いわしが美味しい!それは素晴らしいこと。
いわしをキロ270円の激安大衆魚とあなどってはいけません。いわしはとにかく足が早い魚です。大量にとれる魚だから安いのですが、そこから私たちの口に入るまでの努力は高級魚以上かもしれません。
昔から東京にはいわしを看板料理に掲げる居酒屋がありますが、神田に店を開いて14年目の大松もいまや都心でいわしで飲める代表的なお店のひとつです。
着席型の大松は、もともと神田で大衆割烹を任されていた大将が、激戦区神田で差別化・生き残りをかけていわしに情熱を注ぎ誕生した店舗。活いわしが食べられると評判になり、いまや予約なしだと入れないほどの人気店ですが、その支店を今回はご紹介します。
神田駅北口、中央通りの横断歩道を渡ってすぐにある大松の支店は立ち飲み業態。ガード下で改札からつながっていて全天候型の使いやすさが嬉しいです。
15人ほどで満員となるL字カウンターにちょっとしたテーブルがあるコンパクトなお店で、板前さんと接客担当の二人で切り盛りされています。
飲み物はビールがサントリープレミアムモルツ、日本酒は灘の大手蔵のひとつ辰馬本家酒造の「白鹿」。金宮ベースのホッピーや、350円(以下税込)の酎ハイという顔ぶれ。
さらに日本酒が売り切れ御免の銘柄とある程度安定して扱われている「銀盤」や「立山」、「幻の瀧」など。
料理はいわし丸干し300円を筆頭に、350円均一でいわし刺身、いわしなめろう、〆いわし、梅しそたたき、明太子和え、南蛮漬け、いわしねぎ、竜田揚げ、いわし唐揚げ、いわしハリハリサラダ、たたみいわしに鰯煮付けとずらっといわしづくしの品書きがあります。
その他、富山県・氷見から直送の鮮魚や、立ち飲みで標準的なポテトサラダなど250円からバラエティ豊かに揃っています。
まずはプレミアムモルツの生(480円)で乾杯!ジョッキの冷え具合もばっちりの美味しい一杯です。
銀色に輝く鮮度抜群のいわし。最初は刺身で食べると大松の本気が伝わってくるに違いありません。築地市場の仲買人としっかりした関係構築が叶えた、350円の立ち飲みとは到底思えない絶品が味わえます。
合わせるお酒はレモンサワー。すっきりした酸味がいしわの濃厚な脂分を洗い流し、舌を飽きさせずにいわしづくしが楽しめます。
シンプルながら、素直にいわしっていいなと感じさせてくれる「いわしポン酢」。爽やかな余韻が魅力。冬場は480円のいわし鍋もおすすめです。こうなると、お酒はやはり日本酒が誘われます。
鮮魚が氷見直送ということもあり、日本酒も富山県銘柄が常に揃います。手法によって当然味がかわる日本酒ですが、それでも銀盤は全般的に軽やかな口当りと爽やかな風味が特長。軽いのに、意外といわしと合わせても負けない力強さも併せ持っています。
いわしの煮付けもおすすめ。骨まで食べられホクホクとした食感。ひとつずつ注文を受けてから小鍋で味を整えて提供してくれるのも嬉しい。
まるまると太っていて、脂がのっているのでクタクタになりすぎず、味の染み込みはちょうどいい。これでまた日本酒がおかわりしたくなるのです。
お通しはなく、350円の酎ハイを2杯にいわし料理ひとつふたつで1,400円。一寸飲むならばちょうどいい仕上がりですし、美味しすぎるからともう少し腰を据えて飲んでも二千円くらい。
一度では味わいきれない魅力がつまった立ち飲みの大松。板前さんの職人技を目の前でみられるのも醍醐味です。
奥深きいわしの世界を覗いてみませんか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
立ち飲み大松
03-5295-5470
東京都千代田区鍛冶町2-12-13
17:00~23:30(日祝定休)
予算1,400円