仙台「菊水」 陸前の海幸・山幸に舌鼓。親方のもてなしもお酒を引き立てます。

仙台「菊水」 陸前の海幸・山幸に舌鼓。親方のもてなしもお酒を引き立てます。

ここは一番町。仙台を代表する商業街で、昼夜を問わず多くの人が行き来します。商店街を除けば百貨店やオフィスビルなど大きな施設が目立つ一番町ですが、よくみると至るところに細い路地があり、そこは飲み屋街になっています。仙台の路地といえば文化横丁が有名。そして、こちら一番町の小路も侮れません。

今日訪ねるお店は、東一市場で創業28年になる酒場、「菊水」。岩手県盛岡市にも「菊水」という酒場がありますが、あちらは仙台の親方のお母さんが営むお店です。

 

賑わいのあるアーケード商店街や大手百貨店のキラキラした世界も好きですが、こういう路地をみつけると思わず吸い込まれてしまいます。道幅は2mちょっと、昭和の建物がまるで長屋のようにつながっています。

 

渋い佇まい。まだ日没前だというのに、店内からは賑やかな呑兵衛さんたちの声が聞こえてきて、暖簾を潜る前から「いい店ね」と確信します。

 

カウンター越しに親方が調理する光景を眺められる特等席。二階は座敷があり、上も今日は宴会が入っているようです。近隣のビジネスマンだけでなく、東北各地から「菊水」の味を求め、今日もカウンターにファンが集っています。

 

料理は盛岡のお店同様にやきとり(もつ焼き)をメインにしています。

 

そして、菊水はやきとり(もつ焼き)以外も非常に魅力的。こちらがメインといっても過言ではなく、陸前の海産物や山、里の食材が集まり、有名郷土料理店にも引けを取らない”土地のうまいもん”づくしが楽しめます。

 

樽生ビールは、キリンのハートランド。ほかにスタウトの用意もあります。

 

この瞬間が好き。心の中では「ワーワー!」となっていますが、平静を装って、乾杯。

 

キリンビールがいま強く推しているクラフトビールのサーバー「タップマルシェ」も導入されており、日替わりで様々な銘柄が登場します。(1杯600円)

 

お通しの小鉢から期待が高まります。アワビとウニとは贅沢です。

 

炭火でじっくり焼き上げるもつ焼き(ナンコツ・100円)香ばしく肉汁たっぷり。丁寧に仕上げ、ボリュームがあるのに手頃な価格です。

 

日本酒の品揃えも「菊水」の魅力です。親方のおすすめが次々とでてきますので、ニュアンスをつたえてあとはおまかせで。

 

兵庫県産山田錦使用、純米吟醸「美酒の設計」は、秋田県由利本荘市の「雪の茅舎」のお酒。フルーティーでさわやかな後味が心地よいです。

 

いいお酒を飲むと、いい魚が食べたくなる。「菊水」のお刺身は期待を裏切らないのだと常連さん。この日は、のどぐろを中心に、おまけとしてさんま、しめさばという盛り合わせです。鮮度の良さは言うまでもなく、ぷっりっぷりです。

 

しめさばの締め具合は非常に浅く、脂がのっていることもあり歯ごたえ十分。かむほどに脂がとけて口の中を幸せにします。

 

北日本を代表する高級魚、のどぐろ。甘さと深いコクが日本酒を進ませます。

 

もつ焼き、刺身ときて、まだまだ菊水の看板料理は終わりません。会津の馬肉、ミンクの炙り刺し、そして生ラムも名物です。

 

生ラムの炭火焼き。脂控えめ、旨味は濃厚。主張の強い日本酒とあわせ、ちびりと楽しみます。

お刺身があるお店で、まさかラムの炭火焼きが食べられるとは思いませんよね。ここは、あれもこれも、どれも本格的な料理を同じ店に居ながら楽しめる素敵な玉手箱。

 

渓流釣りが趣味の親方は、ご自分で釣り上げた川魚を燻製にし、それをお店で食べさせてくれます。まだまだフレッシュな状態で、燻製は風味をつけているようなもの。この一品だけでも仙台に来たら「菊水」と思わせてくれる美味しさがあります。いつもあるものではないので、あったらラッキー。

 

路地裏の暗がりにぼんやり浮かぶ菊水の暖簾。カウンターの酒場でひとり、ふたりで美味しいものを食べたくなったら、仙台ならば菊水は間違いのない選択でしょう。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビール株式会社)

 

菊水
022-213-7859
宮城県仙台市青葉区一番町4-7-7 東一市場
17:30~24:00(日定休)
予算3,500円