八柱「ひさご」 お母さんのお店は今日も大人気。飲み屋の魅力は”ひと”にあり。

八柱「ひさご」 お母さんのお店は今日も大人気。飲み屋の魅力は”ひと”にあり。

東京圏のベッドタウンには、駅周辺は全国チェーンの有名看板以外は何もなさそうであっても、まれに特異点のように素晴らしい酒場が存在します。今日ご紹介する「ひさご」はまさに、この考えを肯定してくれるような赤ちょうちんです。

女将さんを中心に、ベテランのお姉さんたちで切り盛りするお店。それもあって、やや敷居を感じるような大衆酒場ながら、女性の一人客の姿も多いです。地元ののんべえさんには馴染みの店として愛用されているのが伝わってきます。老若男女、開店間もない17時過ぎから地元に暮らすご隠居さんや家族連れでいっぱいになりました。

 

八柱(やばしら)は、千葉県松戸市の町。JR武蔵野線と新京成線が交差する乗換駅で、JRの駅名は新八柱ですが、新京成の八柱駅とは隣り合っています。乗り換えで利用されたことがある方も多いのではないでしょうか。

 

ピンク色の電車に乗って訪れた八柱駅。目指す「ひさご」は駅出口から線路沿いにわずかの場所です。

 

電車の音がBGM。典型的な酒場の雰囲気です。店の外まで笑い声が聞こえてくるので酒場好きならば素通りはできないはず。

 

明るくとっても元気、そしてお客さんへの気遣いいっぱいの元気な女将さん(右)。刺身、揚げ物などをマルチタスクで次々仕上げていきながらお客さんとの会話も途切れません。

 

厨房を囲むように配置されたL字カウンターは、”みんなのお母さん”的な女将さんの料理を楽しむ人でいっぱいです。

「武蔵野線の開業の頃より急激にベッドタウン化が進んだ町で、そこに暮らす人も街の歴史とともに年齢を重ねています。歳をとると、こういう酒場がいいんですよ」と話すのはお隣さん。ご近所の方がほとんどで、ちょっとした井戸端会議の場所にもなっているようです。

 

ベテランの皆さんの勢いに追いつこう。ビールは中ジョッキだけでなく大ジョッキも用意されています。大きいサイズがあるならば悩むことなく大を選びたいもの。スーパードライの大生(650円)で乾杯!

 

酎ハイ290円、ビール大480円など、大変にリーズナブル。定番酒は大関(1合280円)で、加えて短冊メニューで各地の地酒が用意されています。

 

京都・伏見の月の桂にごり酒が美味しいよと常連さん。賀茂鶴や出羽桜純米本生、手取川大吟醸など、安定感あるお酒が並んでいます。地酒も500円前後とこれまたお手頃価格が嬉しいですね。

 

刺身が美味しいんだよ!と話すのは、右隣でお一人で飲まれている常連の女性。たしかに皆さんお刺身を食べていらっしゃる。まぐろ、はまち、あまえび、品書きに書かれているのは定番もので、仕入れで加わる旬の魚もお楽しみです。

大串焼鳥やタン塩などの肉料理たち。でもメインは魚介類で、手作りさつま(400円)など食べてみたい料理がいっぱいです。

 

立派なカツオが入ったんだからー!と教えていただいた、かつお刺し。とっても分厚く切ってもらいました。

 

おろしにんにくを添えて醤油少なめで一口。思わず目を見開くような美味しさです。

 

レモンハイ(290円)を傾けながら楽しい時間。

 

大皿料理は300円ほど。おふくろの味とはまさにこういう料理、といった感じの煮物などから、しらたきたらこ和えをいただきました。しみじみ美味しいんです。こういうのは。

 

店の看板にもある「大関」を。兵庫・灘の大手蔵のひとつ。お馴染みすぎる銘柄は、だからこそ大衆酒場のカウンターにぴったりはまります。

 

一番人気と評判の手作りコロッケ(450円)。もちろん女将さんの手づくりで、粗めのパン粉がサクサク、中はコロッケなのにメンチカツのようにジューシーです。手作りさつまが気になる…と常連さんと会話をしていたのを女将さんが聞いていたらしく、なんとおまけに一口サイズのさつま揚げがついてきました。

テーブル席でわいわい楽しむ地元のお父さんチームから次々と入る注文をこなしながら、それでも店全体をしっかり見て聞いて盛り上げている女将さんはやっぱりすごいのです。

 

人生の先輩、のんべえとしても大先輩の常連さんたちも朗らかで、飲んでいてとても楽しい気分になれる「ひさご」。新京成沿線で用事があれば、次も必ず立ち寄りたいと思います。飲み屋の一番の魅力は「ひと」なのだと改めて感じる取材でした。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

ひさご
047-386-0030
千葉県松戸市日暮2-1-2
17:00~24:00(日月定休)
予算3,000円