壁を埋め尽くす膨大な品書きに驚きを隠せません。料理は安くしめ鯖はなんと100円です。
鶴瀬の忠八は、1985年(昭和60年)創業の大衆酒場です。地域密着の家族経営で、その温かい雰囲気から地元の人に長く親しまれてきました。
東武東上線沿線のベッドタウン・鶴瀬。乗り換え駅の川越駅や朝霞台駅周辺よりは飲食店は少ないものの、わざわざ電車に乗って訪れたい店があります。
駅前の大衆酒場「忠八」は、一部の人には心を掴んで離さないであろう、衝撃的な一軒です。
しめさばやあんきもは100円(以下税込)、焼鳥は1本80円と驚くほど安いのですが、本質はそこでなく、店内の圧倒的な情報の渦なのです。
家族経営の一体感と、常連さんの雰囲気が魅力
静まり返った鶴瀬駅。通勤時間帯以外は静かな駅前です。駅前の忠八を除けば…。
以前はにぎやかな声が店の外まで聞こえてきた、界隈きっての人気酒場・忠八。営業時間は平日及び土曜日は15時から、日曜祝日は14時からと口開けはかなり早く、昼飲みなどの様々なシーンで利用可能です。
スキンヘッドのご主人を中心とした家族経営の店で、温かく迎えてくれます。
厨房や入り口の暖簾、そして空調を除けば、そのほとんどが品書きに覆われている店内。酒場で品書きを眺めて飲むのが好きな筆者も、これは目がまわります。実に楽しい!
サワー類やボトル焼酎が充実
お酒を頼みましょうか。樽生ビールはサントリーのザ・プレミアム・モルツ(480円)、瓶ビールはアサヒスーパードライの大瓶(650円)を揃えていますが、今日は一杯目からサワー気分。
目黒区の老舗割材メーカー・博水社のハイサワーを使用したレモンサワー(400円)をもらって、それでは乾杯。
サワー類は400円から、忠八オリジナルハイボール(370円)は、梅エキスを使用したお店オリジナルのもので、これが個性的でおもしろい。
常連さんが多いので、ボトル売りの本格焼酎やキンミヤ、タカラ焼酎などが充実しています。
情報の渦に飲み込まれる
さあ、困りました。頼みたいものが見つからない酒場は困ってしまいますが、あれもこれも気になるものが360度、パノラマに広がっているのも大変です。食べられる胃袋はひとつだけ。
ここはサービスのしめ鯖(100円)にするか、定番のもつ煮込み(350円)を選ぶか。中華系の炒めものから刺身までとにかく品数が多いのです。
ほとんどの料理が300円前後と、その安さにも驚かされます。
こうした価格の安さもあってか20代のお客さんの姿がありますが、意外なほど黒帯のんべえさんの姿も多く、老若男女、幅広く親しまれていることがよくわかります。
皆さんはどれを選びますか。刺身は3点盛りで380円、コロッケは150円、なかなか焼鳥までたどり着かなさそうな、一品料理の数々です。正直、品書きを見ているだけで何杯でもお酒が進んでしまいそうです。
※お酒は適量で。酒場では料理もお酒も適度に注文を。
お通し、席料はありません。ですから、そのかわりにすぐ出る小皿をひとつ、ふたつはお願いしておきたいものです。
ラビオリ(300円)。
魚介と焼鳥がお店のオシの料理のようですが、ボトルを飲んでいる常連さんの手元に届けられたラビオリが気になって仕方がありません。大衆酒場で稀に見かけるラビオリは、不思議と惹きつけられます。
忠八オリジナルハイボール(370円)。
色付きの焼酎ハイボール、キイロやアカ、ボールなどと呼ばれている城東エリアでよく見かける個性派ハイボールを想像していただければ、おわかりいただけるでしょうか。シロップというよりは、梅酒のような味がします。
おまかせにぎり5貫は注文必須
スーパーの惣菜コーナーよりも安いようなお刺身は大人気ですが、それと並び人気はお寿司です。ヤリイカ握りや鯖ずし握りなんて、5貫で250円です。
人気はこのおまかせにぎり5貫盛り。これで驚きの420円です。実に美味しそうな厚い中トロをはじめ、サーモン、ホタテ、ホッキ、赤海老が立派な寿司下駄に載って登場します。
あれもこれも、和洋折衷なんでもおつまみにして飲みたいというわがままに応えてくれるのが、大衆酒場の醍醐味。安い、早くから飲める、品書き選び放題という魅力に溢れた「忠八」を訪ねてみませんか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 忠八 |
住所 | 埼玉県富士見市鶴馬2605-1 |
営業時間 | 営業時間 14:00~23:00 日曜営業 定休日 水曜・第3火曜日 |
開業年 | 1985年 |