小諸「丁子庵」 江戸時代から続くの蕎麦店で、地の岩魚と浅間嶽。

小諸「丁子庵」 江戸時代から続くの蕎麦店で、地の岩魚と浅間嶽。

小諸藩の城下町として、また北関東と信濃を結ぶ北国(ほっこく)街道の宿場町として栄えた歴史を持つ長野県・小諸。

古くから蕎麦の里として知られ、小諸の中心市街地には創業1世紀をこえるような老舗蕎麦店がいくつものれんを掲げています。東京在住の方には、「小諸」は蕎麦屋の名前としてもおなじみです。

小諸駅から徒歩7分ほどの場所、旧小諸宿の入り口、いまの本町にある丁子庵(ちょうじあん)は、伝統的な小諸の蕎麦が楽しめるとともに、豊富な地物のおつまみが揃う店。小諸に唯一残る造り酒屋・大塚酒造の「浅間嶽」を片手にお昼からちびりと飲みたい人にぴったりの一軒です。

 

小諸の玄関口、しなの鉄道・JR小諸駅。北陸新幹線が開業する以前は関東と長野・北陸を結ぶ幹線だったJR信越本線の主要駅のひとつでした。新幹線は小諸を経由しないため、いまはローカル列車のみがやってきます。東京からのアクセスは、軽井沢駅で北陸新幹線からしなの鉄道(旧信越本線)へ乗り換えることになります。

 

小諸駅は、小諸城址の目の前。お城と「大手」や「本町」と地名がつく旧北国街道沿い商業地に接しています。全国的に駅は江戸時代の街の中心からやや離れていることが多いですが、小諸はまん真ん中です。徒歩数分で諸宿本陣主屋や小諸城大手門などを観れるので、ちょっとした時間で散策されてみては。

 

こういう町並み、好きだなぁ。蕎麦店が多いですが、居酒屋やスナックもあり、次回は夜の小諸をハシゴ酒してみたいです。

 

丁子庵(ちょうじあん)もそんな中心街にある一軒。創業はなんと1808年(文化5年)という、200年以上続く老舗です。

 

1885年(明治18年)に建てられた内土蔵造りの建物で営業しています。店内に一歩入れば、総ケヤキ造りのどっしりとした佇まいに圧倒されるとともに、じっくりここで飲みたいという気持ちにさせられます。

 

悩むことなくビールから。樽生のサッポロヱビス(684円)をもらって、では乾杯。

ビールについてくる蕎麦味噌を軽くつまみつつ、さてさて、メニューをみてみましょうか。

 

日本酒は小諸の「浅間嶽」(378円)、岩魚の骨酒なんていうのもあります。信濃のワイン「マンズワイン」など土地のお酒が揃っているのが良いですね。営業時間は夜19時までと早めに閉まるのですが、それでもこの品揃え、お昼酒歓迎のお店です。

おつまみは葉わさび(324円)、野沢菜(432円)、紅茶鴨炭火焼(486円)と滋味あふれる郷土の味が勢揃いしています。

 

辛味噌だいこんを載せたきのこおろし(540円)。これがなかなかどうして、しみじみ美味しい一品でした。

 

近隣でとれる様々なきのこを軽く出汁でおひたしにしたもので、しんなりとしたきのこから感じる深い味わいがお酒を誘います。

 

霊山・浅間山の古名をつかった日本酒「浅間嶽」。JR小諸駅すぐの場所にある酒蔵で、丁子庵からも目と鼻の先。県産の好適米と浅間山の伏流水でつくるそうで、バランスが良く飲み飽きない美味しさです。普通酒は泡あり酵母を使用としているとのこと。

 

小諸で楽しみにしていた今日の主役、岩魚(756円)。敷地内の生簀を泳いでいた魚をさっと掬い、それを踊りぐしにして焼いたもの。クシュクシュとした身の食感と、上品な白身魚の香り、主張はおとなしくともじんわり感じる脂の美味しさ。千曲川水系は岩魚釣りで人気と聞きますが、私は釣るより食べるほうで。同じ山の水で仕込む日本酒とあわせて。

 

高峰高原で自家栽培をしているという蕎麦。ここにきて蕎麦前だけで終わるはずもなく、信州そば(864円)を注文。

 

かすかに若葉色をした白い蕎麦は、コシがつよく、心地よいのどごしです。ほんのり甘く蕎麦の香りが余韻に残ります。

宿場町、街道沿いにある江戸時代から続く店で、地酒と地のもので楽しむお昼酒。いまはあっという間に長野と東京を日帰り往復できる時代ですが、往時の旅の姿に思いを馳せて宿場町を尋ねるのもまたよいものです。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材時期/2020年2月以前)

 

丁子庵
0267-23-0820
長野県小諸市本町2-1-3
11:00~18:30(冬季水定休・他無休)
予算2,000円