東京・千代田区にある蕎麦の名店「かんだやぶそば」で、20年近く修行をされた店主さんが1984年に開いたやぶそば暖簾分けの一軒。胡麻のつゆにくぐらせる胡麻汁そばが名物ですが、私のオススメは芝海老が入った天抜きをつまみに楽しむ「ひこ孫」です。
正午は行列をつくる店

『吾妻橋やぶそば』は、当初、アサヒビール本社の近くで営業していましたが、10年ほど前に吾妻橋から隅田川をひとつくだった駒形橋に移転。新店舗になっても全国から蕎麦通が訪れ、昼食の混雑時は行列ができています。

営業時間は日中のみ。長年、御夫婦で切り盛りしてきた家族経営の蕎麦店ですから、仕込みの時間なども考えると夜は難しいのだろうと推測できます。

店は明るく現代風。それでも、机や椅子は蕎麦屋らしいサイズ感で、おしゃれに振り切っていません。
浅草駅から徒歩10分ほどという好立地。対岸には「並木の藪」がありますが、どちらも熱心なファンがいて、食通風のお客さんでいつも静かに賑わっています。

藪の名が入った立派なこね鉢が飾られています。
酒と肴の品揃えをみれば昼飲み歓迎とわかる

昼しか営業していない『吾妻橋やぶそば』ですが、お酒の品揃えが豊富で、「蕎麦前もどうぞ」というスタンスが伝わってきます。
酒瓶がたくさん入った冷蔵庫が気になるものの、吾妻橋といえばやはりアサヒスーパードライからはじめたくなります。それでは乾杯。

少量ながら濃厚で、1グラム単位で口に含んで延々と飲んでいたくなるようなそば味噌。

喉が潤い昼飲みの気持ちを高めたところで、いよいよ日本酒を。お酒は東京の老舗蕎麦店の王道「菊正宗」をはじめ、「諏訪泉」と「神亀酒造ひこ孫」も取り扱っています。
ひこ孫があるのは珍しい!袴つきの白磁徳利で供されるのがまたいいではありませんか。徳島の山田錦を55%まで精米、酵母は協会9号。そんなスペックは気にせず、きゅっと一口。これが口の中で出汁の余韻とあわさると、それはもう惚れ惚れするほど美味しいです。

あわせるおつまみは、天抜きを。天抜きとは天ぷらそばから麺を抜いたもの。つまり、温かいそばのつゆに天ぷらを浸したものです。
この天抜きは、提供する容器のタイプは違うものの、かんだやぶそばで食べるものに味は近い。衣の付け方は天抜き用の手法があるのでしょう。つゆをすっても、だらりと広がらず、食感も楽しいです。

種は芝海老です。香り豊かで適度な弾力のある食感もたまりません。
ほかにもわさび漬けが自家製だったり鳥わさの用意もあるなど、蕎麦前好きにはたまらない顔ぶれが揃っています。
おかめそばで更に飲むか、もりそばで〆るか

蕎麦そのものをもらって飲んでいると、あたたかい蕎麦だと伸びてしまうし、冷たい蕎麦は蕎麦同士がくっついてしまう。本当に美味しい蕎麦は、蕎麦そのものと冷酒、つゆとお燗酒だってあうのですから、本来は蕎麦でも飲みたいのですが、難しいです。
それでも、やっぱり飲みたい!というときは、具材が多いおかめそばが良いですね。
吾妻橋やぶそばでは、りぼんにした湯葉にかまぼこや三つ葉、そしてなんと松茸まで入っています。今回はよりおつまみになるよう、おかめを綴じてもらいました。

こちらはもりそば。北海道産などの国内の名産地から取り寄せた蕎麦で、手打ちの二八です。

香り高い蕎麦で、そのまま食べても日本酒に負けない味があります。みずみずしく喉越しが心地よい。これを藪系らしい、黒くてほぼ醤油のようにみえる辛汁にちょんとつけて手繰れば、目が覚めるような美味しさ。汁はほかのやぶと比較すると、甘さが強いように感じます。これは絶品。
丁寧ながら親しみを感じる接客も嬉しいポイントです。
店舗詳細
品書き

- ビール大瓶:900円
- 菊正宗 上撰:800円
- 諏訪泉 特別純米:1,000円
- ひこ孫 純米吟醸:1,200円
- そば焼酎:700円
- 天抜き:1,400円
- もりそば:900円~
- 胡麻汁そば:1,000円
- 鴨汁そば:1,900円
- おかめそば:1,400円
- 天ぷらそば:1,900円
店名 | 吾妻橋 やぶそば |
住所 | 東京都墨田区吾妻橋1-11-2 |
営業時間 | 水・木・金・土・日 11:30 – 15:00 L.O. 14:30 定休日:月・火 蕎麦が売り切れ次第終了 |
創業 | 1984年 |