押上『千成亭』この道半世紀のご主人が振るう中華鍋は昭和の美味しさ

押上『千成亭』この道半世紀のご主人が振るう中華鍋は昭和の美味しさ

2020年8月24日

かつて東武の資材置き場だった場所も、いまやすっかり東京スカイツリーを中心とした複合商業施設としてうまれかわりました。東京を代表する観光地になった「業平橋・押上」ですが、細い路地に目を向けてみれば、まだまだ残る昭和のムード。

酒場や食堂など、古き良き昭和の店が立ち並ぶこちらのブロックのほうが、人々のぬくもりがあって好みです。

押上で半世紀、中華一筋50余年のご主人が一人で営む「千成亭」はすばらしい昭和中華です。

見上げればスカイツリー。そういえば、まだ登ったことがありません。そろそろ行こうかな。

新小岩の千成本店で修行をしたのち、押上に店を出して50年。50年前といえば、都営地下鉄浅草線と京成線が直通を開始した頃。押上が交通の要衝になった時期に出店されたそうです。

現在はお一人で切り盛りされているご主人。お店は広く、カウンター、テーブル、グループ用の席まであって奥に長いです。品数も非常に豊富です。それでも、ベテランの技で、中華鍋から次々と料理が生み出されていきます。

夜はほとんど飲み屋です。そう話す常連さん。たしかに、皆さん飲んでいらっしゃる。そしてこの烏龍ハイ(420円)は、まるで麦茶ハイのような薄い色合いになるまで甲類が入っています。乾杯。

サービスのもやし小皿をつまみつつ、すぐでるおつまみとして常連さんにオススメいただいた「やっこ」(300円)。中華屋さんで、毎週通っている常連さんのおすすめが中華ではなく、あえてやっこというところに期待ができます。

あふれるほどの薬味がのってボリューム満点。なるほど、たしかにこれはオススメですね。

餃子(通常は6個360円)は、もちろん自家製。皮はやや厚めで脂でしっとりしていますが、具だくさんで意外とあっさり。派手さはないスタンダードな餃子ですが、むしろこういう味が最近は外食で減ってきているように思います。

続いて酎ハイ。これまたメタメタ濃い。炭酸ガスがぬけているのかと思うほどパンチがないのですが、焼酎のエネルギーは喉元をすぎても感じるほど。氷屋さんの氷を使っていたり、こだわりもあって、濃いだけでなく美味しいです。

こちらも常連さんのおすすめ、オムレツ(700円)。そして、またしても中華屋さんなのにノン中華なのです。

トマトはプチではありません。中華料理の大きな平皿からはみ出すほど巨大なオムレツです。野菜だけでも結構コストかかるでしょうに…。ゆで卵がオムレツの下から覗いています。ずっしり重たいです。

これで濃い酎ハイが飲めるということに、無邪気に喜びたくなる気持ちもあります。

みじん切りの玉ねぎや豚バラなどが入り、ケチャップ味がなくてもお酒を誘う美味しさです。

五目あんかけそばは別の常連さんのイチオシ。餡でビールや酎ハイを進ませ、最後に麺を食べれば一日を終了するのにちょうどよいのだとか。

どうですか、この美しいチャーハンをみてください。八角形のお皿にまるく仕上げたチャーハン。具が大きいわけでも、黄金色をしているわけでも、具に個性があるわけでもありません。これぞ、昭和の美味しいチャーハン。

特製のチャーシューと同じサイズに切られたナルトに、仕事を感じませんか。ややしっとり系で、味はノンベエ好み。濃いウーロンハイとあわせて丁度いい!

あ、ビールはビンで大びん(670円)がキリンラガーとサッポロ黒ラベルの2種類。めずらしくビールなしの中華飲みでしたが、酎ハイのエネルギーに誘われ、しっかりほろ酔いになりました。

全部一人で食べたわけではありませんよ。

昭和中華で飲むのが好きな方には、ぜひ行ってほしいお店です。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

千成亭
03-3625-0268
東京都墨田区押上1-37-8
11:30~14:00・18:00~23:00(日祝定休)
予算1,500円