神保町「浅野屋」 本の街の夜を照らして60年。檜のコの字で一献。

神保町「浅野屋」 本の街の夜を照らして60年。檜のコの字で一献。

2019年3月30日

言わずとしれた本の街、神保町。この街には書店をはじめ、様々な出版関連の会社があります。そして、この街にもうひとつ多いもの、それは居酒屋。本に携わる人々を中心に、神保町で長く働く人々が贔屓にしてきた名酒場の宝庫です。

神保町の酒場といえば?という質問に酒場好きならば誰もが名を挙げる人気店がありますが、それだけではありません。街の人ともにじっくりと歳を重ねている良き老舗はまだまだ数多あります。

今回は、この地で創業60年を迎える老舗酒場「浅野屋」をご紹介します。神保町駅から徒歩3分、本の街の商店街・すずらん通りにあります。

店先の「アサヒ樽生ビール」の電照看板が目印。スーパードライの登場以前からアサヒの樽生にこだわるお店です。

ひのきの長いコの字カウンターが素敵な昔ながらの酒場。「いらっしゃい」と笑顔で迎えられて、好きな場所にひょいと座る。テレビは大相撲。あぁ、もういい気分です。

昔ながらのたっぷり入るジョッキに注がれて、状態抜群のアサヒ樽生ビール(中ジョッキ580円)がお通しの小鉢といっしょに届きました。さぁ、乾杯!

老舗酒場といってもその雰囲気は様々ですが、ここの雰囲気はぱりっとしていて、清々しい印象です。お姉さんの程よい距離感が絶妙で、声をかければすぐに笑顔で応対してくれるのに、普段は気にしていませんよ、という雰囲気が実にいいものです。気にしていてほしいけれど、注目されるのは疲れちゃう。ノンベエはわがままなのです。

お酒のメニュー。スーパードライの大びんが580円と、お店の雰囲気から考えれば割安感。お酒は七笑本醸造を定番に、賀茂鶴や菊水などの冷酒が揃います。酎ハイ類は380円から。

種類多くないものの、酒場の定番料理をしっかり楽しむことができる品書き。刺身から唐揚げ、焼鳥に煮込みと、一通り頼みたいところ。

加えて黒板メニューでは旬の刺身や、おすすめの煮物などが加わります。ほっとする大衆酒場で、ほっとできる肉じゃが。派手じゃないけれど、こういうのがいいんです。

飲み干したジョッキにキレイなレーシング(泡の線)がつくのは、鮮度・温度・洗浄がばっちりというおいしさの証。嬉しくて二杯目もビールを。ここの生は格別です。

カキフライも黒板メニューです。サクサクの衣の中からホクホクの身がでてきます。大きさはほどほどですがその味は濃厚で旨味たっぷり。

焼酎がしっかり濃く、そしてビールジョッキでどんと出してくれるチューハイは、のんびり飲みたいときのパートナー。

しめ鯖、マグロ、タコぶつ、定番のお刺身もおすすめ。都心にいることを忘れる落ち着い雰囲気に癒やされます。営業時間が16時からと早く、少し早く飲める日は、古書店めぐりのあとに一杯いかがでしょう。

背広が似合うベテランお父さんたちが気持ちよく飲んでいる良い酒場です。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

浅野屋
03-3291-0236
東京都千代田区神田神保町1-15
16:00~24:00(土は15:00~21:00・日祝定休)
予算3,000円