建て替えが完了しました。新あべちゃん本店の記事はこちら(2019年12月25日掲載)
麻布十番「あべちゃん」 本店建て替え完成!新しいあべちゃんで、昔からのあべちゃん。
1933年(昭和8年)創業のあべちゃんは、東京・山手のやきとり(もつ焼き)を語る上で欠かせない名酒場です。
ところで、東京の地名として全国的に知られる「麻布十番」は、実は住所改定により作られています。麻布坂下町、麻布永坂などの「麻布」から始まる地名を統合し、江戸時代に呼ばれていた「十番」を麻布とあわせて1962年(昭和37年)に誕生しました。
つまり、あべちゃんのほうが麻布十番という地名より”センパイ”なわけです。
現在、3代目が守るあべちゃんの暖簾は、2018年夏、大きな動きがありました。なんと、麻布十番商店街に面していた昭和のニオイがぷんぷんする店舗が建て替えとなりました。
(旧店舗時代 2014年10月撮影)
建て替えている間も営業するべく、すぐ近くの元ブライダルショップのあとを改装し、仮店舗「あべちゃん」がオープンしました。
300年以上歴史がある十番の商店街。かつては鉄道空白地帯でしたが、いまや東京メトロ南北線と都営地下鉄大江戸線の2路線で簡単アクセス。セレブなイメージの港区の中心にありながら、老舗の居酒屋がポツポツあるのはどこか庶民的で、ノンベエの居心地もいい街です。
かつてのあべちゃんは、看板だけが残っています。超人気店で15時の開店から飲む人、テイクアウトの人で大いに賑わっていた場所だけに、火が消えると寂しいですね。
さて、移転の地図を頼りに仮店舗へ。ブライダルショップになる前はパン屋だったところで、厨房機器の設置はなんとかなったと店長さん。ガラス張りで明るく照らされ、飲み屋っぽくないようで…いえ、ちゃんと「あべちゃん」です。むしろ若い方には入りやすくていいかも。
長年親しまれてきたあべちゃんのメニュー。奇をてらわず正統派な顔ぶれです。ビールは樽生がサッポロ黒ラベル、瓶ではサッポロラガー、ギネスビールの文字に、かつてサッポロビールがギネスを取り扱っていた名残りがあります。
ハイボールはデュワーズ、焼酎は和ら麦など。酎ハイ類は460円です。ここでも業務用玉露割りが人気。
パーフェクト黒ラベルを提供されていますが、専用ジョッキではなく昔ながらのタンブラーで提供されるところに、お店のこだわりが垣間見れます。サッポロ黒ラベル中生(580円)。
それでは乾杯!
みんな楽しそうに飲んでいる空間は、お互い会話をしていなくてもこの雰囲気を共有ていることから、まるで仲間のように思えてきませんか。
もつ焼きとすぐに出る料理を一緒にオーダーするのが基本です。名物の牛もつ煮込みは「名物に美味いもの”有り”」で、必ず頼む一品。こってり甘く煮込まれたあべちゃんの煮込みは、一度食べたら忘れられません。
兄弟店である溜池山王「赤坂あべちゃん」はサラサラ系で、こちらはトロトロ系。どちらが好きか犬猫論争をしたこと、あります。答えはどっちも好き。
この記事を書きながらも、口の中には味の記憶が鮮明に蘇ります…(笑)
あべちゃんのつくねは、鶏ではなく鴨。みっちり空気を抜くように固められたつくねは、濃厚な鴨の旨味が噛むほどに広がってきます。余韻に漂う柑橘系の風味が、後をひかせるアクセント。
ビールのあとは酎ハイ・レモンサワー。結構濃い目なのは、さすが老舗の酒場です。
レモンサワーですっきりしたら、ビールに戻るのが私のあべちゃんルーティンです。最近は新しい酒場でもみかける話題の赤星。あべちゃんは、黒ラベルが誕生する以前から何十年も扱っています。
一番下にネギを挟むのが「あべちゃん」式。2本単位で焼けた順に持ってきてくれます。カシラ、シロ、タン、レバ、ハツ、なん骨(1本170円)の5種類も変わらず。昔から変わらない食べごたえあるサイズです。
カシラとシロは照り照りの甘たれでぜひ。でも、私のイチオシは塩でハツ。ぶりっぶりな食感とジューシーな肉汁が猛烈にビールを誘います。
明るく清潔、お店の方も笑顔で爽やかな接客をされていて、もつ焼きや煮込みだけでなく、この雰囲気も飲みに行きたくなる大きな理由になります。
麻布十番の夜に、あべちゃんの明かりは欠かせない存在です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
あべちゃん本店仮店舗
03-3451-5825
東京都港区麻布十番2丁目20−14
15:00~22:30(土祝は21:00まで・日定休)
予算2,500円