江戸時代は東海道沿いの集落として、近代では1872年(明治5年)、日本初の鉄道が新橋と横浜を結んだ際に途中駅が設けられ、以来、鉄道の発展とともに栄えた鶴見の街。
歴史ある街によき酒場あり。ご紹介しきれていない素敵な酒場がいっぱいあるのですが、魚で飲みたい方には断然おすすめなのが大衆割烹の岩亀(がんき)です。
昭和の気配をぷんぷんと漂わす懐かしい景色の「鶴見銀座商店街」にあり、鶴見川にかかる汐見橋のたもとに店を構える老舗です。創業は1953年(昭和28年)と古く、年輪を感じる堂々とした店構えに惹かれます。
今日は鶴見で梯子酒。これまでおつまみを控えめにしてきて、美味しい岩亀の魚で一献と暖簾をくぐりました。
横浜でビールといえば、1885年(明治18年)7月に誕生したキリンビール(当時はジャパン・ブルワリー・カンパニー)です。現在もここ鶴見・生麦には主力工場であるキリンビール横浜工場が操業中です。
そんな背景もあって、この街はひときわ酒場のキリン率が高いです。ここ岩亀もキリンで、瓶は酒場好きに愛飲家が多いクラシックラガーを用意。鶴見の老舗でCL(クラシックラガーのこと)を飲む、安心感が違います。
では乾杯!
ビールは500円から600円、サワーは金宮ベース、日本酒やハイボールと一通り揃い、300円から400円とリーズナブルです。
ここから南に少し歩いた場所に、あまり知られていませんが「生麦魚河岸」があります。早朝から午前10時頃まで開いている小さな魚屋街で、近隣の板前さんたち御用達です。そんな魚河岸の雰囲気を酒場で味わえるのが「岩亀」というわけ。
長年の関係と大将の熟練した目利きによって選ばれた海鮮類ははずれなし。刺身の盛り合わせでキリンをきゅっと飲めば、鶴見を味覚でも楽しめます。
魚は季節、仕入れによってことなりますが、品書きの右上を定位置にしたマグロは店の定番。これからの季節はサンマや戻り鰹が加わるでしょう。
串カツ、つくね、馬刺しと僅かながら肉料理はあるものの、全体的には魚で占められている品書き。穴子天(670円)や鮭カマ(690円)なんて美味しいに違いありません。さつま揚げやホヤの塩辛などちょっとした肴は300円台が中心です。
そんな中から選んだものは、人気のカニクリームコロッケ(450円)。カニ身がたっぷり入ったトロトロの一品です。
岩亀のお酒は伏見百海という馴染みのないお酒。お話上手の女将さんに聞けば、伏見の「富翁」で有名な北川本家で醸造したものだそう。
富翁は好きなお酒で、何度か直営売店に原酒を買いに行ったことがあります。これぞ伏見の女酒という飲み飽きない味で、延々と飲みたくなります。※お酒は適正飲酒の範囲内で。
歴史のある渋い酒場、岩亀。大将がつくるきっちりとした大衆割烹のかたちと、女将さんが醸し出す明るい雰囲気で、力強さを感じます。
カウンターで一人で飲むもよし、みんなでテーブルでお魚を囲んで徳利を傾けるもよし。酒場好きにはぜひ覗いてみて欲しい一軒です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
岩亀
045-501-5385
神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央4-8-12
17:00~22:30(日祝定休)
予算2,200円