で非常に秀逸に思いますが、ナンコツ等は塩もおすすめです。鮮度のいい豚モツの美味しさを噛み締めたい!
煮込みは希望の部位を伝えることができ、お新香も紅生姜増量などカスタマイズが可能ですが、まずは、生ともつ焼き、スタンダードなお新香などで気軽に宇ち多゛の味を楽しまれてみることをおすすめします。
酒場は癒やし、酒場は仲間と語らう場所、そんなイメージと真逆の空間です。正面の暖簾をくぐり仲見世にでた瞬間の開放感は清々しく、それもまた宇ち多゛の魅力に感じるものです。
口開けは希少部位を食べに来る常連さんも多く列が伸びる傾向があります。おすすめは2巡目以降(夕方は入りやすい)です。また、土曜日は非常に混雑し、品切れで早仕舞いもあるので平日をおすすめします。ラフな服装でどうぞ。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 宇ち多゛ |
住所 | 東京都葛飾区立石1-18-8 仲見世商店街 |
営業時間 | 14:00~19:00(土は10:00~14:00・日祝定休) |
開業年 | 1946年 |