台湾出身の創業者が戦後のバラックで開いた大衆中華「新珍味(しんちんみ)」。ニンニクを効かせた「清蒸鶏(むしどり)」をつまみにビールで乾杯しよう!
歴史だけでなく、いま、素晴らしい
近年、池袋北口は中国人がつくる中国人向けの飲食店が増加し、池袋チャイナタウンと呼ばれるまでになりました。しかし、そうなる以前から、この街の歴史、そして世界の歴史に名前が刻まれる大衆中華が存在しています。
池袋西一番街の派手なネオンの隙間にある「新珍味」です。東京都中央区で1952年に店を開き、池袋に移り1954年に現在の場所で店を始めたのだそう。
創業者はその後、台湾の歴史に大きく関わった人物で、新珍味には台湾人観光客の姿も多く見られました。
池袋で70年近く続いてきたお店は、どの繁華街にもある食事メインの大衆中華(町中華)のような雰囲気ですが、ここは空腹を満たす場所だけではなく、お酒好きにとっても聖地です。
なんたって、お昼から終電の時間まで、ずっとお酒が飲める雰囲気です。実際、2階は日中から乾杯するグループが多く、時間にとらわれない人々が集う池袋らしい光景が広がっています。夜は1階カウンターについては言わずもがな。
飲めるムードの大衆中華が好きな人にはたまらない場所です。私も赤星一本、乾杯。
飲む人向けにすら思える品書き
A4両面にびっしりと情報がつまった品書きが、高揚感を高めます。
樽生ビールはサッポロ黒ラベル(450円・取材時は税別表記)、瓶ビールは赤星ことサッポロラガー(中びん500円)。
サワー系は、根強いファンがいる氷彩サワー(プレーン350円)や抹茶ハイ、ホッピーなど。老酒は永昌源、甲類焼酎はキンミヤです。ボトルワイン(チリ/Santa Rita・ヒーローズ・2000円)もあり、お酒のラインナップは完全に居酒屋レベル。
名物は店の看板にも書かれている大滷麵(特製ターロー麺・900円)。大滷麵(打滷麵)は筆者も台湾で食べたことがある定番料理のひとつ。ただ、こちらでは「北京大滷麵」と書かれています。
肉片炒飯(肉盛りチャーハン・900円)も人気で、これでもかと山盛りの豚肉長ネギ炒めがトッピングされてきます。
のんべえさんには清蒸鶏と半ターロー
清蒸鶏(むしどり・550円)
新珍味で飲むときは、絶対食べてみてほしい、イチオシの逸品「清蒸鶏」。注文が多い料理のため注文前からある程度準備されており、ビールとほぼ同時に運ばれてきます。
シンプルな料理のようで、下味に個性があり、そのままでも実に美味。鶏もも肉を蒸したものですが、蒸し鶏というと身がぱさつくイメージがあるもののそうしたことはなく、噛むほどに肉汁が染み出してきます。
そのままでもビールとの相性がとてもいい。でも、この特製ニンニクタレをつけると、箸もグラスも止まらなくなります。
鶏とにんにくが好きという方ならば、やみつきになること間違いなし。
半ターロー麺(650円)
お腹に余裕があればずんぐりとした鍋貼(焼ギョーザ・6個480円)もおすすめ。そして〆はぜひターロー麺を。
酸味と辛味が調和したあんかけラーメン。こちらもしっかりニンニクが効いています。
これで半ターローなのですが、ボリュームは結構あります。たぶん、半分なのは麺のことではないかと思います。
スープすべてが餡。豚肉、白菜、きくらげなどの具を溶き卵と餡でまとめています。これは巨大な液体おつまみなんです。
瓶ビールを満足するまでおかわり(※お酒は適量で。)したら、丼ぶりの底から麺をサルベージ。もちもちとした丸麺は、そんなお酒飲みのペースで食べていてもあまり伸びていません。
ひと仕事終えたような気分で、大満足。お店の人も常連さんも朗らかで、とっても庶民的な入りやすいお店。野球中継のときは、皆さんテレビに夢中になっています。
池袋の〆に、本格的な大衆中華はいかがですか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 新珍味 |
住所 | 東京都豊島区西池袋1-23-4 |
営業時間 | 営業時間 11:30~23:30 日曜営業 定休日 無休 |
開業年 | 1952年 |
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